サイト改善の第一歩は検索行動の可視化
──まず、ANAグループが新事業として「ANA Mall」を立ち上げた経緯と理由を教えてください。
平山(ANA X) コロナ禍で受けた大打撃をきっかけに、ANAグループは非航空分野の収益源を確保する方向へ舵を切りました。具体的には、航空領域で培ってきた経験や信頼をベースに、マイルを軸としたポイントプログラムを活用し、お客様との日常的な接点の創出を目指しています。その手段の一つがANA Mallです。
──ANA Mallの立ち上げにあたって、ZETAはどのような提案を行ったのでしょうか。
大井(ZETA) 保有マイルにもとづいたレコメンド、商品数が増えても検索スピードを保つことなど、様々な要件を踏まえて必要な機能をすり合わせました。今後のANA Mallの成長を見据え、サイトのグランドオープンから1年間といった短期的な取り組みではなく、長期的な目線で提案しています。
平山(ANA X) 他社のソリューションとも比較検討しましたが、QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)の観点で最もバランスが良いと感じたのがZETAのソリューションでした。
──なぜ、モールに必要な機能として、サイト内検索とレコメンドを重視しているのでしょうか。
石津(ANA X) 両機能は今や当たり前の標準装備であり、一人ひとりのお客様に寄り添うサイト内の接客において、大黒柱となる機能でもあると考えています。ANA Mallは今後、出店ショップ数や取扱商品数をさらに拡張していきます。商品の取扱規模が大きくなってもお客様にとって使いやすく、これまで以上に快適にお買い物をお楽しみいただける環境を構築しなければなりません。
平山(ANA X) ECモール事業はANAグループにとって新たな挑戦です。「旅行関連の商品を求めてANA Mallに訪れるお客様にはトラベルグッズを」「日常的なお買い物をされるお客様にはデイリーグッズを」といったように、適切な商品をどうレコメンドするかが事業推進の鍵となります。
──ANA Mallは、「ZETA SEARCH」と「ZETA RECOMMEND」を導入しています。実際には、どのように活用していますか。
石津(ANA X) ANA Mallは、まだ立ち上げたばかりのため、目的を持ってサイトへ遊びにきてくださるお客様もいれば、そうでないお客様もいます。こうした状況で、サイト内におけるお客様の検索行動を可視化するのに、ZETA SEARCHは非常に重要です。当社では、よりタイムリーに顧客理解を深め、対策を講じたいと考え、検索行動の分析頻度を月次から週次に変更しました。ZETA SEARCHで得られたデータは、各オウンドメディアでの情報配信やサイト内接客などのマーケティング施策へ活用しており、ANA Mallへの来訪や回遊促進に役立てようとしています。
園田(ANA X) ANA Mallへ出店されている各ショップには、人気商品ランキングやおすすめ商品を、ショップトップページに表示設定していただくよう積極的に案内しています。タグの埋め込みだけで表示でき、お客様の行動履歴にもとづいた商品を容易に提案できるため、「店舗構築の助けになっている」と好評です。
石津(ANA X) ANAグループでは、ANA Mall以外にもアフィリエイトサイトである「ANAマイレージモール」や、直販ECサイトである「ANAショッピング A-style」などのサイトを運営しています。各サイトの違いや使い分けについて、お客様にわかりやすくご案内していく上での課題も、ANA Mall内の検索行動から読み取れました。まだ取り扱いに至っていない商品が、ANA Mallを利用されるお客様のニーズとして存在することも検索データから明らかになり、今後拡張すべきMD戦略のヒントにもなりました。
──ZETAは現在、ANA Mallの運営をどうサポートしているのでしょうか。
荏原(ZETA) ECモールでは、ショップによって商品の質や商品データの登録状況が異なります。お客様が特定のショップだけを探すケースも多いです。こうした中でも、検索結果でいかに最適な商品を提示できるかを軸に、チューニングしています。
