クリエイティブ作成の最初は「とにかく数多く作る」
その効果的な方法と注意事項とは
前回は、クリエイティブの作り方として、その柱となるキャッチコピーとキービジュアルの考え方、作り方について解説しました。主要なパーツが決まったことで、広告クリエイティブの目鼻立ちは、もうはっきりと浮かび上がってきています。今回はそれ以外のパーツについて詳しく見ていきましょう。
コピーとビジュアルの組み合わせを考える段階では、とにかく、数多く作ることをオススメします。結果的にはそれらの中から、採用に至る案は少数に絞られますが、多数の選択肢の中から選ばれるほどに、採用案の獲得力の精度は上がっていきます。また、ここでたとえ採用に至らなくとも、それらの要素は、チューニングの段階など、組み合わせによる別の使い方で活かすことができる可能性もあるのです。
「数を多く出す」にあたっては、前回のような切り口の分類以外にも、アウトプットに至る要素を分解して、いくつかの分類で登場させることができるよう、事前に考えておくと良いでしょう。たとえば、以下のような軸があります。
- 直接的に表現する ⇔ 間接的・比喩的に表現する
- 薬事的にギリギリを攻める ⇔ 薬事的に極力マイルドに行く
- 論理派の人にお願いする ⇔ 感覚派の人にお願いする
前半の2軸は、クリエイター自身のアウトプットを広げるためのものですが、最後の軸は、最初からアイディア出しをお願いする人を複数立てる、というもの。これはアイディアの幅を広げて、当たりクリエイティブの確率を高めるには非常に有効です。同じ素材を同じ方向から考えたとしても、やはり人が違えばアウトプットもまるで違ってきます。同じ素材で同じ料理をつくっても、料理人が違えば千差万別になる、という感覚でしょうか。
ただし、複数のクリエイターを立てる場合は、2点ほど注意が必要です。ひとつは、当たりクリエイティブを生み出せた際は、そのクリエイターに広告メディア展開の量に応じたメリットが出るようにすること。代理店系の制作チームなら、当たりクリエイティブの媒体展開はその代理店に集約させたり、独立系の制作事務所なら、拡大広告費のいくばくかを原稿使用料として手当てする、などの手法があります。
もうひとつは、アイディア創出の稼働に対してフィーの手当を考慮すること。アイディアラッシュの時点で提案書に対して対価を支払う、少なくとも1案以上は採用するなどがあります。採用されなかったらまったくのゼロ、ではなく、稼働すれば、少なくともいくばくかの対価を得られるようにすることで、先方のリスクを抑え、しっかりと取り組んでもらえる姿勢と体制を引き出すことができるでしょう。
このように、依頼先がどんなビジネスを展開していて、そこに対してリソースをかけることに価値を見出せるような仕組みを考え、かつ、知恵に対して敬意を払い、対価を用意することを心がけるのは、優秀なパートナーの力を引き出すためにとても大切なポイントです。