カゴ落ち率改善の費用対効果1:集客増
カゴ落ち率を改善すれば、CVRが向上する。CVRが向上すればCPO(コストパーオーダー:受注1件当たりの獲得コスト)が低減する。具体例を示そう。
CVRが1%のショップAのCPO
100ユーザーの集客で1件の受注となるので、仮にすべてのユーザーがリスティング広告をクリックして来訪し、広告費が1クリック50円であれば、CPOは「50円x100人=5000円」となる。
CVRが0.5%のショップBのCPO
同様の計算で、CPOは「50円x200人=10,000円」となる。
仮に、ショップAとショップBが同業種、つまり商品価格も平均顧客単価も粗利率もほぼ同じであって、いずれも受注1件当たりの平均粗利額が7000円と仮定した場合、ショップAは受注1件当たり2,000円の黒字であり、ショップBは3,000円の赤字となる。
また、リスティング広告のクリック単価は、損益分岐点から以下のようになる。
CVRが1%のショップAのクリック単価
1クリック70円が損益分岐点。1ユーザーの獲得に70円まで出せる。
CVRが1%のショップAのクリック単価
1クリック35円が損益分岐点。1ユーザーの獲得に35円までしか出せない。
リスティング広告のクリック率が同じであれば、通常はクリック単価の高いショップAの広告が上位に表示される(re:リスティング広告の実際の順位決定には、クリック単価やクリック率の他に適合率などの要素が加わるが、ここでは割愛する)。
つまり、CVRの向上はECサイトの利益に直結するだけでなく、CPOの低減=集客媒体費用の損益分岐点の向上により、競合他社では採算が取れない高額の集客媒体を利用できることとなり、さらなる集客増の施策が取れる環境を生み出すのである。前掲は採算構造を理解しやすいようにリスティング広告を例にしたが、他の媒体でも採算の考えかたは同じである。
したがって、「CVR向上=集客増」という公式が明確に成り立つのである。この公式を是非とも覚えておいて欲しい。
カゴ落ち率改善の費用対効果2:カート投入までのコスト
さらに、サイト全体のCVRとは区別して カゴ落ち対策の費用対効果を考察してみたい。まず、ユーザーにカート内(=資料請求などのフォームメール画面を含める)に到達してもらうため、ECサイト側としては以下のことを行っている。
カートに到達してもらうためのECサイト側の施策
- 多くのコスト(SEO対策などの労力投入も含め)をかけて集客。
- サイトコンセプトやターゲットなどをセットアップ段階から熟考。
- 訴求力の高い商品画像や魅力ある文書、あるいは効果的なページレイアウトやデザイン、購買導線などを長期に渡って学習。
- そのさまざまなノウハウを投入し、膨大な時間と労力を費やしてこれらのコンテンツを作成。
ユーザー側としても、以下のステップを踏んでいる。
カートに到達するまでにユーザーが踏んだステップ
- 上記ECサイト側の施策に納得、もしくは競合他社との比較選別の結果として再来訪し、そのサイト、およびその商品を選ぶ。
- 価格や送料、また決済方法や納期、返品規定などについて(一度は)納得している。
どれだけ多くのフィルタリングを経た後に、ようやく残ったユーザーなのであろうか。
ECサイト運営者からみて、カゴ落ちしたユーザーの機会損失と、フロント(カート以外のページ)で離脱したユーザーの機会損失について考えた場合、そこに至らせるまでに投入した時間と労力と費用に目を向ければ、比較にならないほどの大きな差となることに留意すべきである。
一部、いわゆる「ひやかし」でカートに入れるユーザーも存在するが、これも買いたいけど「今は」買えないといった心理を反映したものと位置づけることが可能であれば、潜在顧客の獲得形態の一部と考えることができる。
少なくとも、商品自体やあるいはサイトコンセプトなどに魅力がなければカートに入れるという行動はとらないとすれば、仮にカートに強力なクロージング力があったならば、実際に購入していただけた可能性もあるのである。