ヤッホーブルーイングの増収増益は「生まれ変わった」から
この後のセッションでは、インターネットの専門的なお話が続くようです。僕はもう少し上位概念と言いますか、根本的な考えかた、リアルも含めた戦略についてお話しして、そのうえでインターネットの話題も盛りだくさんでいきたいと思います。
まずはじめに、皆さんの会社にミッションはあるでしょうか。我々ヤッホーブルーイングは、「画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出する。そして、ビールファンにささやかな幸せをお届けする」という壮大なミッションを掲げて始まりました。今でも「ビールに味を、人生に幸せを」、これを胸に刻みながら活動しています。
創業当時は非常に好調でした。1994年の規制緩和でいろいろな方が地ビールを作ってブームになり、マスメディアが取り上げてくれて、売上がどんどん伸びていきました。当時私は営業を担当していたんですが、営業らしい営業はせず、毎日電話番をしていましたから。
このままこの好調が続くだろうと思っていましたが、皆さんご存じのとおり、そんなに世の中は甘くないです。段々、売上が下がっていきました。理由の1つは、大手企業さんが発泡酒を出されて価格競争になっていったこと。もう1つは、地ビールブームの終焉です。規制が緩和されたことで、それほどおいしくないビールも世の中に出回ってしまった。そこから、「地ビール=おいしくないのに高い」というイメージがついてしまいました。
そこから必死に、本社のある長野県内でテレビCMを放映したり、酒屋さんに営業に行ったり、試飲会を開催したりしたんですが、売上の下降は止まらず。途方に暮れて途方に暮れて、これは生まれ変わらなければいけないと思い至りました。先に結果をお伝えしますと、生まれ変わった結果、10年連続増収増益と非常に好調です。これから、どのように生まれ変わったのかを説明していきたいと思います。
考えたのは「会社の戦略」でした。競争戦略で有名な経済学者 マイケル・ポーターの理論を、かなりしっかりと実践しています。ポーター曰く、戦略とは「競争上必要なトレードオフを伴う一連の活動を選び、一つの戦略的目標に向かって活動間のフィット感を生み出すことである」と。これだけだと、なんじゃそりゃ?という感じですから、解説したいと思います。
トレードオフは、右に行くか左に行くか、どちらかしかない究極の選択です。それを伴う一連の活動を選ぶと。そして「活動間フィット感」というのは、すべての選択や活動に一貫性があって同じ方向を向いているということ。これが戦略だと言っているんです。
1つか2つ、難しい選択をしたとしても、すぐ他社に真似されてしまいます。しかし、常に一貫性のある究極の選択を何十回と繰り返していけば、自分だけの特別な戦略が出来上がると。だから僕は、誰も選べないような戦略を選んでいこうと考えたんですね。