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ECzine Day 2024 June

2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

[ECzine Press Summer 2022]CXのプロ3社に聞く!DX時代のCX(AD)

DX時代のCX改革 現実解としての3つのステップ

 人に依存し、またチャネルや部門ごと異なる対応を行っていては、本来の意味でのCX変革は実現できない。オムニチャネルでデータドリブンに取り組むことがDX時代のCXには欠かせないのだ。ナイスジャパン株式会社 安藤竜一氏に話を聞いた。

顧客が求めるCXを見出し 最適化して提供する「CXi」

━━まずは御社について、主要サービスのご説明とともにご紹介ください。

 ナイス(NICE)は、イスラエルに本社を置き、通話録音・音声分析のソリューションを起点に、主にコンタクトセンター向けに幅広くプロダクトポートフォリオを展開してきました。 2021年10月より、クラウドCXプラットフォーム「CXone」を日本市場に向けてリリースし、VoC活用ソリューションやRPAソリューションなどとともに、さまざまな企業のコンタクトセンターのスタッフの業務をサポートし続けています。

 私自身も、コンタクトセンター業界で20年以上にわたり業務支援に携わってきましたが、ここに来て、業界全体が大きく変わりつつあることを強く感じています。そのトリガーになったのは、コロナ禍であることは間違いないのですが、潜在的な問題が顕在化したというよりも、すでに顕在化していた問題を見て見ぬ振りをしきれなくなったというのが本当のところだと思います。

 その中でDXによるCX改革が大きなトレンドとなり、カギとなったのがクラウドシフティングでした。そこに対し、ナイス(NICE)としてあらゆる機能を提供し、ニーズに応えられたことが、業績向上につながったと考えています。とくにDXの定義の中でももっとも重要な「データドリブン」を実現する仕組みについて、現場の誰もが簡便で扱いやすいことが求められているのは明らかで、ナイスのソリューションが多く導入されたのもそのニーズに合致していたからと思われます。

 とくにEC事業は多くのデータを収集し、売上の傾向やお客様の嗜好などについて把握するために試行錯誤しており、金融業界など他の業界と比べても先進的な取り組みがなされています。そうした企業に対して、データドリブンを実現するソリューションとして提供しているのが、クラウドCXプラットフォーム「CXone」上の統合アプリケーションスイートを通じて提供される新フレームワーク「カスタマーエクスペリエンスインタラクション(CXi)」です。

━━具体的にはどのようなソリューションなのですか。 CXiが実現するものについてお聞かせください。

 まず、課題としては「データドリブンであるべき」と言いつつも、実はほとんどの日本企業が顧客をデータで語れるレベルには到達できていない実状があります。「なぜ、この人はこの商品をこのタイミングで購入したのか」「なぜこの人はいつもこの商品を好むのか」といったことがわかってこそ、次の戦略として開発・販売する商品が語られるべきなのですが、なかなかそれができていません。理由は、データはあってもそれを把握できておらず、たとえ分析・活用ができていたとしても、商品開発やマーケティング、プロモーション、営業など“全社で”活用できていないからです。その結果、企業側とお客様との間に齟齬が生まれ、お客様は欲しい物が得られない、企業側は提供できないというすれ違いが生じています。

 「そんなはずはない」とおっしゃる読者の方もいらっしゃるかもしれません。確かに、多くの企業が FAQ サイトを持ち、「お客様にどのように対応すべきか」を営業部門やコンタクトセンター、マーケティングなどが考え、それぞれでナレッジマネジメントとして構築しています。しかし、部門間で連携が取れていないために、お客様から見ると差異が生じていることが多々あります。

 つまり、しっかりと情報を一元管理した上で、「どのような情報がお客様に求められているのか」の分析や、「営業だけがこの情報をお客様に伝えても良い」等の権限設定などが行われるべきであり、それらを統一的なガバナンスのもとでオペレーションすることが重要なのです。

顧客の実状を把握し“データドリブン”でCXを変えていく

──どのような企業を対象にしているのでしょうか。また、それらの企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。

 顧客の声をCX サービスにしっかりと反映させたいと考える企業ならば、すべて対象になると思います。「デジタルによるCXの最適化」というと、大企業でなければ難しいと感じられるかもしれませんが、むしろ手が足りない中小企業のほうが、小回り良くチャットbotなど利便性の高いものを構築できるなど、DXによるCXを積極的に推進するメリットが大きいように思います。

