Pioneer DJ社導入事例
GDPR対応とLTV向上を両立する顧客ID/データ統合
「GDPR対応とLTV向上を両立する顧客ID/データ統合」セッションにはまず、NTTコム オンライン・マーケティング・ ソリューションの嶋田貴夫氏が登壇。
グローバルビジネスを展開する企業を中心に導入が進む、顧客ID情報の統合・活用の基盤「カスタマー・アイデンティティ・マネジメント(CIM)」。SAPでは、その代表的なソリューション「GIGYA」を2017年9月に買収し、「SAP Customer Data Cloud from Gigya」として提供している。NTTコム オンラインでは、SAPの買収以前から、日本でGIGYAを提供してきた。
まず嶋田氏は、日本ではあまり馴染みのないCIMについて解説。
「多くの企業が、実店舗、EC、カタログサイトなどチャネルごとに別々の顧客データを持っています。オムニチャネルでキモになるのは、このデータを統合し、そのデータを活用することで、どのチャネルにおいても個々のお客様に同じ体験を提供することです。
しかし、バラバラになっている顧客データを統合するソリューションがなく、オムニチャネルはもちろん、マーケティングオートメーションやプライベートDMPの活用においても課題となっていました。こうした背景から、急速に立ち上がってきたのがCIMです。2019年に市場規模2兆円を超えると予測され、それはマーケティングオートメーション市場の3倍にもなります。この分野でグローバルナンバーワンの呼声も高いソリューションが、『SAP Customer Data Cloud from Gigya(以下、GIGYA)』なのです」
GIGYAのCIM機能を理解するうえでポイントになるのは、「IDENTITY」「CONSENT」「PROFILE」の3つとなる。
「IDENTITYは、会員登録などログイン周りをすべてカバーするもの。これがあれば、これから新サービスを立ち上げる際に、会員登録機能について悩む必要がなくなります。CONSENTは、GDPRの厳しい基準をクリアするレベルで個人情報管理を行う機能を提供します。そしてPROFILEは、厳重に管理されマーケティングに活用しにくい顧客データを、連携・活用しやすくします」
GIGYAの活用例としては、ユーザーの国籍に合わせたソーシャルログインで会員登録や再ログイン率を向上させた航空会社のサイト、過去に取得した古い顧客データをウェブ上でのアンケートをもとにアップデートした家電サイト、複数のポリシーの異なるサービスをひとつの顧客IDで管理し広告パフォーマンスを上げたメディアサイトなど、さまざまなものがある。
また、SAP Customer Experience (旧SAP Hybris)ほかさまざまなソリューションと開発不要で連携、過去に連携実績がないサービスであってもAPI等の活用で柔軟に連携できるのも特徴である。
このGIGYAを実際に利用し、ID統合プロジェクトを成功させ、LTV向上につなげているのがPioneer DJだ。同社から西川正紀氏が登壇し、講演を行った。
Pioneer DJは、1994年6月からDJ機器事業を開始。DJ/クラブ機器事業を中核に、業務用音響機器、音楽制作機器、関連サービス事業を展開。ウェブサービスとしては、商品ウェブに加え、DJ向け楽曲管理アプリケーション「rekordbox」、クラブを探したりDJをフォローできる「KUVO」、ソリューションごとのフォーラムと、大きく4つのウェブサービスを展開していた。それぞれが個別のアカウントを発行しており、ユーザーが重複するなど、名寄せができていないことが課題となっていた。
「ユーザーはサービスごとにアカウントを使い分ける必要があるため、ID・パスワードを忘れて離脱してしまったりといったことが起きていました。また、当社からユーザーにメッセージを送る際にも、こちらのサービスのAさんと、あちらのサービスのAさんは同じ人なのかと、判別がつかなくなっていました」
こうした状況を解決すべくコンサルティング会社に相談したところ、GIGYAか自社開発かの選択となり、GIGYAを導入することになった。統合プロジェクトとしては、主となる「Pioneer DJアカウント」を新たに発行。このメインアカウントを利用することで、既存の4つの各サービスいずれにもログインできるようになった。Pioneer DJ視点で見れば、メインアカウント「Pioneer DJアカウント」にすべてのサービスにおける顧客の行動履歴が集約されるため、これだけ分析すればよいという状態が整ったわけだ。
最後に西川氏は、「IDを統合したことで顧客への理解が深められると、『どんなDJが好きなんだろう』といったように、さらに顧客のことを知りたいという欲が出てきました。そして、『このDJが好きな方は、こういったアプローチをすると関心を持ってくれるのではないか』とマーケティングアイディアが浮かんできます。今後はメールシステムやCRMシステムとの連携し、GIGYAをもっと使いこなし、さらに顧客への理解を深めていきたいと思います」と述べ、講演を締めくくった。