アパレル事業を中核とした株式会社オンワードホールディングスは、ウェルネスやコスメ、グルメなど幅広い分野で事業展開を行っています。近年ではオンラインサイトの強化や実店舗との連携に力を入れており、DXの取り組みにも積極的です。
本記事では、同社の企業情報や事業内容、強みや最近の動向などを解説します。
オンワードホールディングスの企業情報・事業内容の概要
株式会社オンワードホールディングスは、日本の大手アパレル・宝飾品会社である株式会社オンワード樫山などの企業から構成されるグループです。基本的な企業情報や事業内容について解説します。
オンワードホールディングスの企業情報
株式会社オンワードホールディングスの企業情報について、基本的な部分をまとめると次のとおりです。
社名 | 株式会社オンワードホールディングス |
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本社所在地 | 東京都中央区日本橋3丁目10番5号 オンワードパークビルディング |
設立年月日 | 1947年9月4日 |
代表者名 | 代表取締役社長 保元道宣 |
株式公開 | 東証プライム市場上場 |
資本金 | 300億7,900万円 |
おもなグループ会社 | 株式会社オンワード樫山 オンワード商事株式会社 株式会社アイランド ティアクラッセ株式会社 株式会社オンワードデジタルラボ 株式会社大和 など |
オンワードホールディングスは、紳士服や婦人服、子供服、雑貨などの企画・製造・販売を手がけるオンワード樫山や、ユニフォームやメンズウェア、ジュエリーなどを取り扱うオンワード商事などをグループ関連企業として抱える持株会社です。
海外においては、ヨーロッパやアジア、アメリカなどの各地域でアパレル事業を展開しています。
オンワードホールディングスのおもな事業内容
株式会社オンワードホールディングスは、中核となる株式会社オンワード樫山をはじめとした国内アパレル事業と海外アパレル事業を行っています。
そのほかにもグループの商品開発力や販売力を活かし、アパレル以外のさまざまな分野においてファッションを提案するライフスタイル関連事業にも取り組んでいる点が特徴です。ライフスタイル関連事業には、ウェルネス事業、ビューティー・コスメ事業、ペット・ホームライフ事業、グルメ事業、ギフト事業があり、強みとするアパレル事業との相乗効果やブランド価値の向上を図っています。
オンワードホールディングスの沿革
株式会社オンワードホールディングスの創業から現在までの流れをまとめると、次のとおりです。
年代 | 沿革 |
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1927年10月 | 樫山純三氏、樫山商店を創業 |
1947年9月 | 樫山株式会社(現 株式会社オンワードホールディングス)設立 |
1962年4月 | オンワード販売株式会社(現 オンワード商事株式会社)設立 |
1972年9月 | ONWARD KASHIYAMA U.S.A. INC. 設立 |
1988年9月 | 株式会社オンワード樫山(現 株式会社オンワードホールディングス)に社名変更 |
2007年9月 | 株式会社オンワードホールディングスに商号変更(アパレル事業部門を株式会社オンワード樫山が継承、商事事業部門をオンワード商事株式会社が継承) |
2009年12月 | 株式会社アイランド株式取得 |
2016年4月 | ティアクラッセ株式会社株式取得 |
2019年3月 | 株式会社オンワードデジタルラボ設立 |
このように、オンワードホールディングスは積極的なM&Aを行っており、アパレル事業を中核としつつも、事業領域を次第に広げています。
1972年の「ONWARD KASHIYAMA U.S.A. INC.」設立からもわかるように海外への進出も比較的早い段階で行っており、国内外において強いブランド力を誇っている会社です。
おもなブランドの紹介
株式会社オンワードホールディングスは、中核事業会社であるオンワード樫山をはじめとした国内アパレル事業と、ヨーロッパ、アジア、アメリカの各地域での海外アパレル事業を展開しています。国内アパレル事業では、多くのブランドを百貨店やショッピングセンターなどの商業施設、直営路面店、自社オンラインサイト、他社ECモールなどで展開しています。
百貨店では「23区」「ICB(アイ・シー・ビー)」「自由区」「J.プレス」「五大陸」などのレディース・メンズの主力ブランドを販売し、ショッピングセンターでは「any SiS(エニィ・スィス)」「any FAM(エニィ・ファム)」などのブランドを展開しています。
また、「JOSEPH(ジョゼフ)」「Paul Smith(ポール・スミス)」「TOCCA(トッカ)」などは直営店を商業施設などに出店し、ブランドの世界観やメッセージを顧客に伝えています。
ECを販路とするブランドには「uncrave(アンクレイヴ)」「#Newans(ハッシュニュアンス)」「ANEVER(アンエバー)」「UNFILO(アンフィーロ)」などがあります。実店舗と融合させたOMO型店舗を通じて、顧客の利便性向上につなげている点が特徴です。
オンワードホールディングスはブランド力に強みを持っており、ターゲットに合わせた販路を開拓することに注力しています。強力な商品開発力と販売力が、競合他社との差をつける大きな要因になっているといえるでしょう。
