「声の大きな人」に振り回されない改善サイクルを作るには
伊奈(Contentsquare Japan) ECサイトは、テクノロジーを駆使して新たな購買体験を創出できる可能性に満ちていますが、まだ「完璧な売り場」までは道半ばという状況ですよね。
志賀(GDO) ECサイトは、いわば棚を無限に増やせる店舗です。24時間365日購入できる場を設けるだけでなく、テクノロジーを駆使すれば質の高い接客サービスも提供できます。
立地や広さによる棚数や品ぞろえ、人員配置数といった、実店舗における様々な制約が存在しないため、非常に可能性に満ちた売り場であるにもかかわらず、現実には顧客体験の不備が多発しています。「サイト内検索で欲しい商品が見つからない」「レコメンド表示が自分に適していない」といった問題がその例です。
私はそもそも、ECサイトはまだ「オフラインの顧客体験の模倣」すらやりきれていない段階だと思っています。「棚数を増やしたら、商品を見つけられない人がいるはず」「だったら、商品を探しやすいようにしなければならない」と起こり得ることを想像するだけでなく、打ち手を施した後に「何が起きたか」をこの目できちんと確かめる。優秀な店員さんが顧客を見て接客の仕方を変えるのと同じように、オンラインでもユーザーの観察と、そこから得た事実を踏まえた改善は欠かせません。
伊奈(Contentsquare Japan) 「Contentsquare」は、こうした改善の手助けとなるデータの可視化に取り組んでいますが、実際に56%の事業者がツール活用後、A/Bテストの成果を上げています。これはユーザーの行動過程を可視化し、雲をつかむような取り組みが減ったことで勝率が上がった裏付けと言えるでしょう。
LTV向上が重視される中で、オンラインのUI/UX改善にリソースを割く事業者も増加傾向にありますが、まずは「何をすべきか見える化する」ことが大事だと思います。
志賀(GDO) GDOでも、「Contentsquare」を導入する前はユーザーのフラストレーションの原因が明確にはわからないため、根拠の弱い仮説を基にした改善策を試みるしかありませんでした。もしそれで数値が改善したとしても「本当にその改善策が当たったのか」が検証できず、根本的な解決になりません。
また、ユーザーの行動に着目して判断ができなければ、経験豊富な役職者や数値責任を持つ営業、販促担当など、いわゆる「声の大きな人」の意見に引っ張られて施策が進んでしまいます。多量のデータに基づいてユーザーのフラストレーションを可視化すれば、たとえ個々の持つミッションが「新規顧客増」「売上増」といったようにそれぞれ違っても、プロジェクトに携わるメンバー全員が同じ方向を向いて議論できるようになります。フォーカスが合うとアイデア出しもスムーズになり、より本質的な話し合いができるため、スピード感を持った改善サイクルが生まれました。