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季刊ECzine vol.03 特集「新しいコマースサービスが変えようとしていること」

「モノ軸」から「人軸」へ メルカリのライブコマースには、新しくて懐かしい世界が広がっていた


 フリマアプリの雄メルカリが新たに「メルカリチャンネル」というライブコマース分野に進出した。果たして、その真意はどこにあるのだろうか(※本記事は、2017年12月25日刊行の『季刊ECzine 2017年冬号』に掲載したものです)。

 身の回りで不要になったものをスマートフォンひとつで出品可能という手軽さの一方、個人情報保護に配慮されたサービス設計で、瞬く間にフリマアプリ界を席巻した、メルカリ。すでに同業界のパイを奪ったように見える同社だが、しかし見ている世界はまだはるか先にあるという。

 同サービスは2017年7月に、出品者がライブ配信で自身の商品をPRできる、「メルカリチャンネル」というライブコマース機能を、開発期間わずか2ヵ月半という驚異的なスピードでリリースした。中国などでは当たり前となりつつある、ライブコマース。果たしてどのような人が利用し、何が売れているのか。そこには、最新技術による新たな文化の創出と同時に、古くからある方法に立ち返ったような、不思議な世界が広がっていた。

やりたいことはまだまだある メルカリがライブコマースに進出した理由

株式会社メルカリ プロダクトマネージャー 荻原裕太さん
株式会社メルカリ プロダクトマネージャー 荻原裕太さん

 2013年7月にリリースされ、瞬く間に市場を席巻したフリマアプリ、メルカリ。必要なのはスマートフォンひとつで、商品の撮影から出品までがごく簡単にできること、また個人情報への配慮による安全な取引が魅力となり、女性を中心に日本最大のフリマアプリに成長した。

 さらには、2014年9月にアメリカで事業を開始すると、約3年で3,000万ダウンロードを記録するなど、日本発のアプリとしては異例のヒットを飛ばし続けているのだ。

 そのメルカリが2017年7月に開始したのが、ユーザー間で動画を通じてインタラクティブにコミュニケーションし、売買できる新機能「メルカリチャンネル」である。

 メルカリチャンネルは、ライブコマースと呼ばれる新しいジャンルに属する。ライブコマースとは、ECとライブ配信を掛け合わせたもので、現在進行形で配信されている動画を通じて商品を売買できる通販の形。例えるならテレビショッピングのネット版とも言えるもので、視聴者は出品者にリアルタイムで質問やコメントをすることも可能だ。リリース当初は、サービスそのものやユーザーに使いかたを知ってもらう意味も込めて、著名人がライブ配信。初日の7月6日には、オリエンタルラジオの藤森慎吾や、ものまねメイクで知られるざわちんが登場、ライブ配信で販売を行った。

 今回は、このメルカリチャンネルをわずか2カ月半ほどで開発したチームのメンバーであり、プロダクトマネージャーの荻原裕太さんにお話をうかがった。荻原さんは、メルカリがリリースされた2013年7月に同社に入社。日本版とアメリカ版双方の開発に携わり、メルカリチャンネルの開発にあたってもリーダー的な役割を担った人物である。

2017年7月に開始した「メルカリチャンネル」。リリース当初は、サービスそのものやユーザーに使いかたを知らせる意味も込めて、著名人がライブ配信。初日の7月6日には、オリエンタルラジオの藤森慎吾や、ものまねメイクで知られるざわちんが登場。
2017年7月に開始した「メルカリチャンネル」。リリース当初は、サービスそのものやユーザーに使いかたを知らせる意味も込めて、著名人がライブ配信。初日の7月6日には、オリエンタルラジオの藤森慎吾や、ものまねメイクで知られるざわちんが登場。

 まずは、メルカリがなぜライブコマースを始めたのかについて。

 「皆さまはメルカリに対し、比較的成熟したアプリというイメージを持っているかもしれません。しかし我々はまったくそうは思っておらず、お客さまにもっと新しい体験を提供したいと考えています。どういったことができるかを模索している中で、動画×メルカリでできることとしてたどり着いたのが、メルカリチャンネルでした」

 ECに限らず、ライブ配信は現在のインターネットにおける大きなトレンドのひとつだ。ニコニコ動画やツイキャスなどおなじみのサービスはもちろん、FacebookやInstagram、LINEといった大手SNSも、ここ数年で争うようにこの分野に参戦している。人気の秘密は、ライブならではの臨場感はもちろん、コメントのやり取りなどのインタラクティブ性に代表される、配信者と視聴者の密なコミュニケーションが挙げられるだろう。

 ライブコマースはそのような強みと、「信頼している人の紹介だから買う」といった、動画ならではの「人軸」のコミュニケーションが結びついた、ある種「ハイブリッドなEC」の形だ。

 加えて、動画であれば画像ではわかりにくかった商品のサイズ感や色合い、とくに洋服やバッグであれば側面や裏側なども簡単に確認できるため、受け取れる情報は画像よりはるかに大きなものとなることも見逃せない特徴だろう。

 このライブコマースがとくに盛んな国として挙げられるのが中国で、インフルエンサーであるKOLの中には、日本円で億単位の収入を得る人も出てきているという。同国ではとくに偽物が市場に広く流通しているため、ライブ配信を通じて「商品が本物である」という安心感を得られることが重要なポイントになっているのだ。

 荻原さんも「会社全体として、中国に限らず世界中のサービスをウォッチしている」と語り、ライブコマースが今後も注目のジャンルであることは間違いなさそうだ。

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この記事の著者

渡邊 徹則(ワタナベ テツノリ)

株式会社Version7代表取締役。Web・コンテンツ制作、分析、マーケティングなどを手掛ける。 執筆業では、主にソーシャル、EC、海外サービス、メディアなどが専門。 会社概要 - seven@ver7.jp - Twitter/Facebook @brigate7

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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