BOPIS(ボピス)はインターネットで注文した商品を実店舗で受け取れる仕組みを指します。Webで購入した商品を自宅に送り届けてくれる通信販売とは異なりますが、BOPISは顧客・店舗の双方にメリットがあります。たとえば、顧客からすると送料がかからずに気軽に買い物ができ、店舗にとっても来店してもらうきっかけとなる点があげられるでしょう。BOPISの基本的な仕組みや導入のための条件、成功事例などを解説します。
BOPISの基本的な特徴
BOPIS(ボピス)の導入を検討する際には、まず基本的な仕組みや注目を集める理由を押さえておく必要があります。Click&Collectとの違いについても解説します。
BOPISとは?
BOPIS(ボピス)とは、「Buy Online Pick-up In Store」の略であり、インターネットを通じて購入した商品を実店舗で受け取る仕組みのことを指します。EC(電子商取引)の長所と実店舗の長所を組み合わせた仕組みであり、世界中で導入する流れが生まれています。
自宅にいながらネットショッピングを楽しみたいが、送料の負担が気になるという方のニーズに応えるものであり、さまざまな業種でBOPISは導入されています。もちろん、BOPISを導入している企業であっても自宅への発送を行っているところも多くあり、消費者は自分のライフスタイルに合わせて選ぶことが可能です。
消費者のニーズに対してきめ細かな対応を行うことで、事業者は販売機会を増やすことができます。
BOPISが注目を集める理由
BOPISが多くの企業から注目されている理由として、主に3つの点があげられます。1つ目は、コロナ禍の影響で店舗に滞在する時間をできるだけ減らしたいという、顧客のニーズに応えることが可能な点です。
2つ目は、商品の受け取りが実店舗となるので、事業者としては顧客に来店してもらう動機付けが行える点です。そして3つ目は、これまでネットショッピングでの商品購入が中心だった顧客層にもアプローチでき、新しい顧客を取り込むきっかけづくりとなる点です。
BOPISを導入している企業は、欧米や中国を中心に成長を遂げています。コロナ禍によって新たなライフスタイルが模索されているなかで、BOPISは多くの企業の注目を集めているのです。
Click&Collectとの違い
BOPISと似たような言葉として、Click&Collect(クリック&コレクト)があります。Click&Collectは、インターネットで注文した商品を自宅以外の場所で受け取る仕組みです。
商品の受取先として実店舗も含まれますが、一般的にはコンビニなどでの受け取りを指します。BOPISはあくまで、インターネットで注文した商品を実店舗で受け取る仕組みであることを押さえておきましょう。
BOPISは顧客側と店舗側の双方にメリットがある
BOPISの基本的な仕組みや導入の背景を踏まえたうえで、顧客と店舗のそれぞれにどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。メリットを知ることで、自社にとって導入すべき仕組みであるかが判断できます。
顧客側のメリット
BOPISの仕組みがあることで顧客が受けるメリットは、宅配手数料がかからない点があげられます。1回ごとの購入金額が少なければ、送料が気になって購入をためらう場合があるでしょう。
BOPISなら自宅に商品を届けてもらうわけではないので、宅配手数料はかかりません。そのため、顧客にとって気軽に買い物がしやすい仕組みだと言えます。
また、好きなタイミングで商品を受け取れるのもBOPISのメリットです。あらかじめインターネットで注文をしておき、都合のよい時間帯にお店で受け取るようにすれば、時間の節約だけでなく店舗に滞在する時間も短くできます。
店舗で商品を直接購入する場合と比べて、在庫の有無の確認に時間を取られることがありません。また、ネット通販では返品に時間がかかりますが、BOPISなら店舗に商品を持っていけば返品を受け付けてもらえるのでスムーズです。
店舗側のメリット
一方、店舗側のメリットとしては、BOPISを導入していない競合他社との差別化ができるメリットがあります。顧客にとって利便性の高い仕組みを導入することで、顧客満足度の向上につなげられるのです。
また、商品の受け渡しは店舗で行えるので、顧客と直接コミュニケーションを取れる機会を得られます。顧客に来店してもらえることで、注文商品以外の他の商品も見てもらえるといった利点があります。
そして、ネット通販であれば個別に配送するために商品の仕分けやトラックの手配などが必要となり、物流コストが膨らみがちです。しかし、BOPISであれば店舗ごとに商品を振り分けて配送すればよいので、物流コストを下げられるメリットがあります。
