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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

ECzine Day 2019 KANSAI レポート(AD)

運用型広告の“滑らない”打ちかたとは アナグラムが徹底解説

 運用型広告のコンサルティングを専門に請け負うアナグラム株式会社。ECzineのイベントでもたびたび独自の広告運用理論を披露してきたが、今回は関西の事業者向けに最新の状況をふまえて「5タイプ理論」の解説を行った。ここでは、2019年10月25日に行われた「ECzine Day 2019 KANSAI」の模様をレポートする。

BtoC市場のEC化率上昇 トップ企業は軒並み対応

アナグラム株式会社 チームリーダー 山元勝雅氏
アナグラム株式会社 チームリーダー 山元勝雅氏

 運用型広告を取り巻くEC市場は年々規模を拡大している。特に、アパレル企業のEC化率は12.96%と著しい伸びを見せており、ユニクロの店舗受け取りサービスやユナイテッドアローズのOMO施策など、トップ企業の自社EC比率増加に伴い、自社ECサイトへの集客の重要性が高まっている状況である。

 また、広告市場も運用型広告の追い風といえる状況だ。長らく日本の広告費はテレビがほぼ独占するような形だったが、近年はネットの広告費がテレビのそれを追い抜く勢いで成長している。

 運用型広告自体の進化はどうか。Googleは従来の検索連動型広告に加え、検索結果画面に画像付きで商品が表示される「ショッピング広告」の提供を開始した。これにより、自社の商品データを広告配信先のフォーマットに変換して送信する仕組みであるデータフィードの重要性が増した。あるECサイトでは、コンバージョンの約半数をデータフィード広告が占めていると言う。ネット広告の花形、ヤフーの「PCブランドパネル」も、現在では純広告枠としてのみならず、運用型広告枠としても解放されている。さらに、世界最大級のショッピングモールAmazonでも、運用型の広告メニューが実装されている。

 このように運用担当者が把握しなければならない媒体数が多く、アップデートのペースも速い運用型広告を、SNSなどと並行して自社で適切に運用するのは至難の業だ。複雑化する運用型広告の“滑らない”打ちかたとして、山元氏は今日の本題である「5タイプ理論」の解説に移った。

該当商材は「指名買い」と「衝動買い」のどちらに強いのか

 アナグラムでは、ECサイトや商品の特徴に応じて5つに分類する「5タイプ理論」を独自に考案している。

 5タイプ理論で分類の軸となるのは、「商品の買われかた」だ。インターネット上の購買行動は「指名買い」と「衝動買い」のふたつに分類でき、商品によってどちらに強いかが分かれると言う。

 たとえば、映画の主役が身につけていた高級腕時計をほしくなり、「ブランド名 映画のタイトル」で検索をかけて購入するのは指名買いだ。逆に、通勤中にスマホで高級腕時計の広告を目にしても、高額な商品の衝動買いはなかなか起こりにくい。よって、高級腕時計は指名買いに強く衝動買いに弱い「有名ブランドタイプ」に分類される。

 商品数が多く、指名買い中心の有名ブランドタイプは、「ブランド名」「商品名」「型番」「通称略称」といった指名検索ワードにボリュームがあり、検索→検討→購入という導線を辿りやすい。また、商品のベネフィットよりもブランドそのものに魅力を感じ、商品購入が行われる傾向にある。

 具体的な配信手法を解説する前に、山元氏は広告配信のポートフォリオを設計する重要性についてこう語った。

「どの媒体やどのターゲットにどれくらいの予算を配分するのか、それを整理したものがポートフォリオです。KPIがECサイト上でのCV・売上などを重視する場合、CPAが低くCVの多い施策はどれなのか、などの仮説を立てたうえで配信することが“滑らない”ための秘訣です」

 このポートフォリオによると、有名ブランドタイプは検索連動型広告で指名キーワードを検索された場合や、ショッピング広告で指名キーワードを検索された場合にもっとも獲得につながりやすくなる。

「このふたつを実施していないということは、ユーザーがせっかく指名買いしようと検索してくれているのに、自社ECサイトへの流入経路の選択肢を狭めている状況を意味します。『どの経路で買ってくれても問題ない』というブランド戦略であれば良いですが、自社EC比率を上げ、ユーザーとメルマガやクーポンなどでコミュニケーションを取りたい場合は、必ず実施しましょう」(山元氏)

 また、ユーザーが商品の購入を検討する期間も忘れずに想定すべきだと山元氏は語る。検討中に接触することの多いディスプレイ広告関連のリマーケティング、なかでも商品数の多いECサイトでは検討中の商品を広告訴求できる動的リマーケティングの効率が高く、活用メリットは大きい。