 「うちの顧客はシニアが多いから無理」と言う方もいらっしゃいますが、実際に分析してみると高齢のお客様でもチャットの方が便利だと感じて、利用している人は想像以上に多いのです。きちんとデータを取得し、データドリブンで施策を考える必要がここでも生じているわけです。他にも企業側と顧客側の齟齬はさまざまあり、たとえば企業側が「懇切丁寧に有人が対応する」のがベストだと思っていても、実は顧客側ではスピーディで簡潔な対応を求めている場合も多いです。つまり、良かれと思っているサービスが「時間がかかって面倒」な苛立ちの対象となっている可能性もあるのです。また、チャットbotなどのセルフサービスが十分でなかったために有人のコールセンターに問い合わせた、または問い合わせせずに満足度を低下させたのかもしれません。

 もうひとつ、チャネルが多様化したことで対応がバラバラになるケースは数多く見受けられます。マーケティング部門がカスタマージャーニーでの顧客接点を考える際に、コンタクトセンターを巻き込めているかと言えばできていないところが多いです。その結果できてしまう“ミッシング・ポイント”を意識しながら社内で議論できている企業は意外と少ないんです。まずはそれを認識した上で、それぞれの部門を越えて、共通の顧客認識のもと、ウェブサイトやモバイルアプリをどうしていくか、考えていく必要があると感じています。

 極端な例かもしれませんが、全体のカスタマージャーニーを俯瞰した上で「チャットbotは営業につなぐためなので、あえて簡素で良い」と役割を決めたなら、チャットbotの体験をそれほど突き詰める必要はありませんよね。そのような割り切りもなく、ウェブサイトもチャットbotも、それ以外のチャネルも“なんとなく”運営されていることが多いのです。そのなんとなくの穴埋めを、コンタクトセンターが人力でしのいでいるのが現状です。結果的にコンタクトセンターは疲弊し、人的コストがかかり、人材不足のまま場当たり的に操業を続けることになります。

CXの最適化における現実解としての3つのステップ

──そのような状態を脱却して、全社的なナレッジマネジメントに基づいた“最適なCX”をどのようにして実現させていくのですか。

 理想としては、前述のように情報を一元管理し、統一的なガバナンスのもと、顧客像の共有や権限設定が行われている状態でオペレーションされていることが必須になります。しかしながら事業は継続しているわけですから、プラットフォームを整えてからCXに取り組むというのは現実的ではありません。現実解としては、情報が管理される場所、たとえばFAQサイトやポータルサイトをより良い形で作成し、最適化を図りながら、その過程で各部門に参加してもらいつつ、ナレッジを統合していくことが第一ステップとなるでしょう。

 その上で次のステップとして、コンタクトセンターでの対応をベースに、顧客の反応や変化に合わせて、リアルタイムでアップデートできる仕組みを構築します。これまでコンタクトセンターは、「顧客サービスの最後の砦」などとも呼ばれ、お客様のクレームや要望の集結地であり、「対処すれば良い」との考えで運営されている企業が多かったと思います。しかし、コンタクトセンターの対応がもっともお客様に満足感や納得感を与えているのであれば、その内容がFAQサイトにリアルタイムで掲載されるべきです。第一ステップでFAQサイトが全社のナレッジマネジメントとして一元管理されていれば、自然とコンタクトセンターでのアップデートが全体に反映されることになります。

 そして第三のステップとして、コールセンターで発生する会話集を可視化し、チャットbotなど顧客対応の自動化を行っていきます。対話型AIは手間やコストが掛かり、なかなか手が出しにくいと思われていますが、会話自体をデータ化してAIの教示データにできれば、想像以上に容易に構築することが可能です。これが実現すれば、コンタクトセンター以外のチャネルでも十分満足した回答が得られることになります。もちろん、チャネルによってさまざまなニーズがあるため、データを取得しながらトライアルアンドエラーすることで見定める必要があるでしょう。

 このように述べると「AIによってカスタマーセンターの有人サービスが消える」と想像されるかもしれませんが、私は絶対にそんなことはありえないと考えています。たとえば、カウンターサービスを自動化するホテルも出てきていますが、高級旅館ではその方針は取らないのではないでしょうか。カスタマーセンターでも人が担うべき仕事は必ず残ります。しかし、人材不足や人件費の高騰などを考慮すれば、デジタルでできることや得意なことはデジタル、人が行うべきところには人が携わるほうが望ましいことは明らかです。いわゆる適材適所、最適配置ですね。そして、誰が何を担うかは時代とともに変化し、お客様のニーズも変わるため、常にアップデートし最適化する必要があると考えています。

画像を説明するテキストなくても可

顧客との全会話を分析しCXにフィードバック

──では、FAQサイトやチャットbotなど、デジタルによるCXの提供の場面において、最適な仕組みを作るための手順やコツについてお聞かせください。

 ポイントはさまざまありますが、もっとも重要なのは「顧客とのやり取りをすべてチェックすること」です。基本的にコールセンターでは、お客様との会話をすべて音声で録音し、保存しています。しかし、そのすべてをチェックするのが難しいことは想像できるでしょう。またチャットbotについては、そもそもデータすら取得していないところのほうが多いです。

