マクドナルドレベルまでいかずとも、OMO推進の術はある
2000年に創業し、企業のDX実現に向けた課題解決をコンサルティングとテクノロジー双方の視点から手掛けるビービット。同社は、UXデザインコンサルティング、UXグロース支援に加え、小売・EC業界の最適なUX実現を支援するMAツール「OmniSegment」を提供。これまでに大手企業・デジタル先進企業を中心に、800社以上の支援を行ってきたという。
今回のセッションで主題とするOMOは、今や日本でもあらゆる企業が課題として向き合い、実践を重ねる取り組みだ。特に、実店舗を有する小売業界ではスタンダードになりつつある。日本国内にOMOが浸透した経緯について、生田氏は次のように言及した。
「OMOという言葉を日本で耳にするようになったのは、2019年からです。当社 執行役員CCOの藤井(保文氏)らが、2019年に出版した『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(日経BP、2019年)で紹介したのを契機に広まったと自負しています」
同書籍では、完全なるオフラインの世界が今後なくなり、オンラインであることが当たり前な世界を「アフターデジタル」と定義し、広範なサービス提供を可能にするためのデータ収集や活用の重要性を問いている。こうした世界を実現する上で必要となるのが、OMOの考え方だ。
「OMOを実現するには、企業がオンラインとオフラインを区別せずに一体として捉える必要があります。顧客がその時々で最も便利な方法を自由に選べる状態にしなければならないからです。オンオフ問わず、体験が一つとなってつながっている状態を作り上げる。これが、『OMOが実現した世界』だといえます」
生田氏は、日本におけるOMOの成功事例として、日本マクドナルドが公式アプリで提供する「モバイルオーダー」を挙げた。
事前に注文と支払いを済ませることで、レジに並ばずに商品を受け取れる同サービスは、2020年にリリース。これにより、同社はこれまで店内の行列に並ぶのが面倒で購入を諦めていた見込み客の取り込みに成功し、2023年度には過去最高業績を記録している。現在は注文の23%がモバイルオーダー経由で、アプリのアクティブユーザは2,600万人以上だという。
「こうした好例はあるものの、オンライン・オフラインの体験を統合するのは難しく、大きなコスト負担が生じる上に、失敗のリスクも存在します。そのため、当社は現実的に取り組みやすい施策として『ユーザとの接点を増やすことから始めましょう』と勧めています」