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おさえておきたいEC・通販先進企業

ヤマダデンキが業界トップであり続ける理由 家電にとどまらず暮らしをまるごと提案


 大手家電量販店の株式会社ヤマダデンキは、家電製品以外の分野でも収益力を高めている企業です。実店舗のみならず、ヤマダウェブコムやヤマダモールなどのオンラインサービスでも意欲的な事業展開を行っています。今回は、同社の事業内容や最近の動きなどを紹介します。

 家電量販店を事業の柱とする株式会社ヤマダデンキ(旧ヤマダ電機)は、2020年10月1日に株式会社ヤマダホールディングスとして持株会社体制に移行しています。グループ全体の売上高は2022年3月期で1兆6,000億円を超えており、業界でも最大手の企業です。

 実店舗での販売だけでなく、ヤマダウェブコムやヤマダモールなど、オンラインでの販売にも力を入れています。

 本記事では、株式会社ヤマダデンキが業界のトップランナーとして走り続ける理由や事業への取り組み、最近の動向などを解説します。

ヤマダデンキの企業情報・事業内容の概要

 株式会社ヤマダデンキは1973年の創業以来、家電製品の販売をメインとして、全国規模で事業を展開しています。まずは、株式会社ヤマダデンキの基本的な企業情報や事業内容の概要を解説します。

株式会社ヤマダデンキの企業情報

 株式会社ヤマダデンキの基本的な企業情報は、以下のとおりです。

社名 株式会社ヤマダデンキ
本社所在地 〒370-0841 群馬県高崎市栄町1番1号
設立年月日 1973年 ヤマダ電化サービス創業
1983年 株式会社ヤマダ電機設立
2020年 株式会社ヤマダデンキ設立
代表者名 代表取締役社長 上野善紀
株式公開 東証プライム市場上場
資本金 1億円
おもなグループ会社 株式会社ヤマダホールディングス
株式会社ヤマダ住建ホールディングス
株式会社ヤマダホームズ
株式会社ヤマダファイナンスサービス
株式会社ヤマダ少額短期保険
株式会社ヤマダ環境資源開発ホールディングス など

 株式会社ヤマダデンキは国内最大手の家電量販店を運営しており、持株会社であるヤマダホールディングスの子会社です。「LABI(ラビ)」や「テックランド」といった複数の業態の店舗展開を行っています。

 株式会社ヤマダデンキのデンキ事業の売上高は、2022年3月期で1兆3,000億円あまりです。グループ会社を含めた全体では、1兆6,000億円を超える売上高であり、家電以外の分野においてもさまざまな事業展開を行っている点が特徴といえます。

株式会社ヤマダデンキのおもな事業内容

 株式会社ヤマダデンキのおもな事業内容としては、家電や情報家電などの販売や住まいに関する商品の販売を行っています。グループとしては、金融、保険、住宅関連などの事業にも進出しており、家電量販店の枠を超えてブランド力と組織力を活かした経営に取り組んでいます。

 家電だけではなく、「暮らしまるごと、快適住空間」をコンセプトとしており、家電販売をはじめ、生活雑貨や日用品、医療品、インテリア、住宅、不動産、リフォーム、モバイル事業、家電設置工事、金融、保険など、さまざまな事業を展開しています。

 また、オリジナル商品の開発やオンライン通販、スマートホームなど、新たな領域にも力を入れている企業です。

株式会社ヤマダデンキの沿革

 株式会社ヤマダデンキの前身である「ヤマダ電化サービス」創業から現在に至るまでの流れを整理すると、次のとおりです。

年代 沿革
1973年 群馬県前橋市で電気店「ヤマダ電化サービス」創業
1983年9月 株式会社ヤマダ電機設立
1989年3月 株式店頭公開
2000年9月 東証一部上場
2007年 株式会社ぷれっそホールディングスの全株式を取得、完全子会社化
ぷれっそホールディングス傘下のサトームセンの全店舗をLABIとテックランドに転換
2010年4月 日本の家電量販店として初めて、売上高2兆円を突破
2012年12月 ベスト電器と資本業務提携開始(2017年完全子会社化)
2015年5月 ソフトバンクと資本業務提携
2020年4月 田中屋川島酒店を吸収合併。ECサイトで酒類の全国販売を始める
2020年10月 株式会社ヤマダホールディングス持株会社体制へ移行、株式会社ヤマダデンキに事業継承
2021年9月 大塚家具を完全子会社化

