見るべきは“売上”ではない?
普段、何を指標や目標にして事業運営を行っているだろうか。売上や利益率など、企業によって様々なはずだ。 そうした中で『顧客の数だけ、見ればいい 明日の不安から解放される、たった一つの経営指標』(PHP研究所/小阪裕司 著)は、あえて顧客の数を増やすことだけに焦点を当てるよう提案している。
売上を上げることに集中する企業は少なくない。しかし、競合他社よりも安い値段で商品を販売する、より低価格で材料を仕入れるなど、結果的に自社にもパートナー企業にも負担となるケースがあるのも事実だ。
では、顧客の数を増やすことにフォーカスするとどうか。たとえば家具や楽器、寝具など頻繁には買い替えない商材を取り扱っていても、メンテナンスサービスを充実させるといった“別の入口”を作る施策が考えられるだろう。結果的に顧客との定期的なコミュニケーションの機会が生まれるだけでなく、買い替えのタイミングがきたら再び選んでもらえる可能性が高まる。
人は、選択肢が多いほうが迷う。
選択肢が少なくなればなるほど、悩まない。
悩まないと、活動は力強くなるのです。(P.44)
自社の顧客とは誰か
顧客の数を経営指標として施策を実行する。その上で注意すべきことが「どんな人が顧客といえるのか?」だ。小阪氏は次のように語る。
まず、一度でも自社の商品を買ってくれた人、サービスを受けてくれた人。これは、私の定義では「お客」となります。
その後、二度三度と買ってくれた人は「リピーター」になります。
ここでいう「顧客」とは、その先の概念です。
リピート購入=顧客ではなく、その相手を「顧客」と呼ぶためには、もっと重要で決定的な要素があります。
それは、その相手の「心の在りよう」です。(P.75)
本書では、具体的な「心の在りよう」の基準のほか、実際に顧客の数だけを見て事業成長に成功した事例を複数提示。健全な経営を実現するためのヒントを紹介している。現在の経営体制に課題を抱えている人にとっては、解決の糸口が見つかるのではないだろうか。