出張(ZETA) 当社は、「特定のキーワードで何回検索されているか」という全体傾向や、検索サイト内の0件ヒット、つまり「検索結果に何も提示できなかった」際のログデータなどを提供しています。検索結果が0件のキーワードが何回も検索されている場合は、「お客様が求めるカテゴリーのショップを増やす必要がある」といったように、マーケティング戦略に生かせます。
複数製品の導入による相乗効果
──ANA Mallのように、ZETAのソリューションは複数を組み合わせて導入すると相乗効果を得られるそうですが、具体的に得られるメリットを教えてください。
出張(ZETA) ANA Mallの場合、現時点では、ZETA RECOMMENDで収集したお客様の行動履歴を、ZETA SEARCHで表示するランキングと連携する施策を実施しています。今後は、お客様が積極的に検索した商品のデータをZETA RECOMMENDに取り込み、より適切な商品をレコメンドする施策も実施予定です。
また、今後ANA Mallには、ZETA SEARCHのオプションである「ZETA Tracking」のトラッキング機能も導入を予定しています。お客様がキーワード検索後にどの商品をクリックして購入したかといった行動履歴をサイト内検索に連携できる機能で、お客様の欲しい商品を検索結果の上位に提示する自動チューニングができます。
荏原(ZETA) トラッキング機能では、「このキーワードに対してこの商品を提示する」と自動で最適化できます。本機能を活用すれば、これまでカバーできていなかったキーワードも含めて検索機能の全体最適化を図りつつ、ZETA RECOMMENDで各個人の欲しい商品を提案してパーソナライズ精度を高め、より良い検索が実現できると考えています。
──ZETAには、ほかにもハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」、リテールメディア広告エンジン「ZETA AD」、ECキュレーションエンジン「ZETA BASKET」といったソリューションがあります。これらを組み合わせると、どのような効果が見込めるのでしょうか。
大井(ZETA) ZETA HASHTAGは、ハッシュタグで商品や情報を検索可能にするソリューションです。目的買い以外にふらっとサイトを訪れたお客様へ、人気商品のハッシュタグや「細く見えるニット」などのキャッチーなフレーズによってクリックを促し、サイト内の回遊率を向上させます。さらに、ハッシュタグで商品を探した上でサイズを絞り込むなど、キーワードのハッシュタグ化でUX向上も期待できます。
出張(ZETA) ECモールの場合、ショップ検索など“縦軸”での検索が多い傾向があります。ハッシュタグは、商品の特長の理解を促したり、どのような商品があるかをキーワードで示したりでき、サイトを横断した“横軸”の検索を促進します。
荏原(ZETA) ZETA HASHTAGの導入によって、検索されるキーワードが大きく変わることも少なくありません。言語化が難しいキーワードを商品に紐づけて提示すれば、お客様はそれをクリックするだけで検索できます。「曖昧だけどこのような商品が欲しい」という感情をキーワードにして、新たな検索軸の創出も可能となります。
出張(ZETA) また、ZETA ADは、リテールメディア向けの広告配信システムです。ショップが広告費を投下して検索上位に商品を表示する際、サイト内におけるお客様の検索内容と広告の表示内容に差異が生まれないよう調整します。
明らかに的外れの商品がPR枠で表示されると、サイト全体のイメージが悪化します。結果的にお客様が離れかねないと、容易に想像が付くのではないでしょうか。そこで当社では、ショップが売りたい商品とお客様が欲しい商品をつなぐ仕組みを、ZETA ADを活用して提供しています。
大井(ZETA) 最後に、ZETA BASKETは、お客様やスタッフがおすすめ商品を紹介するキュレーションページの作成などが可能なソリューションとなっています。実際に商品を使用した人による“生の声”であるUGC(User Generated Content)は、信頼度が高いですよね。お客様の買いたい気持ちを醸成し、レコメンドの効果向上につながります。
定量レポートがANA Xとショップ間のコミュニケーションも促進
──ZETAのサポート体制についても教えてください。
