再開発がEC新規事業のきっかけに メイド・イン・ジャパンな帝国ホテルの新挑戦
2024年11月、帝国ホテルは新機軸のオンラインモール「ANoTHER IMPERIAL HOTEL(以下、ANoTHER)」を立ち上げた。同モールは、メイド・イン・ジャパンのホテルとして開業し、たくさんの“人々の出会う場”を提供してきた帝国ホテルが、アプローチの場をeコマースに移してここでしかめぐり逢えない「良いもの、良いこと」を届ける新たな挑戦の場だ。オリジナル商品を扱う「帝国ホテル オンラインショップ」と売り場を分け、自社のシェフやソムリエ、バーテンダーらが選んだ日本各地の特色ある商品や体験を提供している。
「ANoTHERを開設したのは、帝国ホテル 東京を含む東京事業所の建て替え計画がきっかけです。
2026年春に控える帝国ホテル 京都の開業や、東京事業所の建て替えなど、帝国ホテルは変革期を迎えています。特に、東京事業所の建て替え期間中は提供できる総客室数が減ってしまうため、既存のお客様にご宿泊いただく機会や新たなお客様との出会いが減ることが予想されます。そこで、新たな顧客接点としてオンラインモールを開設することになりました」

こうした課題解決のため、惣田氏らEC事業部が立ち上げたのが、帝国ホテルで働くスタッフの目利き力を生かした商品セレクト型のモールだ。現在の帝国ホテル利用客のボリュームゾーンよりも少し若い30代~40代をメインターゲットに据え、未来の顧客との出会いを生み出そうと日々売り場を磨き込んでいる。

「2010年より帝国ホテル オンラインショップを運営する中で、自社商品はお中元やお歳暮など贈答用としてのニーズが高いことが見えてきました。新たな顧客層を開拓するには、既存のオンラインショップとは異なるコンセプトで商品を選定する必要があると考えました。ご自身へのご褒美や日常生活に豊かさを添えるようなアイテムを取りそろえています」
惣田氏いわく、ANoTHERが“帝国ホテルらしさ”を際立たせるために設けている商品選定の軸は次の四つだという。
- 希少性:ANoTHERが出品社と生み出したオリジナル商品や、出品社の自社ECサイト・店舗のみで扱われている商品など、販路が限られている商品を選定
- 意匠性:ANoTHERのターゲット層や帝国ホテルのブランドにも合い、贈り物にしたくなる洗練されたデザイン性ある商品を選定
- ストーリー:共感から購入意欲喚起につなげるため、作り手や商品にストーリーがある商品を選定
- 応援意識:日本の伝統の継承や地域貢献につながる商品を選定
「帝国ホテルは、日本で生まれたホテル事業者として、自国の素晴らしい食や文化・伝統・技術をプレゼンテーションし、広く伝えるべき立場でもあると思っています。海外からも多くのお客様が宿泊されますが、国内からいらっしゃるお客様も知らない日本の『良いもの、良いこと』はまだまだたくさんあるはずです。埋もれてしまっている価値ある商品や作り手、地域の魅力をANoTHERが引き出し、帝国ホテルだけでなく出品社やお客様にも新たな出会いを生み出したいと考えています」