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かつて日本企業が保有していたGLIを買収 インドネシア「Alfamart」の戦略とは
顧客との継続的な関係を築く。人口減少の真っ只中、かつブランドが乱立する日本市場では、特に重要な観点といえる。顧客のLTV向上において、CRMが不可欠というのは共通認識だろう。
大手小売が行うべきCRM戦略について、具体的な道筋を示したのがインドネシアのAlfamart(アルファマート)だ。オンラインチャネルからスタートしたブランドと比較して、実店舗をメイン販路に成長してきた小売が、顧客の会員情報を取得するハードルは低くない。Alfamartはどのような施策を展開しているのか。2014年にジョインし、マーケティングディレクターを務めるRyan Alfons Kaloh氏が、取り組みについて語った。
1999年に5店舗からスタートした同社。それが今では、実店舗数2万2,000超に増加している。コンビニエンスストアに分類されることもあるが、多くのインドネシア国民は「ミニマート(小型スーパーマーケット)」と認識しているという。


同社は、2016年からCRM領域に大規模な投資を行ってきた。独自のシステムを構築している。元々提供していたアプリ「Alfagift」を、2019年に“デジタルメンバーシッププラットフォーム”にリニューアル。以前、売上のうち会員が占める割合は約20%にとどまっていたが、現在は全取引の約60%がAlfagiftの会員によるものだ。日用品のように定期的に購入されるカテゴリーでは、その割合が70%~80%にのぼるケースもある。
これにより、同社はAlfagiftを通じて顧客像を捉えられる。一人ひとりに関連性の高いプロモーションや商品を提供できる仕組みを整えた。
この仕組みを実現できた背景には、大胆な経営体制の変革がある。同社は2019年にGlobal Loyalty Indonesiaを買収した。かつては、日本の共通ポイントサービス「Ponta」をインドネシアで運営していた企業だ。Alfamartのグループとなった今は、Alfagiftの運営を担っている。データサイエンス領域の専門人材を多く採用。彼らがアプリの管理だけでなく、広告運用など多様な分野に事業を拡大している。
「元々、こうしたデータ活用などを行うチームはAlfamart内のマーケティング部門に属していました。しかし、小売企業内だけで事業を成長させるのは難しいと気づいたのです。デジタルマーケティングの機能を独立させ、多くの優秀な人材を採用することで、現在の仕組みが生まれました」(Ryan Alfons Kaloh氏)