Shopify Plusを最大限アレンジしたECサイト
「『by me』は売上だけでなく、『いかに顧客の心をのぞけるか』を重視しています」
2023年1月に始動したby me。顧客が自らエッセンスを混ぜ合わせて、柔軟剤やミストを好みの香りにできるのが大きな特徴だ。ブランドオーナーを務めるファブリックケア事業部 副主任部員 伊東良子氏は、立ち上げの背景をこう語る。
「従来の事業だけでは、顧客と双方向のコミュニケーションや顧客情報の取得まではできません。当社の『より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)』というパーパスの実現に向け、顧客の生の声を聞く仕組みが必要でした」
ライオンは2007年に、機能性食品の通販事業「LION ウェルネスダイレクト」で、D2Cモデルを採用した。しかし、by meのようにブランドの世界観を表現した専用のECサイトはない。ECサイトとSNSを連動させるなど、オンライン上でブランドストーリーを伝えていく点で、by meはまったく新しい事業といえる。
by meのECサイトは、ベンダーと試行錯誤しながらShopify Plusで構築された。伊東氏は、「型はあるものの、アプリを組み合わせてアレンジを加えられる点でぴったりだった」と話す。
その構築にあたって、伊東氏が注力したのが、顧客目線の仕組み作りだ。
by meでは、9種類のエッセンスから香りを自由に作れる「My Blend」、11種類のエッセンスから顧客に合う香りを提案する「Select Blend」の2パターンが用意されている。複数の種類の中から選ぶ必要があるからこそ、顧客が楽しく購入できるよう導線を緻密に作り上げた。
たとえば、AIによる診断。「香りにこだわりたい」と考えている顧客にも、その程度は異なる。自分ですべて選びたい場合もあれば、良い組み合わせを見つけられない場合もあるだろう。そのため、Select Blendでは、顧客のライフスタイルやパーソナリティを深掘りする質問を投げかけ、回答をもとにAIがそれぞれに合った香りを三つ提案する。
診断終了後にも細かい仕掛けがある。AI診断のページから、商品ページに戻ると、提案された商品に「★」マークが付くようになっている。
「せっかくAI診断を利用しても、いざ購入するときに提案された商品を忘れてしまうかもしれませんよね。顧客がby meのECサイトにおいて、どのような導線で商品を購入するのか。実際に顧客が通る購入導線を繰り返し辿っていく中で必要だと感じた機能を追加していきました」
ECサイト一つとっても、伊東氏の持つ顧客目線のこだわり、感性が光るブランドだ。