「コマース」と「コミュニティ」はなぜ交わりつつあるのか
はじめまして、「コマースを、つなぎなおす。」をミッションに、Shopifyアプリ開発やEC構築・インテグレーションを手掛ける、株式会社リワイアの舟久保です。これから、「コミュニティコマース」をテーマとした連載を執筆してまいります。
以前から、企業にとって大切な顧客接点であった「コマース」と「コミュニティ」ですが、2020年代に入り事業領域として飛躍的な成長を遂げています。そして、それぞれがクロスオーバーする姿が見え始めました。これが「コミュニティコマース」の顕在化です。まずは、コミュニティコマースが求められる背景からお伝えしていきます。
企業に対して、熱量が高い顧客が集うコマースとコミュニティの価値が高まり、求められている背景には、主に三つの理由が存在します。
- 個人情報に関わる規制の強化
- 企業の態度・姿勢に敏感に反応するようになった生活者の変化
- 顧客を均一化せずに、深い理解に取り組むことが増えたマーケティング環境の変化
EUの「一般データ保護規則(GDPR)」など、個人データの取り扱いに対する規制によって、2025年にはサードパーティCookieが利用できない環境になると予想されています。これまで、サードパーティCookieはユーザーが訪れた異なるウェブサイト間でユーザーの行動を追跡し、そのデータを利用してターゲティング広告を表示するために使用されてきました。しかし、これらが規制されることで、巨大プラットフォーマーが保有するデータによる顧客のターゲティングができない環境へと変わりつつあります。
こうしたマーケティング環境の変化に対して、自社顧客からデータを集め、保有するファーストパーティデータを増やすことで対策しようという取り組みが、大企業を中心に始まっています。たとえば、2020年代に入り次々と顧客IDの整備と統合に動き出している味の素や資生堂などが良い例でしょう。
これにより、企業のマーケティングに対する姿勢も変化しつつあります。従来、マーケティングでは「戦術」「戦略」「ターゲティング」など、軍事用語がたくさん使われてきましたが、2010年代に強まったポリティカル・コレクトネス(「人種差別をなくそう」という考え)への配慮や、2020年代の戦争・紛争を契機に、差別を廃して平等であること、倫理的であることが企業活動に強く求められるようになりました。
すると、「お客様」を「ターゲット」と呼ぶことは倫理に欠け、差別的なマーケティングであるとの考えが広まり始めました。さらに、旧来のターゲティングが、マーケティングを間違いに導いてしまうという示唆もあります。
博報堂生活総合研究所が30年以上続けている「生活定点調査」の2023年のレポートで、「消齢化」というキーワードが発表されています。これまでの調査データと比較すると、以前は大きかった年代による価値観や嗜好の違いが、年々小さくなっていることが明らかになっているそうです(「消齢化lab.」より)。つまり、商品開発やマーケティングの入り口で年代によるターゲティングをすることが、間違いのもととなってしまう可能性がある時代になりつつあるといえます。