セラーとの関係だけでは不十分 新たな収益源を求める欧米の小売
ECサイトやオウンドメディアなど、自社サイトでの広告配信(オンサイト広告)を中心に世界で浸透してきたリテールメディア。その活用の場が、外部のウェブサイトで顧客にアプローチするオフサイト広告や、実店舗の店頭広告にまで広がりつつある。
実際、Criteoが2024年3月に発表した調査では、欧米の企業と広告代理店の50%以上が、オフサイトのリテールメディアに投資していると答えた。加えて、米国の企業と広告代理店の40%が、店頭でのリテールメディアにも投資する意向を示している。
「以前は、小売業者がセラーであるメーカーやブランドに広告出稿してもらい、収益を上げていました。しかし、セラーから得られる広告費には限界があります。欧米の小売業者は、広告代理店や出版社とパートナーシップを築き、自社サイト以外の広告枠を増やすなどして、新たな収益源を模索しています。私自身、Macy’sでリテールメディア事業に携わっていた際、セラーと広告代理店それぞれと関係を構築する“2本立ての戦略”が必要だと実感しました」
こうした中で、リテールメディアに求められる広告効果にも変化が見られる。
「元々は、広告のインプレッション数が重視されていました。しかし、売上につながらなければ意味がありませんよね。そのため欧米の小売業者は、確実に顧客の購買意欲を高める配信方法に目を向けています。特に求められているのが、適切な広告を適切な顧客に対して、適切なタイミングで配信する戦略です」
近年は、広告フォーマットが多様化している。たとえば、動画広告が積極的に活用されるようになった。購入など、顧客がオンライン上で何らかのアクションをする直前に、動画広告を配信するのがトレンドだという。
「昨今のマーケティングファネルでは、商品の認知段階であるアッパーファネルと、購入段階以降のローワーファネルの境目が曖昧になりつつあります。顧客が購入に至るまでの一連の流れをフルファネルで捉え、あらゆる広告フォーマットを駆使することで、顧客満足度と収益を上げる適切なポイントを見極められるでしょう」