 第2のタイプは「ニッチタイプ」だ。コスプレ衣装やスポーツのユニフォームなど、限られたユーザーを対象とした商材がここにあてはまる。指名買いも衝動買いもされにくいが、そのぶん競合が少ないという優位性もある。

 ニッチタイプの広告配信でもっとも重要なことは、限られたユーザーが検索したときにもれなくリーチすることだ。

 たとえばコスプレ衣装の場合、「作品名 コスプレ衣装」といった主要キーワードはもちろん、作品に登場するキャラクターの名前なども網羅することで、限られたユーザーの検索行動に確実にリーチする必要がある。また、検索連動型広告と並行してディスプレイ広告の運用にもチャレンジしてほしいと山元氏は話す。

「特定ユーザーを想定したターゲティング、広告クリエイティブで配信がきちんとできていれば、ディスプレイ広告もコンバージョンにつながります。PDCAを回しながら運用することをおすすめします」

変化に対応しやすいのが運用型広告のメリット

 第3の「オリジナルタイプ」は、サプリやコスメなどのいわゆる単品通販が分類される。商品数は少ないが、自社開発商材が多いため利益率が高く、定期購入によるリピート率も期待できる商材が多い点が特徴だ。

 このタイプが検索連動型広告を運用する場合、たとえば「青汁」「化粧水」などの一般キーワードは競合企業の多くが入札し、クリック単価も高くなる。そのためCPAが高く、売上につなげることが難しい。そこで、衝動買いを促せるディスプレイ広告を中心に運用すれば、クリック単価も低く、潜在的なニーズを掘り起こし、購入につながると言う。

「このタイプはLPが肝要です。広告文やクリエイティブにこだわりつつ、LPの検証を常に行いましょう」

 メンズ、レディースの幅広い商品ジャンルを扱うユニクロやニッセンのようなアパレルブランドは「総合タイプ(A)」にあてはまる。指名買い、衝動買いのいずれにも強く、商品数の多さが特徴として挙げられる。

 このタイプで重要なのは、広告配信で全商品が網羅されていることだと言う。そのためには動的検索広告のようなテクノロジーを駆使し、自動化によって抜け漏れのない広告運用を行うべきだと山元氏は語った。

「商品数が少ないオリジナルタイプは、広告文にこだわることがポイントでしたが、たとえばユニクロのように商品数が多いブランドで全商品の広告文を手動作成していては担当者が倒れてしまいます。このタイプは、運用型広告のテクノロジーを活用し自動掲載に任せることが重要で、動的検索広告や動的リマーケティング広告をやっていない担当者は早急に手配を進めたほうが良いでしょう。また、指名買いも多いので有名ブランドタイプ同様、指名検索時の流入導線を確認することも大事です」

 これまで紹介した1〜4にあてはまらない商材は「総合タイプ(B)」に属する。ドレスや生花、振袖などが例として挙げられる。総合タイプ(A)同様、商品数は多いが指名検索は少なく、季節やイベントによって需要が大きく増減するという特徴を持つ。

 このタイプの広告運用のポイントは、季節やイベントに沿った広告費や検索キーワードの調整にある。ブランド名よりも「母の日」「結婚式 お呼ばれ ドレス」「プレゼント」といった一般キーワードからの獲得ボリュームが非常に大きいため、掛け合わせなどの抜け漏れがないかを確認する必要がある。また商品数が多いケースが多いため、動的検索広告のようなテクノロジーを活用する必要がある点は、総合タイプ(A)と共通している。

 山元氏は、「5タイプ理論はあくまで『型』」だと強調した。紹介したポートフォリオはあくまで売上の最大化を目指した場合です。また、ブランドの認知度や商品単価、各企業において重視されるKPIはさまざまあるため、これらのポートフォリオをもとに自社の商材と相性の良い広告を整理できてから、やっとスタート地点に立てるのだと言う。

 広告メニューの仕様やテクノロジーは日々進化し続けている。山元氏は運用型広告の最大のメリットを「変化や進化に対応しながら運用できること」だと話した。

 最後に山元氏は、運用型広告配信の原点についてメッセージを残し、講演を締めた。

「運用型広告で一番大切なことは、誰に何を届けるかです。自分たちが届けたい人たちを想像しながら配信することが成功の要になると思います。運用型広告は効果が可視化しやすいぶん、費用対効果の話に終始しがちですが、自分たちが良いと思ったものをユーザーに届けるメッセージのひとつだということも忘れずにいてほしいです」

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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