オンワードホールディングスの強みや特徴
株式会社オンワードホールディングスは、オーバーストア状態を大胆に改善する一方で、ECサイトやEC連動型店舗を強化しています。企業としてどのような強みや特徴を備えているのかを見ていきましょう。
ECサイト「ONWARD CROSSET」の高い伸び率
テレワークの増加やインバウンド消費の減少などの影響により、アパレル業界は都心の商業施設などでの集客に苦戦している傾向にあります。一方で、株式会社オンワードホールディングスが運営する自社ECサイト「ONWARD CROSSET」(オンワード・クローゼット)では、売上全体の3割程度を維持しています。
現状の販路の構成比は、EC、百貨店、ショッピングセンター、その他直営店でそれぞれ3分の1ずつとなっています。従来の主力販路は百貨店でしたが、時代の変化に合わせて販路の見直しに取り組み、DXを推進してきた効果が表れているといえるでしょう。
オーバーストアの大胆な改善
株式会社オンワードホールディングスでは、経営課題だったオーバーストアの改善に向けて2019年に700店舗を閉鎖し、2020年にはさらに700店舗を閉鎖しています。アフターコロナの状況においても、世界的に消費者の価値観やライフスタイル、消費行動が大きく変化することが予見されるため、従来の考え方にとらわれない柔軟な発想が重要であると捉えている様子です。
今後も店舗の質を重視しながら統合を進め、オンライン専用商品の開発や新規顧客の開拓を進めていくとしています。
EC連動型店舗の強化
株式会社オンワードホールディングスのメンバーシッププログラムである「オンワードメンバーズ(ONWARD MEMBERS)」の会員は360万人規模です。主要なグループ会社であるオンワード樫山では自社EC比率が89.1%(2022年2月期)を占めており、グループ全体の2023年度EC目標売上高は480億円です。
将来的には、売上の半分を占める1,000億円規模までECの比率を高めることを目標にしており、オムニチャネル対応の郊外型店舗の出店なども計画しています。実店舗とオンラインストアの垣根をなくし、販売チャネルの多角化によって顧客との接点を増やす施策に取り組んでいます。
オンワードホールディングスの最近の動き
株式会社オンワードホールディングスの近年の動向として、デジタル領域に力を入れていることがうかがえます。最近の動向について見ていきましょう。
アパレルの再生を行う法人向けサービス『リペア工房』をオープン
2022年5月20日、法人向けのサービスである「芝浦リペア工房」をオープンしました。「着れない服を、捨てない服へ」というコンセプトのもと、生産工程でついたキズや汚れが原因となり販売できない製品の修理や仕様の変更、補修などを行うサービスです。
アパレル・ファッション業界のサステナビリティや環境保全に寄与することを目的としており、オンワードが長年培ってきた品質管理に関する豊富なノウハウや経験を活かすビジネスとして注目されています。
AIによるバーチャル試着サービスのトライアルスタート
2022年6月16日オンラインストア「ONWARD CROSSET」において、AIによるバーチャル試着サービスである「kitemiru(キテミル)」のトライアルがスタートしました。顧客体験価値のさらなる向上を目的としたサービスで、自分の写真を使ってスマートフォンひとつでバーチャル試着ができます。
今後も本格導入を進め、トライアルによって収集したデータなどを分析してサービスの質向上や課題解決に努める方針です。
リモート採寸システムの導入
2022年7月5日、株式会社オンワードホールディングスはバーチャル3Dアバターの活用でサンプル作製数を削減し、リモート採寸システムの導入によって、採寸コストの削減に成功したことを発表しました。
3D着装シミュレーションシステム「CLO(クロ)」と、サイズ推奨からオーダー集計業務までのリモート採寸を実現する「UOS(ウオス)」を導入し、サイズ違いなどのロスを減少させています。
目を通しておきたいオンワードホールディングスのトピックス
2023年08月24日:オンワード商事とオンワードクリエイティブセンターが合併し、新社名「オンワードコーポレートデザイン」へ 法人ビジネスの拡大と多角化を加速し、包括的に顧客企業をデザイン
オンワード商事とオンワードクリエイティブセンターは合併し、新社名「オンワードコーポレートデザイン」として、新たな門出を迎えた。オンワードグループの法人ビジネスを担う中核事業会社として、社会や企業の課題に対して包括的に顧客企業をデザインしていく。
2023年08月02日:オンワード商事が障がいがある多彩なアーティストの作品を発信するBtoB向け新サービス「COCOLORFUL」を提供開始
オンワード商事は、障がいがある多彩なアーティストの作品を企業向けの商品企画提案に活かすことで、アーティスト活動の認知拡大と支援を目指す新サービス「COCOLORFUL(ココロフル)」を開始した。
2023年2月27日:進化したサステナブル経営を推進するプロジェクト「グリーン・オンワード」を始動 ~不要になった衣料品を活かして新たな価値を創造する「アップサイクル・アクション」をスタート~
オンワードホールディングスは、「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」 というミッションステートメントに基づいて、オンワードグループ全体でより進化したサステナブル経営を推進するプロジェクトとして、「Green Onward(グリーン・オンワード)」 を開始した。
