バーチャルツアーと古民家移築という、新しいインバウンドビジネス
――オンラインガイドツアー「JAPONISME(ジャポニスム)」が今、話題です。どんなツアーですか?
単純に、オンラインで観光地の映像を見ながらガイドが解説していくツアーではありません。「JAPONISME(ジャポニスム)」では、ガイドはスタジオにいながらリアルタイムでお客様とお話したり、日本文化について解説したりといったことを行います。解説は随所随所で行っており、たとえば高山の場合、酒蔵の映像や神社の映像を流し、日本人の宗教観など外国人が興味を持つ内容も織り込んでいます。1時間程度のツアーですが、一度体験すると、高山の町はもちろん「日本文化」についても理解することができます。現在提供しているのは「高山ツアー」と「浮世絵ツアー」のふたつですが、順次増えていく予定です。基本的に、全編英語でのツアーになります。
――それ以外にも古民家の移築サービスを行っているとか。
古民家の移築事業のサービス名は「M」と言います。名前の由来は、民家の頭文字の「M」です。海外のお客様も多いため、わかりやすくアルファベット1文字でいこうと考えました。国内外の富裕層向けに古民家を紹介し、移築まで行います。飛騨エリアにある古民家は、今では材料の入手が難しいものもあり、貴重なものばかりです。当然ながら、一般的な不動産屋では扱っていないものも多く、私が飛騨に住んでいるからこそ得られる情報もあります。本事業を通じ、貴重な古民家を次の世代に引き継いでいけたらと思っています。
――たとえば、飛騨の古民家を東京のどこかに移すこともできるということですか?
海外にも持っていくことはできます。大工さんの派遣など、お金がかかることはさまざま出てきますけれども。現に、海外のお客様からお問い合わせをいただくことが増えています。このビジネスの目的は、先ほどお話しした古民家の存続のほか、大工さんの技術継承もあります。大工さんの技術には地域ごとに特色があるのですが、飛騨の大工さんはとくに技術力が高いんです。今では、高齢の大工さんが多くなってきていますから、若い大工さんにその技術を受け継いでほしいという願いがあります。年々、古民家は減少しています。移築し、事業として活用していくことで、古民家自体も残していければと考えています。
――やはり自分で住むよりも、カフェのようなお店にするなど、事業目的の方が多いのですか?
飛騨の民家はとても大きく、450平方メートル以上のものもあります。一般的なコンビニエンスストアが100平方メートルほどと言うと、大きさがわかっていただけると思います。そのため、今の時代に住居目的にするのは難しい面もあり、どちらかというと商業施設にされる企業様が多いですね。