2012年に設立された「BASE」は、「お母さんも使える」をコンセプトに、誰もが簡単にECサイトを作成できるサービスとしてスタートした。これまでに開設されたネットショップは60万店舗、ショッピングアプリ「BASE」のダウンロード数は400万件を超えている。
そのBASEが決済事業に参入したのは2015年のこと。開発者向けのオンライン決済サービス「PAY.JP」で、シンプルなAPIと柔軟な料金体系を打ち出した。
さらに2017年には、スマホ決済アプリ「PAY ID」をリリースし、オフライン決済サービスにも進出。BASEの店舗およびPAY.JP導入事業者は、オンライン・オフラインを問わずPAY ID決済が利用できるようになり、また登録ユーザー同士の個人間決済も可能になった。現在、全国のPAY ID導入店舗は、オンライン・オフラインあわせて60万件以上、登録ユーザー数は100万人を突破している。
ネットショップ作成サービスからスタートし、PAY.JPやPAY IDで決済事業にも参入したBASE。代表取締役の鶴岡裕太さんに、決済サービスへの思いやキャッシュレス化とコマースのゆくえ、BASEの今後の展望を聞いた。
決済を取り巻く環境は大きく変化
いずれは支払い方法もお店選びの基準に
BASEが決済サービスに参入した3年前と比べて、決済を取り巻く環境は大きく変わったと鶴岡さんは語る。
「決済サービスは昔からある伝統的な業界ですし、王者がすでに決まっていたところにPAY.JPやStripeが参入しました。その後プレイヤーもずいぶん増えて、よりスタートアップフレンドリーになった3年間だったと思います。各プレイヤーが直近でやりたいことはバラバラだと思いますが、少し離れて眺めると、実は同じようなものを作っているようにも見える。決済を取り巻いている社会全体の状況も、大きく変わったなと感じますね」
キャッシュレスへの注目度も、3年前とは比べものにならないほど高まった。BASEでもPAY IDリリース後、スマホ決済のトランザクションが大きく伸びている。
「BASEはオンラインから入るショップさんが多いので、そもそも現金を扱いたくない人もいる。そこは相性がいいというか、インターネット上で買ってもらうことがスタンダードな人が多いので、キャッシュレス化がより顕著なのだと思います」
経済産業省は、2025年にはキャッシュレス決済の比率を40%に、さらに将来的には世界最高水準の80%を目指すビジョンを掲げているが、鶴岡さんは十分に実現可能だと考えている。
「キャッシュレスのほうが価値の交換がスムーズになる、コストが減って合理的になるというのは明確だと思います。逆にいうと、現金が必要な理由がないんですよね。僕が持っている価値を、現金というモノでしか証明できなかった時代はありましたが、今はモノで表す時代じゃなくなっている。僕に紐付いたIDはいっぱいありますし、リアルだけではなく、オンライン上にも僕という存在がある。インターネットテクノロジーの発展が大きな要因ですが、価値を交換するうえで、現金という質量で価値を示すべき理由がもうない、ということだと思っています。トイレに行くときにお財布は持っていかなくてもスマホは持っていくという人が増えているように、すでに多くの人にとってお財布よりもスマホのほうが大事なものになっていますよね。お財布の役割はスマホで担える。それが二次元コードなのかSuicaのようなNFC技術なのかは、今後いろいろなサービスが出たり消えたりしながら切り替わっていくと思いますが、基本的にはキャッシュレス化にいく方向しかないと思います。あとは遅いか早いかの問題でしょうね」