PayPalがeBayから分社化、日本市場での注目も高まる
2015年7月20日、世界が注目するニュースが飛び込んできました。オンライン決済サービスを提供するPayPal(ペイパル)が、2002年10月のeBayによる吸収合併後、約13年以来のNASDAQに再上場。
PayPal東京支店カントリー・マネージャー、エレナ・ワイズ氏が「日本や他の市場でeBayの関連の会社であるという関係でビジネスをしにくかった企業も採用しやすくなった」と語るように、今後の国内での展開についてもプラスに捉えているようです。
PayPalは、1998年に設立。100通貨以上での決済、57通貨で銀行口座への入金、26通貨での支払いの受け取りが可能です。日本でも越境ECを展開する企業が採用するケースも目立ちます。
PayPalの魅力は、スタートアップに適した仕組みとなっており、下記のように決済手数料は明確となっています。日本での標準レートは3.6%に加え、1件40円の取引手数料が必要です。また、月間の販売金額が増えるごとに手数料が下がるという魅力もあります。
月間販売の受取総額 | 取引あたりの手数料 |
---|---|
¥0 JPY - ¥300,000 JPY | 3.6% + ¥40 JPY |
¥300,001 JPY - ¥1,000,000 JPY | 3.4%+ ¥40 JPY |
¥1,000,001 JPY - ¥10,000,000 JPY | 3.2%+ ¥40 JPY |
> ¥10,000,000 JPY | 2.9% + ¥40 JPY |
海外でアカウントを開設すれば、現地の手数料を適用
また、何よりスタートアップに重宝されているのは、審査なくビジネスをスタートすることができる点です。日本では、100万アカウント以上が開設されているそうですが、実際、スタートアップや個人事業主、中小企業のアカウントの割合は高いと思われます。
PayPalはIDとパスワードの入力だけで、簡単に支払いが可能なため、モバイルとの親和性の高さも強みとなっています。たとえば、PayPalが買収したBraintreeが提供するソフトウェア開発キット(SDK)「v.zero SDK」では、モバイルアプリ上でPayPal決済を実現できますが、仮想通貨の「ビットコイン」、送金アプリ「Venmo」、かざすだけで使えるモバイル決済サービスの「Android Pay」や「Apple Pay」に対応。今後は日本での提供も予定されています。
それでは、PayPalの世界的な展開を見てみましょう。本社は、カリフォルニア州サンノゼ、国際本部はシンガポール、欧州本部はルクセンブルグに置いています。対応する26通貨での手数料は、通貨ごとに異なります。
たとえば、アメリカの米ドル建てのトランザクション手数料は米$0.30(37.2円)、オーストラリアは豪$0.30(37.2円) 、欧州は0.35ユーロ(43.2円)、日本は40円、シンガポールは$0.50(6.2円)と、決済通貨によってそれぞれのトランザクション手数料が定められています(2015年8月4日時点)。また、海外と取引を行う場合は、それぞれ所定の通貨換算手数料が必要となります(参考)。
日本企業が越境ECを行う場合、国内でPayPalアカウントを開設すれば、日本の料金が適用されます。一方で、海外でアカウントを開設した場合には、現地の基準の手数料が適用されるということです。
たとえば、米国、カナダ、イギリス、オーストラリアといった国は、PayPalのオンライン決済が比較的浸透しているため、導入する価値はあると言えるでしょう。PayPalに加え、クレジットカード取引も可能なことから、越境ECの手段として利用されるケースも出てきています。
逆に、加森観光が運営する北海道最大級のオールシーズンリゾート「ルスツリゾート」の海外版サイトのように、インバウンド対応としてPayPalを導入するケースも増えています。