サービス戦略を強化 Dell Technologies
パソコンの開発・販売から始まったDellが、2016年にストレージEMCを買収して誕生したDell Technologies、仮想化のVMwareなどEMCが保有していた企業を一挙に飲み込んだ年商922億ドル規模の巨大ベンダーです。大学生時代にパソコンの受注生産モデルを思いつき創業したMichael Dell氏は、現在も会長兼CEOを務めています。
EMCと合併前のDellのイベントは、本拠地のテキサス州オースティンで12月に行われていました。Dellが事業をSMB(Server Message Block)に拡大したこともあり、どちらかと言うと中小企業をターゲットとしたこじんまりとしたものでした。それでもゲストは豪華で、TeslaとSpace Xで知られるElon Musk氏、元アメリカ大統領のBill Clinton氏などが登場したのは、やはりMichael Dell氏の人脈と言えます。
合併後は、EMCの年次イベントに合わせ日本のゴールデンウィークにあたる時期にラスベガスで開催となりました。アットホームな雰囲気がなくなったのは残念でしたが、参加者数が数倍になったことを考えると当然かもしれません。名称は当初「Dell EMC World」でしたが、2018年に社名を反映して「Dell Technologies World」に。同名称で3年めの開催となるはずだった今年は、ご存じのようにコロナ禍のためにオンラインとなり、開催時期も4月末から10月21・22日にずれ込みました。
イベントの目玉は、「Project APEX」の発表です。同戦略について説明する前に、ハードウェアベンダーの状況を見てみましょう。周知の通り、ITのトレンドはクラウド。インフラではIaaS、ソフトウェアではSaaSとして、所有するモデルから必要な時に必要な量を調達する、あるいはサブスクリプションで利用するというas a service型に移行しています。メインストリームとなったクラウドに対し、ハードウェアベンダー、オンプレミス型のソフトウェアを提供してきたソフトウェアベンダーは、自社製品のクラウド対応とビジネスモデルの変革を強いられています。
今となっては、DellによるEMCの買収もクラウドの台頭に対する危機のようなものを象徴していたと言えます。インフラ機器調達は多額な初期投資を強いられますが、今やAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどから必要な分だけリソースを買うことができるようになり、事業部はIT部門に相談することなく、クレジットカード1枚でリソースを調達できるようになっています。
Project APEXは、Dell Technologiesのサーバー、ストレージなどの機器をas a serviceとして利用できるようにするものです。顧客は自社に機器を持ちつつ、以前のように大型な初期投資をすることなく、使った分だけ、あるいはサブスクリプション型で対価を払うことができる、と謳っています。