中規模向けECソリューション「SAP Upscale Commerce」とは
――Upscale Commerceを開発した背景についてお聞かせください。
Nicholls氏 Hybris時代から我々はコマースのリーダーだ。その立場から、市場でいくつかの変化を感じていた。まとめるなら、早くECを展開したいというニーズ、モバイルへのシフトの2つだ。
SAPは大企業向けに強くCommerce Cloudも大企業向けと言えるが、多数の中小規模企業は、Commerce Cloudよりも小規模で、簡単に高速に実装できるソリューションを求めている。Commerce Cloudはコストと時間の両方でそれなりの投資が必要だが、一方で、一部のスタートアップが提供する製品ではECの機能を網羅しているとは言えない。市場に大きな穴があり、ここを埋めるのがUpscaleだ。
SAPの機械学習機能を活用して、スマートフォンの狭い画面で効率よく顧客が興味を持つ商品を表示するほか、Apple Payボタンを使って簡単に決済できる。アプリでECを展開できるほか、モバイルブラウザでも同じ機能を持つECサービスを構築できる。自分たちのアプリをダウンロードしていない消費者に対しても直感的なショッピング体験を提供できる。
すでに一部の企業に話をしているが、反応はとても良い。小さく初めて、急速に大きくしていきたいという共通のニーズがある。SAPなので成長に合わせてスケールできるという安心も感じてもらっている。
――小さく始めることができるということですが、Commerce Cloudとの違いは? 具体的にはどのような時にUpscaleを選択すべきですか?
Nicholls氏 SAP Commerce Cloudはあらゆる業界、あらゆる用途(BtoB、BtoC、BtoBtoCなど)に適しているが、Upscale Commerceは小売、消費財などが直接コンシューマーに展開するBtoC向けと位置付けている。
例えば、消費財などの業界で、これまで小売店で販売してきた大企業が、直接コンシューマーにリーチしたい、関係を構築したいというニーズがある。小売業界はAmazonなどにより大きな変革期にあり、これまでのように管理できなくなっている。それもあって、直接コンシューマーに販売しようというところは多い。そこでCommerce Cloudを採用するのは、時間とコストの面で負担とリスクが大きい。ある大手コスメ企業はBtoBでSAPのCommerce Cloudを使っているが、今回コンシューマー向けの直販でUpscaleを選んだ。
このように、大手が初めてコンシューマーに直接提供するというシナリオがある。ここには全社規模でデジタルトランスフォーメーションを進める上での一プロジェクトとしてのEC展開も含まれる。
もう1つが中小規模企業だ。やはり消費財、小売でニーズがあるとみている。
ユースケースとしては、スペースに限りがあるため店舗では商品を探すことができないが、ウェブサイトではその商品を購入できる“エンドレスアイル”も重要なユースケースになるとみている。消費者は直感的に使って自分が探している商品をすぐに見つけて1タップで購入できる。
消費者が店舗内で自分のデバイスを使ってオンラインで購入できるというのは革新的なサービスになるだろう。スマートフォンにはApple Payなどの決済情報があり、これを使ってすぐにショッピングができる。