ECサイトの開発・保守・運用サービスを提供するデジタルソリューション事業と、職人とのものづくりブランド運営を中心としたデジタルマーケティング事業のふたつの柱を掲げ、仙台で事業を行う株式会社ワイヤードビーンズ。同社は地域経済や日本文化の継承に貢献することを命題とし、これまで事業を展開してきた。さまざまな顧客のECサイト構築を手掛けながら、日本各地の伝統工芸職人と共に作るオリジナル商品を扱うD2Cブランド「Wired Beans」を立ち上げ、デジタルチャネルを中心に自らの手で販売している。同社はなぜ、EC事業者のサポートともの づくりを並行してきたのか。二足のわらじを履く中で得ることができた知見とものづくりに対する考え、地方創生におけるデジタル活用や理想的な顧客との関係のありかたについて、デジタルビジネス事業部 デジタル戦略グループ グループマネージャーの長谷部孝典さんに話を聞いた。
ECで地域の文化に貢献したい 事業立ち上げはシンプルな思いから
ワイヤードビーンズは、2009年に創業。EC開発事業者としての事業開始とほぼ同時に、D2Cブランド Wired Beansを立ち上げ、オリジナルの製品開発とオンラインでの販売を行っている。
「当社が創業した当時、販売機能に特化したECモールから徐々にコミュニケーションの場として、自社ECというオンライン上の本店を設ける機運が高まっていました。そして、ECで顧客企業の課題解決に取り組むのであれば、同時に地域や社会の課題にも貢献することができないかと考えました」
杜の都・仙台から地域が抱える課題を考えるうちに、同社は優れた技術を持ちながらも廃業を余儀なくされている伝統工芸職人の存在を知る。問題を深掘りするにつれ、同様のことが日本各地で起きていることが明るみとなり、「ECで伝統工芸の復興支援を行う」というアイディアに至った。それがWired Beans立ち上げの経緯だ。自社で企画した商品を伝統工芸の職人に製造依頼し、オンラインで販売を行う。プロダクトデザイナーと職人をつなぎ、販売するフローを構築する中で、同社は職人の技術の素晴らしさを体感し、単に商品を作って売るだけでなく、さらに高い付加価値を提供したいと考えるようになったと言う。
「作って売っておしまい。これでは、一時的な解決にしかなりません。歴史ある伝統工芸や職人の技術を次の世代へ継承するには、職人がものを作り続けることができる環境構築や作ったものを使い続けてもらうフローを作る必要があります。提供価値を考えた際に、Wired Beansの製品において、どんどん新しいものを生産して消費するスタイルはそぐわない。それよりも、丁寧なものづくりに共感してくださるお客様と長きにわたって関係を続け、ファンからファンへと輪を広げていくことが重要であると私たちは考えています」