ECの売上拡大において重要なのが、多様なマーケティング施策を展開するためのノウハウです。なかでもフラッシュセールは近年日本で導入が進む販売手法の一種で、成功事例も多く見られます。
この記事では、フラッシュセール事業国内最大級のla belle vie(ラベルヴィー)株式会社の取り組みについて、フラッシュセールの基本的な概要と併せて詳しく紹介します。
そもそもフラッシュセールとは
フラッシュセールとは、実施期間や対象人数を制限したクーポンやキャンペーンを通じて集客を行う施策のことで、「フラッシュマーケティング」と呼ばれることもあります。
たとえば3日間限定という短い期間で実施する代わりに、一般的なセールよりも値引き率を高めることで、さらに多くの集客を見込むことが可能です。また、「先着◯名」という形で人数に上限を設け、人数上限に達し次第終了という施策もフラッシュセールの一つです。
フラッシュセールは、従来のセール手法に時間的制約や人数制限を設けるだけで実施できるので、施策の実行難易度そのものは高くありません。汎用性が高いことから、アパレルや飲食など、幅広い業界で採用されています。
おもなフラッシュセールの販売形式
フラッシュセールの販売形式は、大きく「モール型ネットショップ形式」と「クーポン共同購入形式」の2つに分かれます。
モール型ネットショップ形式は、そのショップの会員だけに一定の時間に割引価格で商品販売を行う方法です。割引対象会員がフラッシュセール開催期間内にサイトにアクセスすると、陳列されているものすべてが割引価格で表示されます。
通常のセール販売は、ECサイト内に特設ページが設けられ、そこで扱いのある商品だけが割り引かれますが、モール型ネットショップ形式のフラッシュセールの場合は、ショップに並んでいるものすべてがセール対象になるのです。
会員限定で、たたき売りのようなイメージとは縁遠いため、ブランド価値への影響を考慮するアパレルショップなどでも採用されています。また、la belle vie株式会社が実践しているのもこの形式のフラッシュセールです。
一方のクーポン共同購入形式は、定められた期間内に定められた人数の購入希望者が現れれば、相応の割引が受けられるクーポンが配布される販売形式です。
おもに宿泊施設やレジャー施設の利用券などを安価に購入するための方法として活用されており、個人での購入よりもはるかにお得な割引率のクーポンが受けられるため、一時期大きな人気を集めました。
フラッシュセールを実施するメリット
大幅な値引き率での取引が発生するフラッシュセールですが、事業者にとってはどのようなメリットが期待できるでしょうか。
フラッシュセールを実施する最大のメリットは、セールの取り組みそのものが集客につながる点です。値引き率が大きいと話題性も高くなるため、顧客の来店を促します。また、これまで何らかの理由で購入を渋っていた潜在顧客の購買も後押しするので、売上の向上にもつながるでしょう。
従来のセール同様、余剰在庫を一気に引き払いたいという場合にも便利なセール施策であり、ブランド価値を大きく損なう心配もありません。売れ筋商品をセール商品に混ぜ、抱き合わせでの購入を促すなど、セール効果を高めることも可能です。
フラッシュセール活用最大手のla belle vie株式会社について
フラッシュセールはおもに欧米圏で好評を博していた手法ですが、近年は日本でも普及しつつあります。ここでは、国内最大級のフラッシュセール事業を運営するla belle vie株式会社について詳しく紹介します。
la belle vie株式会社の企業情報
以下は、la belle vie株式会社の企業情報を表にまとめたものです。
社名 | la belle vie 株式会社 |
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本社所在地 | 東京都港区赤坂7丁目1-16 オーク赤坂ビル5F |
設立年月 | 2009年3月24日 |
代表者名 | 代表取締役社長 於保浩之 |
株式公開 | 未上場 |
資本金 | 1億円 |
おもなグループ会社 | 日本テレビホールディングス株式会社 |
la belle vie株式会社の事業内容
la belle vie 株式会社は、ファッションECサイトの「GLADD(グラッド)」と「GILT(ギルト)」を運営するアパレル企業です。両者はそれぞれ、別会社のECサイトとして運営されてきましたが、2018年に統合し、la belle vie 株式会社によって運営されることとなりました。
ハイブランドを含む豊富なブランドを取り扱う同社が強みとしているのが、フラッシュセールです。リテール価格での取引が当たり前の商品も、タイミングによっては驚きの値引き率で販売されることから、絶大な人気を誇っています。今ではGLADDで約300万人、GILTで270万人という膨大な数の会員を抱えており、同社を支える強みの一つになっているといえるでしょう。