荏原(ZETA) ANA Mallのケースでは、まず、月1回の定例会を実施しています。ANA Xが欲しいレポートの内容や当社から提案する改善案など、現在の運用状況と改善の方向性をすり合わせています。また、様々な改善案を提示した各種レポートのほか、週次の定量的なレポートや四半期レビューといった、現在の検索機能の成果が数値としてわかるレポートも作成しています。
出張(ZETA) レポートの作成に加え、サイトを深く理解しているエンジニアが人の手でクライアントとともに快適なサイトへ育てていく点も、当社の強みです。たとえば、「類義語をこのように設定すれば、お客様へ提示できる商品が○○件増えます」などとアドバイスできます。
──では、ANA Mallには具体的にどのような提案をしたのでしょうか。
荏原(ZETA) あるキーワードが検索された際、複数のショップでヒットすることや、関係のない商品が上位に表示されることは珍しくありません。そのため、「このキーワード検索に対してはこのカテゴリーの商品を提示する」のように、絞り込む仕組みへ改善しました。
また、商品データを登録する際、当てはまるカテゴリーがなく消去法でカテゴリー分けするショップも多くあります。そうすると、お客様がカテゴリーで検索しても、求めていない商品まで表示されます。ANA Mallでは、各ショップの商品から適切なカテゴリーを選択し、キーワードを付与および提案する施策も実施しています。
──ANA Xとしては、ZETAのサポートによってどのような効果がありましたか。
石津(ANA X) ANA Mallは、2024年1月31日をもってオープンから1年を迎えます。EC業界の中では新参者ですが、ZETA SEARCHから取得できるデータによって、徐々にお客様の行動が可視化されていると実感しています。サイト内検索を利用されるお客様のコンバージョン率も上がっています。今後は、トラッキング機能も導入しながら、キーワード単位の効果検証や対策検討も進めていきます。
出張(ZETA) ANA Xの石津様と園田様との日々のやり取りを通して、ECへの取り組みの積極性に大変感心しています。また、ZETA SEARCHを導入いただいたのは2023年2月ですが、ANA Mallの検索後CVRは、2023年8~10月までの3ヵ月間でおおよそ2倍に改善しており、順調な成長を見せています。
園田(ANA X) キーワード検索の定量レポートは、各ショップのサポート担当に共有し、商談時にも活用しています。ANA Mallを利用するお客様の関心が高いキーワードを各ショップへ伝えることで、レポートにもとづいた新たな取扱商品の検討および出品をしていただいています。
成長段階にあるANA Mallは、1ヵ月の間にキーワード検索結果が大きく変わることもあります。各ショップのご担当者は、自社商品がお客様の目に留まりやすい場所へ表示されているかを注視しています。ZETAと協力し、スピーディーかつタイムリーな改善を続けていきたいです。
──これから、ANA Mallをどのように成長させていきたいと考えていますか。
平山(ANA X) ANA Mallを利用するお客様は、日々のお買い物でマイルを貯めることで、特典航空券の獲得へ徐々に近づいていきます。そのためANA Mallは、日常的な消費ループを飛び越え、「空の旅に飛んでいく」という非日常へつながる特異な場といえます。
現在、旅行需要が復活しつつある一方、物価高も進行しています。このような状況で、お買い物でマイルを貯めながら旅行も楽しみたいお客様のニーズへ応えるため、さらなるショップ数の増強を目指しています。
「ANAマイレージクラブ」の会員様とANA Mallのショップにとって、最適なマッチングプレイスになるよう育てていきたいです。そのために、これからもZETAのソリューションの力をお借りしたいと考えています。
出張(ZETA) 「多くの商品があること」と「商品が見つかること」はまったく異なります。様々な商品があるからこそ、お客様が何を買えば良いかわからない状況にもなりかねません。お客様の欲しい商品が的確に表示されるECモールにするため、ZETAも全力でサポートしています。そして、購入した商品への満足度を高め、サイトへのロイヤリティやリピート率向上などの施策も提案していきたいです。
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