TANA-X(タナックス)と、リコーは、複数のシェルフ・サイネージを、IoTセンサやAIで統合制御し、来客属性に合わせて最適なデジタル販促コンテンツの配信を可能にするシステム「コネクテッドシェルフ」(Connected Shelf)を共同開発した。タナックスは今後、実店舗での実証実験を予定しており、2020年末頃の本格展開を目指すとのこと。
近年、IoTやAIの最新技術が生活やビジネスに大きな変革をもたらしつつあるなか、小売店舗においても在庫・発注管理、ダイナミックプライシングなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。
タナックスは、主要事業のひとつであるセールスプロモーション(SP)事業において、売り場演出と効果的な陳列棚づくりの追求のために「Smart-SP」をコンセプトに、店頭ディスプレイやPOP、消費者の購買行動分析、映像プロモーションなど、従来の販促サービスをデジタル技術により拡張する試みを続けている。その新たな取り組みのひとつが「コネクテッドシェルフ」だという。
同システムでは、距離センサを利用した来客滞留モジュール、カメラとAIの連動による来客属性モジュールなどのセンサモジュールで取得したデータに基づき、商品棚に設置した複数のシェルフ・サイネージを連動させることで、年齢や性別など来客の属性に合わせて最適な販促コンテンツをダイナミックに表示する。
さらに、取得した来客の滞留情報や属性情報、購買行動、閲覧・表示コンテンツ種類などのデータはログとして記録され、マーケティングに活用することができる。また、既存の商品棚に搭載できるため、導入の手間やコストも抑えられるとのこと。
デジタルサイネージ事業を手掛けるリコーが、クラウド型サイネージ配信サービス「RICOH Digital Signage(リコーデジタルサイネージ)」をベースに、カメラとAIを使った画像認識によるインタラクティブな販促コンテンツ切り替えや、複数のセットトップボックス(映像受信機器)の同期などを統合的に管理するCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)といったシェルフ型サイネージ向け機能を開発・提供している。
また、本年の世界的な新型コロナウイルス感染拡大が、国内小売店舗の営業にも深刻な影響を及ぼしているなか、同システムでは販売員の対面接客をサイネージで代替でき、ウイルス感染リスクの軽減が期待される。
同システムの特徴は次のとおり。
来客属性や棚前状況に合わせてコンテンツ表示を自動切り替え
カメラやAIなどと連動した専用のセンサモジュールを使用することで、商品前の来客の滞留情報、属性情報を取得して、商品棚前の状況に合わせたコンテンツの出し分けを自動化することができる。センサモジュールの種類を増やすことで、さまざまなインタラクティブコンテンツの店頭展開が可能に。さらに、センサモジュールで取得した来客の滞留情報や属性情報、購買行動、閲覧・表示コンテンツ種類などのデータをログ記録し、マーケティングに活用することができる。※現時点では来客滞留モジュール、来客属性モジュールが利用可能。
複数のサイネージをひとつの画面として使用するシンクロ・モード
同システムでは、商品棚に設置されたシェルフ・サイネージなどの複数の画面をひとつの画面としてコンテンツを表示する「シンクロ・モード」を標準搭載。単なるデジタルプライスタグを超えた、説得力のある販促コンテンツの配信が可能になる。
取得データに対応したきめ細かなコンテンツ配信もCMSで統合管理
リコーのクラウド型サイネージ配信サービス「リコーデジタルサイネージ」をベースに開発した専用のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)により、コンテンツの一元管理機能に加え、センサモジュールで取得したデータを活用したインタラクティブなコンテンツ出し分け配信機能もCMSに統合している。地域・店舗別・時間でデータに基づいたコンテンツ配信を行うことができる。
既存什器を利用した取り付けが可能
同システムは店舗内の陳列棚として一般的な、ゴンドラ什器(システム什器)の棚板などに取り付けて使うことが可能。既存の店舗什器を入れ替えることなく利用することができる。年齢や性別などの来客の属性に合わせて最適なコンテンツを表示し、ダイナミックに売り場を演出する。タナックス運営の「DRUG STORE Live」店舗内にて、実証実験を開始した。
今後、タナックスは実店舗での実証実験を行い、2020年末頃の本格導入を目指す。同システムを体感してもらえるよう、同社の京都本社1F「DRUG STORE Live」店舗内および東京支店のショールームに同システムを設置する。
リコーは、オフィスや公共施設、小売店舗などデジタルサイネージ市場の顧客へ、より便利で使いやすい製品やサービスの開発・提供を進めていくという。