株式会社マッシュホールディングスは、スタートはデザイン会社ではありながらも、今では巨大なアパレル企業として広く知られている会社です。また同社は、若年層をターゲットとしたEC展開で新規顧客獲得や既存顧客との関係強化にも努めています。
この記事では、そんなマッシュホールディングスがどのようにしてECサイトを育てているのか、そして若年層との関係をどのように強化しているのかについて、詳しく解説します。
株式会社マッシュホールディングスの企業情報・事業内容の概要
まずは、株式会社マッシュホールディングスの基本情報について解説します。
株式会社マッシュホールディングスの企業情報
以下では、株式会社マッシュホールディングスの企業情報をまとめています。
社名 | 株式会社マッシュホールディングス |
---|---|
本社所在地 | 東京都千代田区麹町5-7-1 |
設立年 | 1998年(前身のスタジオ・マッシュ) |
代表者名 | 代表取締役社長 近藤 広幸 |
株式公開 | 未上場 |
資本金 | 非公開 |
おもなグループ会社 |
など |
株式会社マッシュホールディングスの事業内容
元々グラフィックデザインの会社としてスタートした株式会社マッシュホールディングスですが、現在は創業当時から蓄積されたデザインのノウハウを活かしたファッション事業を主軸としています。そのほか、ナチュラル&オーガニックビューティー事業やフード事業など、BtoCにおける幅広い領域に展開しています。
また、自社ECサイト「ウサギオンライン」をベースとしたeコマース事業やそのノウハウを活かしたアプリ開発事業、不動産事業、アウトレット事業にも参画し、多角的な経営を推進してきました。
株式会社マッシュホールディングスの沿革
以下では、株式会社マッシュホールディングスの沿革を表にまとめています。
年 | 沿革 |
---|---|
1998年 | グラフィックデザイン会社として「スタジオ・マッシュ」を麻布に設立 |
1999年 | 「株式会社マッシュスタイルラボ」へ社名変更 |
2005年 |
ファッション事業に参入 レディースブランド「snidel」を展開 |
2008年 | ルームウェアブランド「gelato pique」を展開 |
2010年 |
レディースブランド「FRAY I.D」展開 株式会社マッシュビューティーラボ設立 「Cosme Kitchen」事業開始 |
2011年 | 上海、台北、香港に現地法人「MASH Style Lab Co.,Ltd.」設立 |
2012年 |
「株式会社マッシュホールディングス」設立 香港に現地法人「MASH Food Lab Co.,Ltd.」設立 |
2013年 |
各部門を分社化し、株式会社マッシュホールディングスの100%子会社化 「株式会社ウサギオンライン」「株式会社マッシュデザインラボ」「株式会社マッシュライフラボ」設立 ナチュラル&オーガニックセレクトショップ「Biople by CosmeKitchen」スキンケアブランド「F organics」展開 レディースブランド「Mila Owen」「FURFUR」展開 本格フレンチクレープショップ「gelato pique cafe」オープン マカオに現地法人「MASH Style Lab Co.,Ltd.」設立 |
2017年 |
レンチレストラン「AZUR et MASA UEKI」オープン 本社内に事業内保育所「マッシュの森保育園」開園 ニュージーランド「エコストアカンパニーリミテッド」との合弁会社「株式会社エコストアジャパン」設立 「株式会社巴里屋」とM&A デリカテッセン「PARIYA」とメンズブランド「MISTERGENTLEMAN」展開 ニューヨークに現地法人「MASH U.S.A INC.」設立 |
2019年 |
株式会社マッシュホームズ設立 音楽・カルチャー関連プロジェクト「WAVE」、肌着ブランド「UNDERSON UNDERSON」を展開 |
1998年にグラフィックデザイン会社として設立されたスタジオ・マッシュは、翌年に株式会社マッシュスタイルラボに社名を変更し、2005年にはファッション事業を立ち上げています。2008年には一大ブームを巻き起こしたルームウェアブランド「gelato pique(ジェラートピケ)」を生み出すなど、大成功を収めました。
その後も次々とファッションブランドを立ち上げ、ヒットを生むとともに、海外進出やフード事業、ビューティー事業などへの参入を進めています。
2013年には現在のホールディングス形式に落ち着き、その後も多様なフードブランドの展開や不動産事業への参入など、多方面に事業やプロジェクトを展開し続けている企業です。
株式会社マッシュホールディングスが手がけるおもなブランド
株式会社マッシュホールディングスはこれまでに多くのブランドを立ち上げてきましたが、その多くは現在でも国内外で愛されています。
2005年のファッション事業スタートとともに立ち上がった「SNIDEL(スナイデル)」は、女性らしさとストリートファッションを融合させた都会的なグローバルブランドとして、現在まで多くのファンを獲得してきました。
また、2008年にスタートしたルームウェアブランドの「gelato pique」は、特徴的なやわらかい生地で作られた商品の着心地の良さや見た目の可愛さが多くの人の注目を集め、同社を代表するブランドの一つとなっています。
ビューティー領域における同社の代表的なブランドは、ナチュラルオーガニックを基調とする「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」です。独自の契約ルートを確立し、消費者の安心と安全に配慮した商品展開は、多くのファンを生んでいます。
株式会社マッシュホールディングスが飛躍的なECの成長に成功している理由
多くのブランドの立ち上げに成功している株式会社マッシュホールディングスですが、同社の売上に近年大きく貢献しているのが、飛躍的なECの成長です。
若年女性の心をつかみコロナ禍でも成長
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大にともない、多くの小売事業者が窮地に立たされました。しかしそんなピンチをチャンスに変えたのが、株式会社マッシュホールディングスが手がける自社ECサイト「ウサギオンライン」でした。