 株式会社ヤマダデンキは家電量販店の事業を中心として、幅広い分野において事業の多角化を行っています。M&Aも積極的であり、グループ全体の販売力を活かし、住宅や金融、保険事業などにも取り組んでいるのが特徴です。

株式会社ヤマダデンキの強みや特徴

 株式会社ヤマダデンキが家電量販店を中心に売上高を増やしている背景には、競合他社と比較して強みとなる部分を持っているからだといえます。ここでは、おもに3つの点を解説します。

コスト・リーダーシップ戦略に軸足を置いている

 家電量販店は基本的に、販売している商品に違いがないため商品の差別化が難しく、価格面での勝負となる傾向があります。業界全体が低価格化の路線に向かっているので、競合他社よりもいかに低いコストを実現するかが重視されるといえるでしょう。

 株式会社ヤマダデンキは、豊富な経営資源を強みとして電化製品を大量に仕入れて販売するビジネスモデルを確立しました。「コスト・リーダーシップ戦略」に軸足を置き、競合他社よりも優位性を保っています。家電市場において価格決定権を持っていることが、株式会社ヤマダデンキの販売力につながっているのです。

 また、ECサイト「ヤマダウェブコム」では、実店舗で取り扱っている商品をそのままの価格で販売しています。実店舗とオンラインストアの両方で同様のサービスが受けられることにより、ユーザーの満足度を高めています。

 さらに、オンラインショッピングモール「ヤマダモール」では、株式会社ヤマダデンキ以外の店舗も出店しており、食品などの販売も行われています。実店舗やヤマダウェブコムと同様にヤマダポイントが利用できるため、ユーザーの利便性向上につながっているといえるでしょう。

 以上のように、自社商品の販売に力を入れつつ、ユーザーの利便性を向上させることによって、業界内において確かな存在感を得ているのです。

オリジナル家電で訴求力を高めている

 株式会社ヤマダデンキは家電を仕入れてただ販売するだけでなく、SPA(製造小売業)にも力を入れています。「ヤマダセレクト」では、「もっとお客様のご要望に応えたい」「もっとお客様にご満足頂ける商品を」をテーマに、多種多様なSPA家電を販売しています。

 自社で企画を行い、独自に開発したオリジナル家電を販売する体制を整えているのも、株式会社ヤマダデンキの強みです。

 たとえば、ヤマダオリジナルエアコン「RIAIR(リエア)」は、家電の機能をできるだけシンプルにすることで、開発や製造にかかるコストを抑えている点が特徴的です。ほかのメーカーよりも低価格帯のラインナップで構成されており、特に単身世帯に人気があります。

 また、メーカーや卸売業者を介さずに直接製造を行うため、収益率が高くなっている点も特徴といえるでしょう。

家電以外のセグメントにも力を入れている

 株式会社ヤマダデンキと持株会社である株式会社ヤマダホールディングスでは、家電だけでなく、生活インフラを支える商品やサービスを拡充しています。特に、住宅や家具といった分野への進出は競合他社よりも早く、住宅機器メーカーや住宅メーカーの子会社化、大塚家具の買収など積極的にM&Aを展開している点も特徴です。

 「インテリアリフォームYAMADA」では、家具やリフォームなどを取り扱っており、「暮らしまるごと、快適住空間」というコンセプトを具現化しています。

 ほかにも、金融セグメントや環境セグメント、フードや旅行といった分野でも地盤を固めており、「ヤマダデンキなら何でもそろう」といったブランドイメージを築くべく、新たな業態に進出しているのです。

株式会社ヤマダデンキの最近の動き

 株式会社ヤマダデンキは積極的な事業展開を行っているため、直近でもさまざまな動きがあります。注目しておきたい動きについて紹介します。

大塚家具を子会社化

 2019年12月12日、大塚家具を資本業務提携により子会社化しました。2021年には完全子会社化して、ECやDXへの投資を積極的に進めています。

 株式会社ヤマダデンキは家電販売事業だけでなく、住宅関連事業にも以前から力を入れていました。インテリアリフォームYAMADAを大塚家具とのコラボ店舗に転換するなど、それぞれの事業での相乗効果が生まれる取り組みを推進しています。

