オンラインで買い物することが日常的になり、コロナ禍の外出自粛によりネットショッピングの普及をさらに加速させた。多くの消費者は、欲しい商品に関するカスタマーレビューや口コミ評価を収集し、その情報をもとに比較検討してから購入を決めている。
その一方で、EC大手アマゾンの不正レビュー騒動により、オンライン評価に対する不信感が募りかねない事態となり、その対策の重要性が一層強く認識されるようになった。
このような最新の動向を踏まえたうえで、キャプテラでは、オンラインレビューを参照した経験のある人を対象にアンケート調査を実施。同調査結果から見るカスタマーレビューの利用状況を紹介し、オンラインレビューに対する消費者の意識を探った。
オンラインレビューの信頼性は健在 77%が「参考にする」
消費者が商品やサービスを目にしてから購入に至るまでには、さまざまな情報を吟味して検討するという重要なプロセスがある。情報の発信方法やチャネルが多様化するなかで、購入する際にもっとも信頼される情報源についてたずねると、「オンラインのカスタマーレビュー・口コミ評価 」が35%で、次いで「友人や家族からの情報 」20%、「専門家による体験談 」18%と続いた。「インフルセンサーやブロガー」と「芸能人などの著名人」はそれぞれ2.5%未満なっている。
購入前にどの程度オンラインレビューを参考にするかと質問したところ、「ある程度参考にする 」58%と答えた人と、「大いに参考する 」19%と答えた人を合わせて77%となり、回答者の7割以上がカスタマーレビューを購入の参考材料としている結果となった。
オンラインレビューのなかでも、従来の文章で書かれたレビューに加え、現在は動画レビューやSNS上での書き込みなど、さまざまな形式のものがある。消費者の好みのレビュー形式についてたずねたところ、もっとも多かったのは「利用者による文章で書かれたレビュー 」(71%)だった。
投稿時期はそれほど重要ではないが、一定程度の数が必要
続いて、文字形式のレビューに絞って、評価件数や投稿時期に関してどのような要素がレビューの信頼性につながるのか、いくつか質問を行った。その結果、投稿された時期は「特に気にしない」と回答した人が31%。同社で同じサーベイをほかの国(フランス、メキシコ、ドイツ、カナダ、英国)でも実施したが、投稿時期にこだわらない回答が優勢なのは日本のみだったという。
ただし、レビューの新鮮さは情報収集にまったく影響しないというわけではなく、投稿時期にこだわりを示した416人のうち、「過去1〜3ヵ月以内に投稿されたもの」が参考になると答えた人は43%(全回答者の30%)、「過去6ヵ月以内に投稿されたもの」と答えたのは34%(全回答者の24%)となり、古ければ古いほどレビューの参考価値が落ちている。
一方、レビューの件数に関しては、ある程度あったほうが、信頼度が増すと推測。「製品・サービスを信頼するために必要なレビュー件数」をたずねたところ、もっとも多かったのは「6件から20件」(37%)で、次いで「1件から5件」(23%)だった。また、「ひとつの製品・サービスの購入を決めるまでに、何件くらいのオンラインカスタマーレビューを参考にするか?」という質問に対して、半数以上(53%)が「2件〜5件」参考にすることが明らかとなった。
さらに、製品のランク、星数などといった評点は重要な判断材料になるが、レビュー件数と天秤にかけた場合、優先度が下がる傾向に。アンケート対象者に次のふたつの製品・サービスのうちひとつ購入するとしたら、どちらを選ぶかを質問した。
- A品:評価件数が5件で、口コミ評点が5点(5点満点中)
- B品:評価件数が15件で、口コミ評点が4点(5点満点中)
最高点ではなくても評価件数の多い「B品」は64%の回答率を得ており、評点5点の「A品」(36%)を2倍近く上回った。実際にすべてのレビューが読まれなくても、件数を集めることが信頼性につながることを示唆する結果となった。
ネガティブなレビューにも価値がある
レビューの閲覧行動について、さらに掘り下げて質問したところ、肯定的なレビューと否定的なレビューの重要度に関しては、特に大きな差は確認されなかった。複数のレビュー投稿がある場合、最初にチェックするのが「最近のレビュー」であると答えた人は36%で、「ポジティブなレビュー」と「ネガティブなレビュー」はそれぞれ16%の回答者が挙げている(残りは「特に順番はない」と回答)。
また、下記のグラフからみてとれるように、ポジティブなレビューとネガティブなレビューでは、信頼度の差はほとんどなかった。半数以上は「どちらも同じ程度信用する」と回答し(56%)、「ネガティブなレビュー」(24%)と「ポジティブなレビュー」(20%)は同程度の回答を得ている。
最後に、前述した偽レビュー騒動が取り上げられているなか、カスタマーレビューの信憑性がどの程度疑われているかを検証した。ネットショップなどに掲載されているカスタマーレビューのうち、いわゆるフェイク(やらせ)レビューはどの程度あると思うかという質問に対して、「半分以下」(37%)がもっとも多く、「半分程度」(36%)、「半分以上」(14%)と続いた。
また、消費者が本物のレビューを見極めるためにどのような点に気を付けているのかをたずねたところ、「長所と短所をバランスよく評価していること」(47%)、「売り手に対してネガティブなレビューもあること」(43%)、「信頼できるレビューサイトに掲載されていること」(38%)が上位3位を占めた。
これらの結果から、肯定的・否定的なレビューがまんべんなく掲載されていることによって、製品・サービスに対する信用が向上すると考えられる。ここで鍵になるのは、否定的なレビューが投稿された際の企業側の対応である。普段、レビュー投稿に対する企業の返答を読む人は全体の約7割(71%)だったが、そのうちのほぼ半数(全体の35%)は「レビューの良し悪し関係なく、全ての返答を読む」と回答している。
企業の課題とレビューの活用方法
ビジネスにおいて適切なレビュー管理は重要だが、オンラインレビューに対するメーカーや企業の姿勢について、「レビューをある程度重視しているが、十分ではない」と感じている回答者は63%だった。
調査概要
- 調査内容:「オンラインカスタマーレビューに関する調査 ──消費者アンケート」
- 調査期間:2022年3月23日〜4月4日
- 調査対象:全国のモニター704人(日本在住の18歳以上で、製品・サービスを購入する前にカスタマーレビューを参照した経験がある人)
- 調査方法:オンライン
- 有効回答数:603人