BOPISに取り組むための3つの条件
BOPISを導入する場合、あらかじめ前提となる条件を満たしておかなければ、思うようにシステムを稼働させることができません。ここでは、BOPISを導入する3つの条件について紹介します。
1.ECストアと実店舗の両方が必要
前述の通り、BOPISは顧客がインターネットで注文した商品を実店舗で受け取るという仕組みです。
そのため、ECストアと実店舗の2つの販売チャネルが必要であり、どちらか1つが欠けている場合は新たに準備しなければなりません。
実店舗しか持たない事業者であれば新たにECサイトを立ち上げる、実店舗とは独立したECサイトを持つ事業者であれば実店舗と連携させるなどの準備が必要です。
2.迅速かつ的確なロケーション管理
BOPISを成功させるためには、ロケーション管理を適切に行わなければなりません。ロケーション管理とは商品の保管場所(ロケーション)を管理することを言い、注文から出荷までの流れをスムーズに行うために欠かせない手法です。
BOPISは実店舗に商品を届けるため、自宅に商品を届けるネット通販とは別の配送ルートを確立する必要があります。店舗への商品の到着が遅ければ、顧客がBOPISを利用するメリットが薄れてしまいます。
ロケーション管理による配送作業の効率化を行い、倉庫内の商品を効率良く配送ルートに流せる仕組みを整えられれば、顧客満足度を高めることにつながるはずです。
3.リアルタイムな在庫管理
BOPISでは、在庫情報をリアルタイムで確認できる仕組みづくりが欠かせません。インターネットから注文があったときの商品の取り置きや在庫の引き落としをスムーズに行うために、在庫管理システムの導入が重要です。
取り扱う商品数が多いほど作業負担が大きくなり、ヒューマンエラーも起こりやすくなります。注文データをもとに、倉庫から商品をピッキングして実店舗に配送する流れを構築するには、在庫管理システムを活用すべきだと言えます。
BOPISを導入した成功事例
BOPISを導入したときの具体的なイメージをもつには、すでに導入して成功している企業の例から学ぶことが大切です。3社の成功事例について見ていきましょう。
ヨドバシカメラ
大手家電量販店のヨドバシカメラは、ECストアの「ヨドバシドットコム」で全国の店舗の商品在庫状況がリアルタイムで把握できる仕組みを整えています。ネットで注文をしてから30分ほどで、店舗での受け取りが行える体制を構築しているのが特徴です。
ヨドバシカメラは自社配送を行っているのでネット通販による自宅配送もスピーディーではありますが、最短でも翌日到着となります。そのため、注文から30分ほどで商品が受け取れる仕組みは、消費者にとって利便性が高いと言えるでしょう。
店舗での受け取りは営業時間内が基本となりますが、一部の店舗では受け取り専用窓口を設けています。消費者がいつでも好きなタイミングで受け取れる点にメリットがあります。
ユニクロ
アパレル大手のユニクロでは、ECサイトから注文した商品を店舗で受け取ることが可能です。受け取りの目安は最短で翌日、通常は2~3日程度となっています。
店舗に商品が到着するとメールで連絡をしてくれるので、時間にムダがありません。サービスカウンターでの受け取りが可能で、店舗に商品が届いてから14日間は預かってくれるので好きなタイミングで受け取りに行けます。
ワークマン
作業着の専門店であるワークマンは、2020年に店舗での受け取りを強化したECサイトの立ち上げに伴い、従来から取り組んでいた店舗受け取りサービスを客注通販・店舗取置通販としてリニューアルしています。ECサイトからの注文をした人の65%程度が店舗での受け取りを選択しており、BOPISの利用者は年間で12万人以上となっています。
2020年にはこれまでの店舗受け取りサービスを「店舗取り置き通販」と「客注通販」に分けて、さらに利便性を高める取り組みが行われました。客注通販とは、店舗の在庫から注文商品を確保するか、店舗に在庫がないときはワークマンのECセンターから商品を確保する仕組みです。
顧客としては確実に商品を購入できるので、便利な仕組みだと言えます。
まとめ:BOPISは今後のニーズをとらえた仕組み
BOPISはショッピングを楽しむ消費者のニーズにきめ細かく応える仕組みであり、ECサイトと実店舗のそれぞれの長所をうまく活かせます。消費者にとってはネット注文でも送料がかからないというメリットがあり、事業者にとっては店舗に受け取りに来てもらうことで、他の商品も見てもらえる機会をつくれます。導入を検討する際は、自社の事業にBOPISをどのように活かせるのかを考えてみましょう。