静止画から動画生成も? 量と質どちらも高める生成AIでのクリエイティブ制作事例
続いて、両社の共通項である「コミュニケーション」と「クリエイティブ」に焦点を当て、具体的な施策が紹介された。まず触れられたのは、出会いのきっかけを増やすクリエイティブ制作についての取り組みだ。
アルビオンでは、多様な広告チャネルや年代・嗜好性の異なる様々なターゲット層に対応するため、クリエイティブのバリエーションを増やしている。こうした“刺さるクリエイティブ”を作る上で欠かせない存在となりつつあるのが、画像生成AIである。
「クリエイティブは多いに越したことはないですが、これまでは限られた時間と予算を有効活用するため、プロモーションごとにメインビジュアルを制作し、期間内はそれをずっと使っていました。
しかし、ある日化粧品に特化した生成AIツールと出会って状況が一変しました。過去のクリエイティブやブランドの世界観を学習したAIに指示を出すと、一度に150パターンほどのバリエーションを生成してくれます。
最適なビジュアルを探るためではなく、お客様との接点を増やすのが目的なので、生成されたクリエイティブすべてを採用するケースもあります。ブランド理解があるAIなので、あえてかけ離れたイメージを生成してもらうといったチャレンジも素早くできるのが魅力的です」(アルビオン・榊原氏)

一方、MAISON SPECIALはAIを使って動画を生成するアプローチに挑戦しているという。
「ECサイトやInstagramに掲載している静止画のLOOKを複数枚ピックアップし、動画生成AIツールに読み込ませたところ、言われなければ生成AIとわからないほど自然な動きのある動画が出力されて驚きました。
これまでは限られた時間の中で静止画と動画どちらも撮影しなければなりませんでしたが、このクオリティーであれば、ブランドが伝えたいストーリー性の担保と撮影工数の削減が両立できます。その分の予算をバリエーションを増やすほうに割くなど、夢が広がるなと思いました」(PLAY PRODUCT STUDIO・福田氏)

なお、MAISON SPECIALでは生成AIを使った「SNS訴求のバリエーションとインパクト強化」「STAFF SNAPへのAIスタッフ導入」といった試みも進んでいる。
「ブランドとしてクリエイティビティを押し出すため、MAISON SPECIALでは斬新な表現を模索しています。通常の撮影では実現しづらいビジュアルも、生成AIであれば容易に制作可能です。
また、投稿の質を高めるために承認制だったSTAFF SNAPの投稿も、AIモデルによってバリエーションを増やせるのではないかと考えています。コーディネートの提案数が増えればECサイトの利便性が上がると理解しつつも、生成AIが登場するまではブランドの統一性担保と承認作業の負担増を両立する術が見えていませんでした。協力してくれる外部パートナーも見つかったので、今後はこういった取り組みも行う予定です」(PLAY PRODUCT STUDIO・福田氏)