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AIの「特技」を見極めれば、人を助ける強力な武器となる
前回の記事では、圧倒的なスピードで広がる世の中のAI活用と、EC×AIの可能性についてお伝えしました。ここからは、現在最も注目されている生成AIのみならず、機械学習やディープラーニング、自然言語処理といった技術も含め、ECにおける「AIの使いどころ」を紹介します。
ECにおいてAIが活躍する領域は、大きく二つに分けられます。一つは「オペレーションの最適化」。もう一つは「ユーザー体験(UX)の向上」です。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
1. オペレーション最適化
「オペレーション最適化」は、業務を効率化し、生産性を向上するためのAI活用です。たとえば、次のようなものが挙げられます。
①商品説明文作成
商品説明文は、顧客にとって商品を購入する際の判断基準となる重要な要素です。しかし、多数の商品の説明文を一つひとつ書くのは非常に手間がかかる作業で、時間の制約から最低限の説明文だけで済ませてしまっている方も多いのではないでしょうか。
ところが生成AIを使えば、キーワードやスペック情報を入力するだけで、一瞬で自然な商品説明文を生成できます。商品登録の手間を大幅に減らせるだけでなく、たとえば一定期間ごとに説明文を変えてみて、どんな伝え方が最も顧客に「刺さる」のか、試すこともできます。あるいは、顧客ごとに重点を置くポイントを変えるなどのパーソナライズも可能でしょう。
生成AIに商品説明文を任せるのは不安、と思うかもしれません。確かに生成AIは不完全な面もあり、いつも完璧な文章を作ってくれるとは限りません。最終的には人間の目でチェックし、修正が必要になるケースもあるでしょう。
一方で、生成AIが得意なのは「短い時間に大量のアイデアを出す」ことです。「ある商品のキャッチコピーを30個書け」といわれたら、ほとんどの人は苦戦するでしょう。しかし、生成AIなら平然と出してくれます。「もっと情緒的な表現を入れたい」「機能性をもっと訴求したい」などの指示を出せば、その通りに文章を提案してくれます。生成AIが提案したたくさんの文章の中から、自分の仮説にあうものを選び、反応を検証する。そんな使い方であれば、生成AIは強力な武器になるはずです。
②商品画像作成
また、ECに携わる方なら、商品画像の重要性はよくご存じでしょう。この分野でもAIが活用されはじめています。
たとえば、AIにより画像の背景削除の精度は飛躍的に高まり、人の髪の毛のような複雑な形状も自然に切り抜けるようになっています。商品一覧に表示する写真をすべて白背景で統一するなど、ショップ全体のイメージづくりの自由度が向上します。
生成AIを使えば、「北欧風の明るい部屋で窓際に置かれた木の机」のように、言葉による指示だけで数秒で画像を生成してくれます。顧客が実際の利用シーンをイメージしやすい背景画像の中に商品を置くこともでき、購買意欲を喚起しやすくなるでしょう。