顔認証決済サービス「ヤマダPay」を導入

 2020年2月28日、株式会社ヤマダデンキはLABIカード会員の「ケータイdeクレジット」に、顔認証決済サービスである「ヤマダPay」を導入しました。当初は一部店舗のみで利用可能でしたが、2022年7月4日よりヤマダデンキ全店舗で利用できるようになりました。

 ヤマダPayは、顧客の性別、年齢、感情などを読み取ることが可能なAI画像解析プラットフォーム「AIZE」(アイズ)を活用した顔認証決済システムです。ヤマダPayの導入によって、迅速な決済や非接触での買い物など、ユーザーニーズに応えています。

Amazon Fire TV搭載「スマートテレビ」の予約販売を開始

 2022年2月17日、株式会社ヤマダデンキの持株会社である株式会社ヤマダホールディングスは、Amazonと協力して国内発のAmazon Fire TV搭載「スマートテレビ」の予約販売を開始しました。

 家電の販売という点で両社は競合関係にありましたが、スマートテレビの開発・販売で連携することでお互いの強みを活かせるようになったといえます。

 国内市場におけるテレビのニーズに詳しいヤマダホールディングスと、ストリーミングメディアプレーヤーに強みを持つAmazonが連携することで、販売強化につなげています。

 全国に約1,000店舗あるヤマダホールディングスの販売ネットワークで展示販売を行う一方で、ヤマダウェブコムやAmazon.co.jpでのオンライン販売も行うことで、ユーザーのニーズに合わせた多様な販売方法を提供しています。

目を通しておきたい株式会社ヤマダデンキのトピックス

2023年8月14日:ミダックホールディングスとの合弁契約締結に関するお知らせ

ヤマダホールディングスは、同日開催の取締役会において、2023 年7月 18 日付で公表した「ミダックホーディングスとの合弁会社設立に向けた基本合意書の締結に関するお知らせ」に関し、ミダックホールディングスとの間で合弁契約を締結することを決議した。

2023年7月4日:ヤマダデンキとプラゴ、店舗でのEV充電サービス提供に関する協業を開始

ヤマダデンキとプラゴは、顧客体験の向上および脱炭素社会実現に向け、店舗を拠点とするEV充電インフラ整備を図ることを目的として、2023年7月4日(火)より、LABI1 LIFE SELECT なんばにてプラゴの充電サービスの提供を開始した。今後は、全国に展開するヤマダデンキ店舗における充電サービスの拡充に向けて協業する。

2023年6月13日:リユース家電の取り扱い店舗拡大 大人気のリユース家電をもっと身近に ヤマダデンキ テックランドに登場!

ヤマダホールディングスのグループ企業であるヤマダデンキは、郊外型家電専門店「ヤマダデンキ テックランド」の6店舗においてリユース家電(洗濯機・冷蔵庫)の販売を開始した。

2023年5月15日:YAMADAの“ブカツへGO!” 「部活動の地域連携」サポート事業開始のお知らせ

 ヤマダホールディングスの地域・社会貢献活動の企画運用を担う、文化育成振興推進部は、陸上競技部選手・OBで手掛けるオリンピアによる講演や陸上教室活動を通じて得た、地方自治体や学校との関係構築と指導ノウハウなどを活かし、スポーツ庁および文化庁が2025年度までに実現を目指す「部活動の地域連携」に向けたサポート事業「YAMADAの“ブカツへGO!”」を開始した。

2023年1月31日:グループ内資源循環型システム構築に向けたみずほ銀行との「グリーンローン」契約締結について

ヤマダホールディングスは、カーボンニュートラル事業への設備投資を目的として、みずほ銀行にてグリーンローン契約を締結した。

2022年12月6日:社会課題解決へのヤマダの取り組み ヤマダデンキ849店舗の男性用トイレ個室への「サニタリーボックス」設置完了のお知らせ

ヤマダホールディングスは、ヤマダデンキにおいて、男性用トイレ個室への「サニタリーボックス」設置を推進、今回、849店舗への設置が完了したことを発表した。

2022年12月2日:YAMADA×LIXIL共同開発 「空間利用」をコンセプトにした新時代のトイレ空間をご提案

ヤマダホールディングスは、ヤマダデンキにおいて、「空間利用」をコンセプトにした、新しい空間発想のトイレリフォーム商品「Respazio(レスパジオ)」の提供を開始した。

