こんにちは、PLAY Inc.の齋藤和幸です。この記事を執筆している2021年10月現在は緊急事態宣言が解除されていることも影響し、店舗に活気が生まれているように感じています。今後、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、店舗のニーズが徐々に上昇していくことも想定できますが、それによってECが衰退するとは考えにくいでしょう。むしろ、店舗とECが持つそれぞれのメリットを上手く活用する顧客が増加し、双方の重要性がより高まっていくと私は考えています。今こそ店舗とECの連携を深め、協力体制を構築。より顧客に喜んでもらえるような仕組み作りに取り組むタイミングと言えるのではないでしょうか。
ECビジュアルを紐解き店舗で再現 MD設計を軸に事前準備を欠かさない
さて、前回の記事では「ECのビジュアルイメージを店舗で再現することが重要」とお伝えしましたが、今回はより具体的にVMDが持つスキルを活用したOMO推進術をお伝えしていきます。
視覚的な効果をもとにしたレイアウト・ディスプレイで、顧客のマインドを動かし購買につなげる。現代のVMDはこのスキルを店舗とEC双方で活かし、顧客体験を最適化するという役割を担っています。私はこれを実現するために、「ECの特集やピックアップ商品を店舗でも同じ見えかたにする」という方法を実践しています。
もちろん、モデルを起用したりロケをしたりと、ECのクリエイティブ作成とまったく同じことを店舗で再現するのは難しいでしょう。しかし「なぜ、そのビジュアルイメージになったのか」を紐解くと、必ず店舗でも共通性を持たせることができます。たとえばモデルの画像であれば着こなしかた、置き撮りの商品画像であれば商品の周囲に配置しているプロップス(演出用の小物)を店舗でも再現する。これにより、双方が発信するビジュアルイメージを揃えることが可能となります。
ECのビジュアルイメージには「その商品を良く見せたい」「商品の特徴をより強く際立たせたい」など、ブランドが顧客に届けたいメッセージがあるはずです。店舗では限られたスペース・アイテムとなりますが、その「メッセージが何なのか」を理解して店頭ディスプレイをすることが大切です。
プロップスは、最近は精度の高いものが安価に入手できるようになっており、私自身100円ショップのアイテムを使用する場合もあります。少額の投資で顧客のマインドを把捉。購買につながる可能性が高まるのであれば、VMDがしっかりとリソースを割いて取り組むべきです。
また、両者のビジュアルイメージ統一は、店舗がECの後追いで行う場合、準備期間が短くなればなるほどできることが限られてしまいます。そのため、ECにおける特集などの企画段階から「いつ・どのようなクリエイティブを作成するのか」「店舗ではどのように再現するのか」をセットで考えておくことが重要です。VMDがシーズンごとに打ち出すビジュアルイメージを決めている「シーズンVP」と同様に、それぞれのシーズンにおける販促企画として事前に組み立てておきましょう。
なお、「シーズンVP」はそもそもMD計画に基づいて決定・推進しますが、MD計画は別注や限定企画を除き、店舗とECに共通する指標となるため、これを軸とすることで両者の連携精度がより高まると考えられます。
私は現状、こうして企画段階から各部署が一貫したVMDを実施しているブランドは少ないと感じています。これを改善することができれば、ECで打ち出した商品を店舗が行き当たりばったりにディスプレイする、店舗在庫がなくECを見た顧客に適切な案内ができないなどの状況を回避できます。言葉では単純に「見えかたを揃える」となりますが、そのためには事前準備が欠かせないことを忘れてはいけません。