富士経済は、消費者の旺盛な購買意欲に支えられて拡大を続ける中国のEC市場について、中でも伸びが著しい中国向け越境ECを中心に調査を行い、その結果を報告書、「中国向け越境EC市場の実態と今後 2016」として発表した。
本報告書では、中国ECと中国向け越境ECの市場規模および商品カテゴリー別、受注形態別、販売エリア別の市場動向や購入者属性などを分析するとともに、中国向け越境EC市場への参入企業のケーススタディを通して市場の現状を把握し、今後の方向性を予想した。なお、市場は物販を対象とした。
調査結果の概要
日本からの中国向け越境EC市場は急拡大を続けており、2016年は613億元(1元=16.57円として約1兆158億円)が見込まれる。中国市場への進出を図る手段として越境ECへ注目が集まり、2015~2016年にかけて日本企業による中国ECサイトへの旗艦店出店や卸での進出が増加した。中国で日本の化粧品や雑貨、食品、家電などの認知度が高まっていることも、市場拡大の追い風となっている。なお、商品カテゴリー別では「生活雑貨」と「ビューティ他」がそれぞれ30%以上の構成比を占めている。
生活雑貨
「生活雑貨」の主要商品は、ベビー用紙おむつだ。越境EC普及前から中国製に不安のある消費者には日本製の人気が高く、個人輸入や旅行時の購入、中国国内ECでの転売品の購入などが行われていた。しかし、これらのルートでは劣化品や粗悪品が流通しブランドにダメージを与えるリスクがあるため、参入メーカーによる越境ECでの展開が広がっている。また、ベビー用紙おむつはドラッグストアなどの流通系ECでの取り扱いも多いことなどから、価格競争が激化している。
ビューティ他
「ビューティ他」では、スキンケアを中心とした化粧品の人気が高い。2016年4月に行郵税が廃止されたことにより、100元以上の商品は実質減税となったため、単価の高いスキンケア商品の販売が増えている。シャンプー、ヘアケア商品も需要が高く、今後は高級スキンケアブランドの進出が期待される。
アパレル
「アパレル」はベビー・子供服、インナーウェア、マタニティウェアなどの販売が徐々に増えている。「家電」は炊飯器や空気清浄機などインバウンド消費の人気商品が中心であるが、取り扱いは小規模だ。「食品」は菓子類や飲料(リキッド、茶葉類)が中心で、「フルグラ」「じゃがポックル」(ともにカルビー)などのインバウンド消費でも人気の商品が売れ筋。「健康食品・医薬品」はサプリメントが中心であるが、実績はまだ小さい。
受注形態
受注形態別では、スマートフォン経由が60%以上を占めていた。4G対応の安価なスマートフォンが普及しており、独身の日などの大規模なセールイベント時にイベント中継をPCで鑑賞しながらモバイル端末で商品を購入する消費者が多い。また、ECサイト側ではショッピング用のスマートフォンアプリを公開し、クーポン発行などでスマートフォンへの顧客誘導を進めている。
【調査概要】
調査方法:富士経済および中聯富士経済諮詢の専門調査員による、参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
調査機関:2016年7月~12月