 そうなると生じてくるのが属人的なサンプリングです。お客様との会話の中でとくに印象に残ったこと、褒められたこと怒られたことなどをピックアップし、それをもとに「こういう傾向がある」と結論づけてしまう。しかし実際には、氷山の一角を触って全体を想像するようなもので、必ずしも見出した答えは実態と合っていないことがほとんどです。

 コンタクトセンターの会話はもちろん、チャットbotなどのやり取りも含めたすべてのデータを分析するには、大きくふたつのテクノロジーが関与してきます。ひとつは、音声データなど非構造化データの構造化で、これはナイスが長年提供し実績もある通話録音・音声分析ソリューションが該当します。そしてもうひとつが、CXiの中核のCX専用AIである「Enlighten AI」です。Enlighten AIは、会話データに基づき「顧客満足度」や「従業員の緊張度」などのソフトスキルまで分析し、スコア化できます。CXに特化して分析がテンプレート化されているため、レポート化も容易です。

 さらに「Enlighten AI」は、会話の変遷である「スクリプト」を可視化し、そのスクリプトの満足度や成約率の高さを測定・判断した上で、その点数が高いスクリプトをAIに覚えさせていくことができます。つまり、教科書的に順を追って説明するスクリプトで新入社員が学び、それをトライアルアンドエラーするうちに最適化する。それをAIが膨大なデータをもとに実践するというわけです。

 さらに多くの対話型AIが、お客様の問いに答えるという“受け身”であるのに対し、「Enlighten AI」はプロアクティブな会話、たとえば関連する問いについての確認や、問題が解決した後の提案なども行えるようになることも、技術的に優れている点だと思います。

──このスクリプトの最適化は、チャットボットやFAQサイトなどのセルフサービスだけでなく、有人サービスにも活用できそうですね。

 まさにそのとおりで、営業担当者のリアルな会話自体を取り込んで分析したいと考える企業もいます。実際、不動産や住宅展示場、レストラン情報のウェブサービスなどで「勝ちパターン」を見出すために活用されています。さらに見出したスクリプトの出し先も、たとえばTikTokのようなSNSを活用するなど、さまざまなトライアルがなされています。チャネルごとに求められるCXの種類も内容も、トーンアンドマナーも異なるため、試行錯誤しながらさまざまなチャネルでトライされていますよ。

 有人サービスについての最適化では、もっとも進んでいるのは通販事業者で、コールセンターで最適なスクリプトを見出し、オペレーター間で共有することによって、全体のベースアップを図るというのは定番になっています。以前は、優秀者を表彰などしていましたが、今はそこから一歩進んで、リアルタイムでゲーミフィケーション的に褒め合ったり協力し合ったり、また満足度などの推移や順位をダッシュボードで随時見るといった使われかたも増えてきました。

すべてのインタラクションを継続的に改善する
すべてのインタラクションを継続的に改善する(クリックすると拡大します)

「DX時代のCX」はFAQ最適化から始めよう

──「DX時代のCX」を実現したいと考える企業にメッセージをお願いします。

 これから「DX 時代の CX」に取り組まれるのであれば、まず迅速性は大きなポイントになると思います。それは他部分のDXと同様で、競合他社もすべて一斉に進んでおり、導入から活用までのタイムラグができるだけ小さいほうが良いでしょう。その意味で、ナイスジャパンではCXiをクラウドCXプラットフォーム「CXone」の上で提供しており、導入スピードはもちろん、OPEXで対応できるため会計的にも導入しやすくなっています。

 日本企業はプロジェクトについての決断が遅れがちで、結果として商機を逃す傾向があります。国内で勝負するのならば差し支えないかもしれませんが、グローバル化が進み、業界がボーダレスになる中では難しいでしょう。もし「CX改革」という粒度での決定が難しいようであれば、先ほどご紹介したようなウェブサイトやFAQページの刷新・最適化を起点にして、ナレッジの統合や分析、活用へと広げる戦略であれば部署内で始めることができるのではないでしょうか。

 近年の視点で言えば、災害時の事業継続性もCX改革の検討要件になることが多いです。また企業の成長時のコールセンターで人海戦術でやりたいけれど人が集まらない場合に、どのように対応すべきか検討する中で最適化を考えるケースもあります。最近では、地方行政がコロナ禍の問い合わせに対応するために、突発的にコールセンターが必要になってたいへんな思いをしたとも聞きます。そのような場合にも、無人サービスの提供を最適な形で提供できれば大きな戦力となるはずです。

 重ねて申し上げますが、CXのデジタル化やAIの活用は大手企業だけのものではありません。企業規模に合ったソリューションは必ず見つけ出せるもの。まずは自社のチャネルやデータがどのような状態にあるのか、その把握からCXの変革を始めていただければと思います。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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