なぜネットショップで「売れない」悩みはなくならないのか
――清水さんは、月1万円で何回も相談できる 「ECマスターズクラブ」を運営、川島さんには以前、ECzineで「月商0⇒100万円の道」を連載していただきました。なぜいつまでも、「売れない」ネットショップのお悩みがなくならないのはなぜなのでしょうか。
清水 当社はモールに出店しているショップさんのサポートをしているのですが、「売れない」とご相談に来られる方には2パターンあります。1つは、実は売れていないのではなく、「儲からない」というお悩みを抱えていらっしゃるショップさん。儲からない理由は、人を増やしすぎたか、在庫を積みすぎたか、配送コストが上がったかのいずれかです。基本的に、一度は「売れた」経験のある方々ですね。
もう1つは、自分が何がわからないのかわからず、とりあえず「売れない」とご相談に来られるショップさん。もちろん、こうしたところは実際に売れていないのですが。一見、モールのコンサルタントなど支援事業者に聞けば解決しそうに見えますが、実は商品そのものに魅力がないとか、根本的な問題かもしれない。でも、多くの支援事業者は、自社のサービスでできる範囲内でしかサポートできないものなんです。
私たちコンサルの仕事は医者に近くて、「頭が痛い」と来られる患者さんにただ頭痛薬を渡すのではなく、原因が風邪なのか、実は歯のかみ合わせが悪いのかなどまで考えて、それぞれ適した解決策を提示するというものなんです。
川島 医者というのは、いい例えですね。
清水 でも基本的に後者の「何がわからないのかわからない」ショップさんは、自社の商品についてよく考えないまま、アップしてしまうパターンが多いと思います。実店舗を運営して売らなきゃいけない商品があったり、自分で「これが売りたい」と思い入れのあるものがあるからネットショップを始めるという動機が多いんですけど。
川島 思い入れもないよりあったほうがいいです。でも、それをどう表現するかのほうがもっと重要です。つまり、商品力をわかってないということですよね。「うちの製品はこんなに素晴らしいんです!」の一点張りで、でも客観的に競合と比較してみると、優位性が全然なかったりする。
清水 「この素晴らしいiPhoneを買ってください!」という具合に商品を掲載するんですが、もし誰も「iPhone」という言葉を知らないとしたら、「スマートフォン」、「新型携帯電話」といったキーワードを入れないと誰もたどり着いてくれないですよね。ひとことで言うと、集客を考えていないというところでしょうか。
川島 実店舗なら、前の道を人がたくさん通るのに、うちには誰も来てくれない。なぜだろう、チラシを配ってみようか、となるんですけどね。でもネットは、人通りが見えないから。それに、以前は競合も少なく、ただ商品登録するだけで売れた時代もあったでしょうから。
清水 近所に売っていないものが買える!ってね。あの時代に、ブログのように簡単にネットショップが作れて、一度買ってくれたお客様にメールが送れる、今で言うCRMの機能を作った楽天市場は、本当に素晴らしいと思います。
でも今は、卸や小売を挟まずにモールとメーカーが直接やりとりしたり、圧倒的な仕入れ力でもって最安値で販売できる上場企業がモールに出店したりと、小さな小売業さんが戦いづらい環境になっています。それでも、「ネット通販」は魔法の言葉で、ネットショップを開けば売れるんじゃないかという幻想がまだある。
川島 当社に相談に来られるショップさんは、「モールで失敗したから独自ECがやりたい」という方々が多いです。独自ECのほうがさらに難しいと思うんですけど。
清水 独自ECで儲かっているショップは、決済がオンラインなだけで、カタログや新聞広告など、オフラインで集客しまくっていますからね。モールは競争が厳しいとはいえ、基本的に集客から決済までネットで完結します。結局は、どこの集客にお金をかけるかの違いなんです。
最近は「リピートが重要だ」という話も出ますが、これも単純な話じゃないです。単品リピート通販が売れるとはいえ、売りたい商品が「雛人形」や「ミシン」だったらどうすればいいんですかと。
川島 先ほども言いましたけど、自社の商品の本質を理解しないとダメですよね。「雛人形」や「ミシン」だったら、「リピートされないからダメか」と諦めるんじゃなくて、「雛人形を買ってくれたお客様は、次は何を買ってくださるだろう」と考えていくとか。