欲しくなるまで気持ちを高める
「NO MORE RULES.」というスローガンを見聞きしたことがある人も多いだろう。花王の化粧品ブランド「KATE」は、今年で27年目を迎える。CMなどでも使われるこのスローガンには、「社会的な同調や固定概念にとらわれず、もっと自由にメイクを楽しんでほしい」という想いが込められている。
そのブランドパーパスを実現するため、これまでもユーザーの顔を分析してメイク方法を提案する「KATE MAKEUP LAB.」や、その技術を使用してパーソナライズされた4色のアイシャドウを提案する「KATE iCON BOX」といった体験型コンテンツを発表してきた。
これらがさらに発展したのが、同ブランドが没入体験型ECストアと称す「KATE ZONE」だ。まさに、KATEの世界観に浸りながら買い物ができるコンテンツとなっている。
KATE ZONEの公開に先立って、花王としては2022年12月に生活者と直接つながるためのデジタルプラットフォーム「My Kao」を開設。ブランド横断の公式通販サイト「My Kao Mall」の運用を開始した。KATE ZONEからも、My Kao Mallにアクセスし商品が購入できる。
秘密基地をコンセプトとしたKATE ZONEの空間には、五つのエリアを用意。なりたい顔のイメージに近づくためのメイクを提案する「LAB」、LIPSをはじめ、各プラットフォームに投稿された商品の口コミをまとめて閲覧できる「TUNNEL」など、ユーザーが商品を購入するまでの過程を楽しめる空間が構築されている。
KATE ZONEを開くと、はじめにLABで自分の顔をスキャンするよう促される。これにより、顔診断やバーチャル上でメイクを試すことが可能だ。
安田氏は、「洋服であれば、たとえばドラマを見ているときに『可愛い』と思った瞬間、ウェブで検索することがあると思うが、同じことをメイクでも実現したかった」と話す。
公開から1ヵ月で、KATE ZONEには毎日約1万人が来訪し、TwitterでもKATEとして過去最高に近い数の投稿が集まったという。特にLAB内のコンテンツ「FACE HACK」が人気で、なりたいメイク画像から、そのメイクに近づくためのKATEアイテムを見つけるなど、多くのユーザーが参加している。
売上においても、KATE ZONEからMy Kao Mallでの購入につながったコンバージョン数は5.3%を記録。順調な滑り出しといえるだろう。
「世界観に没入することと商品を購入することは背反しています。そのため、社内でも何度も議論しました。KATE ZONEで新しい発見をしたりコンテンツを楽しんでもらったりして、本当に商品が買いたくなるまでユーザーの気持ちを高める。そして、『欲しい』と思ったらすぐに購入できるボタンがある。そんなイメージです」(安田氏)