KPMGジャパンは、KPMGインターナショナルが実施した「The truth about online consumers」調査の日本語版である「オンラインショッピングにおける消費者行動の実態」を発行した。
本調査は、世界51ヵ国、18,430人の消費者を対象とした調査をもとに、オンラインショッピングに対する認識や購買行動を、地域、商品カテゴリー、購買プロセスの段階、世代(ミレニアル世代:1982年~2001年生まれ・ジェネレーションX世代:1966年~1981年生まれ・ベビーブーム世代:1946年~1965年生まれ)別に分析し、消費材・小売企業がターゲットにするさまざまな顧客セグメントの独自性をKPMGによる考察も交えて解説するとともに、顧客中心主義に基づく効果的なオンライン戦略の立案のヒントを記載している。
同社は、今回の調査では主に以下の点が明らかになったと発表している。
- インターネットの急激な広がりやオンラインショッピングの台頭により、オンラインシッピングに対する考え方や購入数に変化が出ている。
- オンラインでの平均購入回数はX世代がもっとも多く、購入金額はベビーブーム世代がもっとも多い。
- 人口密度が多い新興国では、オンラインショッピングを行う理由に「実店舗で買い物を行う際の不愉快な体験を避けるため」という動機が多く見られた。
- オンラインショッピングにおける信頼性では、どの世代でも個人情報保護が一番に挙げられている。
- 購入前にオフライン(実店舗やクチコミ)で商品について調べるよりもオンラインで調べるケースが圧倒的に多い。
- 購入後には商品の感想をクチコミとして投稿するケースが多く、商品Webサイトに次いでFacebookなどのSNSに投稿するケースが多く見られる。
オンライン購入における消費者の基本行動
当調査結果により、全回答者のオンラインでの年間平均購入回数は17回で、月間平均取引数は1.25回であった。また、世代別で見るとX世代(1966年~1981年生まれ)は、過去1年間でもっとも多くのオンラインで取引を行っており(平均18.6回)、もっとも若くテクノロジーに精通したミレニアル世代(1982年~2001年生まれ)より約20%も多くオンラインショッピングを行っているという結果が出ている。
また、年齢の高いベビーブーム世代(1946年~1965年生まれ)は他の世代よりもオンラインショッピングに消極的であると考えられていたが、実際にはミレニアル世代(平均15.6回)と同程度の頻度(平均15.1回)でオンラインショッピングを行っていることが判明した。さらに、ベビーブーム世代は、1回の注文あたり、他の世代より多くの予算をオンラインショッピングに使うということが明らかになった(ベビーブーム世代:203ドル/回、X世代は190ドル/回、ミレニアル世代:173ドル/回)。
オンラインかオフラインか
オンライン/オフラインのどちらが商品購入の最初のトリガー(認知)となるのか、その影響力を比較すると、52%が少なくとも1つのオフラインチャネルを最初の接点として挙げており、59%が1つもしくはそれ以上のオンラインチャネルを挙げていることがわかった。
なお、商品を最初に認知した場所としてもっとも多かったのが「小売のWebサイトやオンラインショップ」で、約3分の1の回答者がここを挙げた。次いで「実店舗」が22%、「オンライン広告」が15%となっており、実際の店舗よりオンラインショッピングサイトで接点を持つ場合の方が購入への影響が高いことが読み取れる結果となった。
また一方で、ミレニアル世代は、ソーシャルメディアやクチコミなどのオンラインの情報だけから影響を受けるのではなく、他の世代よりオフラインの情報からも影響を受けているということがわかった。ミレニアル世代のうち、「最近オンラインで購入した商品を実店舗でも見た」と回答したのはベビーブーム世代の約1.25倍、「知り合いとの話題に挙げった」と回答したのは、ベビーブーム世代の約1.5倍、「友達が持っていて知った」と回答した割合は約2倍以上だった。
オンラインショッピングを行う理由と場所
消費者がオンラインショッピングを行う理由のうちもっとも多かったのは「24時間いつでもショッピングができて便利だから」で、58%の回答者が挙げている。次に「価格を比較できるから」が54%、「オンライン限定セールがある/安い商品を購入できる」が46%となっており、どの年代の回答者も、オンラインショッピングを行う理由としてこの3項目を挙げた。しかし、「実店舗で商品を見つけることが大変だから」という回答で比較すると、ベビーブーム世代でのこの割合が高く、この項目がベビーブーム世代にとってオンラインショッピングをするモチベーションとなっていることがわかる(ベビーブーム世代:26%、X世代:20%、ミレニアル世代:17%、全体では20%程度)。
なお、オンラインショッピング時に購入するサイトを決める際、もっとも重要な要素は何か、という設問については「見つけられるサイト上でもっとも安い価格で提供していること」がもっとも多く(57%)、次いで「配送サービスが魅力的」(43%)、「返品条件が緩い」(40%)が挙げられた。「商品が品切れではないかを確認できること」については世代間で際立った差異がみられ、ミレニアル世代はリアルタイムで入手できることの重要性が比較的低いことがわかった(ミレニアル世代:28%、X世代:36%、ベビーブーム世代:37%)。以上のように、回答の多くは利便性や価格に関連した理由が多い一方で、店に出向き買い物をすることにともなう不愉快な体験(店までの移動、人ごみの中を歩くこと、レジの行列に並ぶことなど)を避けるためと回答した消費者の意見もあった。とくに人口密度の高い都市でこの傾向が高く、中国、インド、シンガポールの消費者は人ごみを避けることがオンラインで買い物を行うもっとも大きな動機だと回答している。
オンラインショッピングにおける信頼とは
もっとも大きな信頼を寄せる企業やウェブサイトの特性を消費者に尋ねたところ、50%以上が「企業の担当者と連絡を取ることができるウェブサイト」を挙げた。また、オンラインショッピングでの信頼性を上げるために必要なことは「個人情報をきちんと管理すること」がもっとも多く挙げられている(63%)。情報漏えいについては、ミレニアル世代は他の世代より懸念している割合は低いものの、それでももっとも優先度の高い事項だと回答している(ミレニアル世代:56%、X世代:66%、ベビーブーム世代:71%)。
オンライン上でのフィードバックの共有
全回答者のうち、31%が商品のフィードバックをオンライン上で共有すると回答した。世代別で見ると、ミレニアル世代がもっとも高く34%、次いでX世代は29%、ベビーブーム世代は28%という結果となった。また、ほとんどの回答者(92%)が共有したフィードバックは肯定的なものだった。
フィードバックを共有する方法として、今回の調査では、「商品のサイトに直接書き込む」がもっとも多く47%、次いで「Facebookに投稿」が31%、「メーカーやブランドのウェブサイトに書き込む」が18%という結果となった。この傾向はすべての年代で一致しており、さらにミレニアル世代は、WhatsAppやInstagram、Twitterに投稿するという傾向も高く、同社は、今後はその割合が多くなることが予想されるとした。
【調査概要】
調査期間:2016年3月~4月
調査対象者:
世界51ヵ国の消費者で、年齢は15歳から70歳まで、所得が各国で上位65%以上、かつ過去12か月でオンラインショッピングを行ったことのある人物を対象に調査を実施。総回答者数は18,430名。
調査方法:
オンラインショッピングに対する消費者の購買心理や行動、意識や認識についての調査をオンラインで実施。なお、調査結果を国間で比較する際に、人口動態の比率に違いから生まれる傾向の違いが生じてしまうため、年代の比率は各国で同じになるように傾斜分配を行った。