注目したいla belle vie株式会社のEC施策
la belle vie 株式会社は、フラッシュセールECサイト運営企業として、他社との差別化を進めてきた会社ですが、近年はフラッシュセールの巧みなノウハウを活かした、ブランドのイメージ向上施策や新しいサービス提供にも力を入れています。
ブランド品の「安売り」イメージを払拭する在庫ソリューション
フラッシュセールは効果的な集客施策である一方、スピーディーかつ大量に商品を販売する必要があります。そのため、たたき売りのような印象を持たれることもあり、ブランドそのものの品位を損なう可能性も否めませんでした。
なかには、フラッシュセールを実施するショップに商品を卸さないハイブランドもありますが、la belle vie 株式会社はこの問題をうまく回避しているといえるでしょう。
同社では「在庫ソリューション」の提供をコンセプトに、アウトレットへの在庫供給の悪循環へ陥らないよう、フラッシュセールを展開しています。
どんな価格帯のブランドでも、シーズン終盤には売れ残り商品をアウトレットへと移さざるを得ません。アウトレットモールに店舗を出せば、そこに商品を供給しなければ売上が維持できないというジレンマもあります。そこでla belle vie 株式会社はこの問題の解決を促す手段の一つとして、同社のECサイトをメーカー先に提案しています。
効率的な在庫運用の一環としてフラッシュセールを活用し、業界のサステナビリティ維持に努めた結果、同社はハイブランドの供給先とも良好な関係を築くことに成功しました。豊富な商品を取りそろえる同社サービスの強みは、フラッシュセールの意義や活用方法を独自に工夫することで、消費者はもちろん、メーカーからの信頼も得ています。
また、ブランド側が自社商品のイメージに合わせて卸先を使い分けることができるように、同社では2つのECサイトをあえて別個に運用している点も、高く評価されているとのことです。
ファミリーセール特化のサービス「ホワイトレーベル」の好調
la belle vie 株式会社は近年、ファミリーセール特化のサービス「ホワイトレーベル」を立ち上げ、好評を得ています。
ホワイトレーベルとは、各社ブランドが年に数回開催するファミリーセールを、la belle vieのプラットフォームを使って実施できるサービスです。オフラインのイベントとは異なり、オンラインで完結できるため、会場セッティングの負担などを回避しながらファミリーセールを実施できます。
手間と工数を削減しつつも、ファミリーセールに求められるニーズをうまく受容し、それでいて利便性を向上させていることから、売り上げは従来よりも倍増しているということです。
オンラインファミリーセールの実現にあたっては、EC関連の高度なシステム構築が必要でしたが、同社では、これまで蓄積してきたフラッシュセールやECサイト運営のノウハウを活かしてホワイトレーベルを実現させました。
la belle vie株式会社の最近の動向
そのほか、la belle vie 株式会社の近年の気になる動向を解説します。
仏ユニコーン「Mirakl」のプラットフォームソリューションを新たに採用
2022年11月、la belle vie 株式会社は従来のフラッシュセールサービスに加え、フランスのプラットフォームサービス「Mirakl」を新たに採用し、これまでにない購入体験を顧客に提供することを発表しました。
SaaS機能を提供するMiraklのプラットフォームを使うことで、より多くの商品の取り扱いが可能になるなど、今後の購入体験のポテンシャルについて期待が高まります。今後は、既存顧客はもちろん、まだ同社のサービスを体験していないユーザーへのアプローチも視野に入れながら、ECサービスの向上を進めるということです。
日本テレビがla belle vie株式会社の全株を取得
2023年4月、la belle vie 株式会社の全株が日本テレビホールディングス株式会社によって取得され、同社は事実上、日本テレビホールディングス株式会社傘下の企業となりました。
これまでに蓄積された膨大な販売データと、ほかのECサイトにはない強力なEC領域のテクノロジーが、日本テレビの通販事業を含めたメディア事業と掛け合わされることで、強力な顧客獲得に向けた集客施策が可能になると期待できます。
まとめ
この記事では、フラッシュセールの活用メリットや、同施策を活用するla belle vie 株式会社のビジネスモデルについて解説しました。フラッシュセールはたたき売りのように捉えられがちですが、運用方法によっては商品やブランドの価値を低下させることなくセールを行うことが可能です。
ECサイトの差別化では、価格のほかにも他社にはない商品ラインナップが求められます。メーカーとの関係を良好に維持し、差別化につながる商品数を確保している同社の取り組みは、自社EC運営の参考になることでしょう。