2022年9月22日:ヤマダデンキ店舗にて イオンのコード決済サービス「AEON Pay」利用開始

ヤマダホールディングスは、ヤマダデンキにおいて、イオンフィナンシャルサービスおよびその子会社であるイオンクレジットサービスとの間で、「AEON Pay」(イオンペイ)に関する加盟店契約を締結した。

2022年6月30日:ヤマダNEOBANKスマホデビット(Mastercard)提供開始ならびに商品性改定のお知らせ

ヤマダホールディングスは、ヤマダファイナンスサービスを通じて提供する「ヤマダ NEOBANK」の商品性改定の予定を発表した。

2022年6月21日:ベスト電器ブランド インドネシア共和国 直営店舗1号店 「スナヤンシティ店」 グランドオープン! ~2022年6月17日(金)スナヤンシティ内~

ヤマダホールディングスは、ベスト電器ブランドで展開する海外事業において、新たにインドネシア共和国の首都ジャカルタにある「スナヤンシティ」に直営店舗1号店を2022年6月17日(金)にグランドオープンした。

2022年6月9日:ヤマダホールディングス DX戦略による業務効率化をSmartDB®︎で実現 ~働き方改革およびペーパーレス化によるSDGs目標達成へ~

ヤマダホールディングスは、「デジタルの民主化」のリーディングカンパニー ドリーム・アーツにおける、大企業向け業務デジタル化クラウド「SmartDB(スマートデービー)」を2019年9月に導入した。

2022年5月26日:“売る責任”を果たすべく、使用済み家電のリユース・リサイクルを中心としたグループ内完結 資源循環型システム構築を推進ヤマダ東日本リユースセンター群馬工場 増設! ~ヤマダホールディングスグループ サステナビリティ経営~

ヤマダホールディングスは、グループ企業であるシー・アイ・シーにおいて、使用済み家電のリユース製品の増産体制構築を目的として、2022年5月20日(金)ヤマダ東日本リユースセンター群馬工場(群馬県藤岡市)を増設した。

2022年5月18日:ヤマダのオーダーカーテン販売「スマートオーダーシステム」に新サービスがスタート

ヤマダデンキは、インテリックスと協力し、店頭でのTV通話システムによるリモート接客、およびQRコードを活用した店舗とネットショップのオムニチャネル化による新しいオーダーカーテンの販売システム「スマートオ―ダーシステム」 を順次展開してきたが、今回、スマートフォンからもTV通話でリモート接客を受けることができる新サービスが4月よりスタートした。

2022年4月27日:ヤマダホールディングス SDGs貢献活動「食」の課題解決に向けた取り組み「フードドライブ」活動を実施 ~食品は高崎市社会福祉協議会を通じて 子ども食堂を運営する団体等へ寄贈~

ヤマダホールディングスは、高崎市社会福祉協議会におけるフードドライブの取り組み主旨に賛同し、2022年4月20日(水)高崎本社にて食品ロス削減等の社会課題解決に向けたSDGsの取組みの一環として、「フードドライブ」活動を実施しました。

2021年12月10日:ライブコマースサービスによるオンライン接客販売開始

ヤマダデンキは、ライブコマースサービスによる、リアルタイムで配信する動画で商品やサービスが購入できるライブ配信を2021年11月27日より開始した。

まとめ

 株式会社ヤマダデンキは家電業界のトップランナーであるだけでなく、住宅や金融などさまざまな分野に積極的な事業展開を行っています。豊富な経営資源を活かしつつ、自社で商品開発を行うなど、競合他社との差別化に取り組んでいる企業です。

 「暮らしまるごと、快適住空間」というコンセプトを具現化した店舗づくりに力を入れており、さらに、ユーザーの利便性を高めるために株式会社ヤマダデンキ以外の店舗も出店するヤマダモールなども運営しています。

 顧客との接点を増やすことで、「ヤマダデンキなら何でもそろう」といったブランドイメージの確立に力を入れている企業といえるでしょう。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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