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IoT&AI時代に、ECプレイヤーが持つべき「儲かるのはわかっているけどやらない」道徳規範とは

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全員に「儲かるのはわかっているけどやらない」道徳規範を

 先日、スマホが故障して別の機種に変えた際に改めてLINEのアプリを入れたのですが、グループや友達などについては復活したものの「会話の履歴」についてはすべて消えていました。つまりログインIDに紐づけされたグループや友達などのデータはLINEの方で持っているものの、会話そのものについてはローカルデバイス(=各個人のスマホやPC)のほうに記録されていて、LINE本体には会話のデータは残されていないということになります。

 会話の内容については「ログ自体を残さない」という方針は、たいへん賢明な判断だと思っています。LINEやFacebookの会話の内容は「高度なプライベート」に相当するものであり「会話している当人以外の第三者」が知るということは電話の盗聴に匹敵する行為に等しいかと思いますが、家電専用サーバーやSNSのプラットフォームを提供している立場であればログさえあれば「やろうと思えばできる」環境にあるのです。だからこそログ自体を持たないことによって、誤って社員の誰かが一線を超えるリスクを回避していると言えるかもしれません。

 リアルタイムの“会話”や家電専用サーバーなどのログは、個を特定できないビッグデータの形にしただけでも大きな商用価値があるのは明らかです。たとえば“会話のログ”からはex.今、何が流行っているのかなどのトレンドを随時抽出することが可能になり、検索キーワードのビッグデータから抽出されたものよりもさらに高い精度になるのは間違いありません。一定の目的を持って行う検索ではなく、リアルタイムのごくありふれた会話のログなのですから。しかし、このログの商用価値の高さこそが一線を超えてしまうリスクをはらんでいると言えるのではないでしょうか(下段へ続く)。

 一例を挙げます。人流解析のソリューションのひとつに顔認証システムというものがあります。実は人流解析用途での顔認証システムの多くが、瞳や骨格などの距離や角度などをデータにして判別を行うというものなので、データから顔写真が再生できるわけではありません。また、あくまでビッグデータとして個を特定できない形で利用されており、入り口Aから入ったお客様の〇割はB地点に向かう などの形で人が殺到して事故が起きたりすることがないように売り場を設計するなどの用途で使われるものです。厳密な判別制度を求められる入国管理や表情までを読み取る必要がある遠隔医療の用途での顔認証システムなどとは中身が大幅に異なるのですが、“顔認証”というコトバ自体がお客様からの拒絶反応を起こしている気がします。

 強い拒絶反応は、事実とは異なる“邪推“にまで発展することもあります。防犯と入場者数のカウントを目的としてパチンコ店が導入した例では、「前回勝ったから顔認証で玉を出なくした」(人によって出玉をコントロールすることは厳しく禁じられています)ごときの”邪推”による“ウワサ”(リアル&SNSなど)で客足が大幅減などの実例があります。さらには顔認証を導入していない店まで邪推が広がるということまで起こっているようです。ちなみに顔認証システムは本来、防犯や防災の見地からはたいへん有用なソリューションなので世間一般の誤解がとけることを祈ってはいますが……。

 テラログ&AI時代を迎えてのECプレイヤーは、「できるけどやらない」「儲かるのはわかっているけどやらない」というような「道徳規範」を強く持つ必要があると思います。気がつけば強烈に忌み嫌われる「覚のお化け」になっていたというようなことがないように「いつでも賢者」である必要があるのです。しかも経営者だけでなく、すべての社員に徹底する必要がある「道徳規範」&「行動規範」です。ユーザー全員が「放送局」を持っている時代。“ウチの誰か“が つい一歩踏み外してしまうと会社そのものの存亡にかかわるごときの事態が起こらないとも限りません。

  まだ法律や業界でのルールが定まっていない今だからこそ、見えにくくなっている「一線」を明確に意識する必要があるのではないでしょうか。

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