2023年01月31日:制服の企画生産とSDGs教育を手掛ける学校向け新サービスを提供開始 第一弾は筑波大学附属坂戸高等学校が「多様性」をテーマに新制服を導入、体験型授業も採用
オンワード商事は、学校制服の企画・生産・販売事業を行っている。今回、学校向けに、新制服の企画生産とともに企業ならではの体系的な「学び」の機会を提供する新サービスを開始した。
2022年12月13日:日本旅行とオンワード商事がSDGsに関する協定を締結 学校向けに、環境問題を学ぶ教育旅行等の実践的な学習機会を提供
学校制服の企画・生産・販売事業を行うオンワード商事は、修学旅行などの教育旅行を企画および催行する日本旅行と、両社の顧客である学校に対して、SDGsの取り組みに関する実践的な学びの機会を提供することを目的として協定を締結した。
2022年11月10日:ANAとオンワード商事の共同アップサイクル 飛行機の廃シートカバーをルームシューズに!社員発案で廃棄から再利用へ
法人向け別注ユニフォームの企画・生産・販売を行うオンワード商事は、ANAホールディングスとのアップサイクルの取り組みにおいて、廃棄対象となったシートカバーをルームシューズに生まれ変わらせた「ANA特製ルームシューズ」を共同開発した。
2022年9月6日:2021年度の「サステナビリティレポート」を公開 サステナブルなコトやモノを推進する組織も新設
オンワード商事は、2021年度に取り組んだ内容とその結果を「サステナビリティレポート」として公開した。また、SDGsの取り組みをさらに推進するために2022年3月には、「サステナブル推進Div.」を新設した。
2022年8月31日:『UNFILO』22年秋冬からメンズ・ユニセックスラインを本格スタート
オンワード樫山は、昨秋販売をスタートした 『UNFILO(アンフィーロ)』 において、“動く。すべての人に、機能美を。”をブランドパーパスに掲げ、2022年秋冬シーズンから本格的にメンズ・ユニセックスラインをスタートする。
2022年8月23日:オーダーメイドブランド『KASHIYAMA』中国における事業エリアを拡大
オンワードホールディングスは、子会社であるオンワードパーソナルスタイルが取り扱うオーダーメイドブランド『KASHIYAMA(カシヤマ)』において、中国における事業エリアを拡大する。
2022年8月4日:POPなカラーリングとユーモラスなグラフィックでゴルフシーンを盛り上げる新ゴルフコミュニティーブランド『PW CIRCULUS』デビュー ~ユーザー参加型イベントやカスタマイズチームウエア制作なども計画~
オンワード樫山は、新ゴルフコミュニティーブランド 『PW CIRCULUS』を、9月10日(土)よりブランド公式サイトおよびオンワードグループ公式ファッション通販サイト 「ONWARD CROSSET」で販売を開始する。
2022年4月15日:全国の逸品を集めたグルメ通販サイト『オンワード・マルシェ』「eギフト」サービスを開始
オンワードグループのオンワードデジタルラボは、全国の逸品を集めたグルメ通販サイト『オンワード・マルシェ』において、LINEやメールを使ってギフトを贈れる「eギフト」サービスを今春より開始した。
2022年4月7日:"ネットで取り寄せ、お店で試着・購入"OMOサービス「クリック&トライ」リニューアル 44都道府県278店舗へ導入拡大で、より便利でより身近なサービスへ
オンワード樫山は、同社ブランドの商品をブランドの垣根を越えて店舗に取り寄せ、試着・購入ができるOMOサービス「クリック&トライ」をリニューアルした。
2022年3月17日:出産・育児に関する制度や休暇を周知するための「ガイドブック」を制定 ~4月の育児・介護休業法改正に先立ち、育休取得100%達成のための取り組みを強化~
オンワードホールディングスは、中核事業会社のオンワード樫山において、2022年3月に出産・育児に関する制度や休暇の取り方などを記載した「仕事と育児の両立支援ガイドブック」を制定した。また、ガイドブック制定にともない、管理職向けの男性育休に関する研修も実施し、社内啓発をさらに推進していく。
2021年10月6日:実店舗とECが連動した新業態「OMO型店舗」を出店拡大阪神梅田本店に10月8日(金)オープン、この秋、新たに全14店舗へ 〜オンラインストアの商品を取り寄せ、試着、購入可能なクリック&トライの利用が好調〜
オンワードホールディングスの中核事業会社であるオンワード樫山は、OMO型店舗の出店を拡大し、阪神梅田本店に10月8日(金)にオープンするなど、新たに10店舗出店した。
まとめ
顧客の消費行動の変化などによって、アパレル業界全体には大胆な変革が求められています。そんななか、国内外でアパレル事業を幅広く展開する株式会社オンワードホールディングスはオンラインストアでの売上が好調で、EC関連事業の強化を今後の成長戦略として位置付けています。
オンラインストア専用商品の開発やAIによるバーチャル試着実験のスタート、リモート採寸システムの導入など、同社では新たな手法で新規顧客を開拓しようとする動きが活発化しています。デジタル領域に力を入れるオンワードホールディングスは、競合他社にとっても今後さらに注目される存在となるでしょう。