ウサギオンラインでは2019年から2021年度にかけての、コロナ禍を通じた消費変化にともない、3年連続売上2桁増という驚異的な成長を遂げました。その起爆剤となったのが、同社の看板ブランドであるgelato piqueです。家の中を快適に過ごせる商品の需要拡大、いわゆる「イエナカ消費」が生まれたことで、急伸していったのです。
また、同社ではジェラートピケの売れ行き拡大に合わせ、同ブランドのターゲットである20代中盤から30代前半の女性のライフスタイルに寄り添った商品展開も進めました。この結果、単独ブランドの急伸にとどまらせることなく、相乗的な同社EC消費を生み出すことにも成功しています。
ブランド単位でのECサイトも展開済み
株式会社マッシュホールディングスではウサギオンラインとは別に、2018年にSNIDELをはじめとする、9つのブランドECサイトをオープンしました。ウサギオンラインでもこれらブランドの扱いはありましたですが、同社がわざわざECサイトを分けて展開しているのには、EC需要の細分化に対応するためと考えられています。現在では18個のブランドECサイトを運営しています。
ウサギオンラインはあくまで同社のデパートメントストアという位置付けとし、それぞれのブランドECサイトで、そのブランドに特化した専門性を強みにすることが狙いといえるでしょう。
株式会社マッシュホールディングスの最近の動き
続いて、株式会社マッシュホールディングスの近年の動向について、気になるものをピックアップしながら解説します。
ウサギオンラインにてレビューツール「ZETA VOICE」を導入
ウサギオンラインでは、2022年よりレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入しています。
同エンジンのおもな特徴は、身長や性別、体重や体格などのパーソナルなデータとともにレビューを書き込み、公開できる機能を有している点です。評価が高いレビューを上位に表示させる機能も備わっているため、商品のリアルなイメージにつながりやすく、生きた情報としてユーザーの購入を後押ししています。
コロナ禍でコスメブランド「SNIDEL BEAUTY」を立ち上げ
2021年、株式会社マッシュホールディングスはコロナ禍で新たなコスメブランド「SNIDEL BEAUTY(スナイデルビューティ)」を立ち上げました。消費意欲の減退にともない、コロナ禍においては多くのブランドが新ブランドの展開を延期していましたが、同社はその最中にあえてブランド立ち上げを選んだのです。
「スタート直後の苦労は企業の体力になる」という考えのもと、根本的な事業改革を実現するプランとして、BX(ビジネストランスフォーメーション)を遂行した同社の勇断は、業界内外の注目を浴びました。
株式会社スタイルヴォイスの過半数株式を取得
株式会社マッシュホールディングスは、2021年にモール型ECサイトを運営する株式会社スタイルヴォイスの株式を過半数取得しました。
2019年11月よりモール型ECサイトとして運営してきたスタイルヴォイスでしたが、マッシュホールディングスによる株式取得以降、インフルエンサーやブランドと商品企画から協業する「オリジナルD2Cブランド主軸のファッションエンターテインメント事業」へとモデルチェンジする旨を発表しました。同年には早くもサイトをリニューアルオープンし、スピーディーに新たな道を進んでいます。
株式会社マッシュホールディングスの気になるトピックス
そのほか、株式会社マッシュホールディングスの気になるトピックスを以下にまとめています。
2023年2月27日:「MASH PARK PROJECT」で発生した食品ロスや食品廃棄物をコンポスト化、有機・無農薬で野菜を育てる農家支援に活用
2022年11月に実施したマッシュグループの参加型チャリティイベント「MASH PARK PROJECT」において、食品ロス問題への参加型プログラムとして、イベントで発生した食品残渣(ざんさ)を回収し、コンポスト(堆肥)化を実施した。
2022年11月16日:マッシュグループの株式譲渡に関するお知らせ
株式会社マッシュホールディングスは、米国投資ファンドのBain Capital Private Equity, LPに株式の過半数を譲渡する契約を締結。この契約に基づき、マッシュグループは2022年12月末日までに、株式の過半数をベインキャピタルに譲渡する予定と発表した。
2022年6月9日:全23ブランド横断型のショッピングが楽しめるマッシュグループ公式アプリ「MASH STORE」をリリース
マッシュグループは、ファッション・ビューティーの全23ブランドのショッピングが楽しめる公式アプリをリリースした。
2022年3月16日:新ブランド「AOURE(アウール)」が3月16日(水)にデビュー!
株式会社マッシュスタイルラボより、新メンズファッションブランド「AOURE(アウール)」が誕生した。
2022年1月28日:「楽天ポイントカード」が「SNIDEL」「gelato pique」「Cosme Kitchen」などで利用可能に
株式会社マッシュホールディングスと楽天ペイメント株式会社は、 マッシュグループの「SNIDEL」「gelato pique」「Cosme Kitchen」など約275店舗において、 2月1日(火)より共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」が利用可能になることを発表した。
2021年1月8日:三井不動産レジデンシャルと初コラボレーションの賃貸マンション「パークアクシス吾妻橋」竣工
株式会社マッシュホールディングスと三井不動産レジデンシャル株式会社は、住宅事業において初のコラボレーションとなる、女性をメインターゲットとした外観・内装デザインを施した賃貸マンション「パークアクシス吾妻橋」を2020年12月24日(木)に竣工。2021年1月8日(金)から入居募集を開始した。
まとめ
この記事では、多様なブランド展開を手がけてきた株式会社マッシュホールディングスのEC展開について解説してきました。
同社のブランドの多くがロングセラーとなっている理由には、ブランドの企画力はもちろん、積極的なEC活用や事業戦略の改善といった「売る力」を磨き続けていることが挙げられます。
ブランドの認知力に甘えることなく、常に時代のニーズに合わせて売り方にアレンジを加え、国内外における不動の人気を確立した同社からは、多くのヒントを得られることでしょう。