電通は2024年2月27日、日本の総広告費と媒体別・業種別広告費を推定した「2023年 日本の広告費」を発表した。2023年の総広告費は通年で7兆3,167億円(前年比103.0%)となり、1947年の推定開始以降、前年に続き過去最高を更新している。詳細は次のとおり。
媒体別広告費の概況
マスコミ四媒体広告費 2兆3,161億円(前年比96.6%)
「雑誌広告費」と「ラジオ広告費」は増加したものの、「新聞広告費」と「テレビメディア広告費」が減少し、マスコミ四媒体全体では前年を下回った。
インターネット広告費 3兆3,330億円(前年比107.8%)
堅調に伸長し、総広告費に占める構成比は45.5%に達した。
「インターネット広告媒体費」は、2兆6,870億円(前年比108.3%)。前年に続き、コネクテッドTVの利用拡大などを背景に、「テレビメディア関連動画広告費」が443億円(同126.6%)と増加した。
「物販系ECプラットフォーム広告費」は、2,101億円(同110.1%)で、前年に続き、在宅需要の普及などで増加した。「インターネット広告制作費」も、動画広告市場の拡大などにより、4,359億円(同103.7%)と増加した。
なお、「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」とは、生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うECプラットフォーム上において、当該プラットフォームへ出店している事業者が当該プラットフォーム内に投下した広告費と定義する。
プロモーションメディア広告費 1兆6,676億円(前年比103.4%)
新型コロナの5類感染症移行にともなう各種イベントの再開や大規模化に加え、複合型商業施設やテーマパークなどにおける催事企画の増加により、「イベント・展示・映像ほか」が大きく増加。大型でインパクトのある企画が増加した「交通広告」や「屋外広告」も、プロモーションメディア全体の成長に寄与した。
媒体別広告費詳細(抜粋)
新聞広告費 3,512億円(前年比95.0%)
大型スポーツイベントの開催があったものの、前年の「北京2022冬季オリンピック・パラリンピック」の反動減や物価上昇などの影響を受け、通年では減少した。
業種別では、「交通・レジャー」が前年比114.9%と前年に続き増加。一方、通信販売系の商材に関する出稿量が各業種で減少し、「流通・小売業」は同88.9%、「食品」は同90.6%となった。
雑誌広告費 1,163億円(前年比102.0%)
業種別では、「交通・レジャー」「外食・各種サービス」「ファッション・アクセサリー」「精密機器・事務用品」が増加した。一方で、雑誌広告費シェアの高い「化粧品・トイレタリー」は前年に続き減少した。
ラジオ広告費 1,139億円(前年比100.9%)
通年で前年を上回り、前年比100.9%となった。業種別では、「ファッション・アクセサリー」(同136.7%)や「外食・各種サービス」(同110.7%)が二桁成長となった。
テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連) 1兆7,347億円(前年比96.3%)
スポット広告費は、1~3月期は「情報・通信」や「飲料・嗜好品」が低調だった。4~6月期は、トラベル関連や映画の大型タイトルにおける出稿量が増加した結果、「交通・レジャー」が回復した。7~9月期はメイクアップ製品の需要増やキャッシュレス決済の利用拡大などがみられた。10~12月期は、酒税法改正の影響を受けアルコール商品を中心とした「飲料・嗜好品」が好調であった。
インターネット広告媒体費 2兆6,870億円(前年比108.3%)
企業のマーケティング投資は抑制傾向になったものの、インターネット広告は前年に続き増加。動画サービスの利用者数・利用時間がともに増加し、動画広告も伸長した。また、企業の販売促進活動におけるデジタル活用が進み、デジタル販促も伸長した。
新聞デジタル 208億円(同94.1%)
デジタル広告市場が成熟しつつあること、クッキーレスの影響による広告単価の伸び悩み、新聞デジタル以外の動画広告への予算シフトが影響し、前年を下回った。
予約型広告はディスプレイ広告が増加したものの、前年に増加をけん引したタイアップ広告や動画広告は減少した。運用型広告は大型スポーツイベントの影響でPV数は増加したものの、単価の低下による影響が大きく低調であった。
雑誌デジタル 611億円(同100.2%)
各社が保有するDMP(データマネジメントプラットフォーム)の活用が進み、デジタルOOHへの拡張配信も開始された。また、SNS内で完結できる、新たなタイアップ広告手法の開発も進んだ。
広告主のオウンドコンテンツの制作や動画の制作・配信など、出版社の強みであるデータ・コンテンツ制作力やコミュニティ力を生かした企画が堅調に推移し、引き続き出版社の広告収益を支えた。
ラジオデジタル 28億円(同127.3%)
前年に引き続き、Podcastをはじめとする音声メディアでのデジタル展開が高い注目度を維持し、radikoを含むラジオデジタル広告への新規出稿数に増加の傾向がみられた。
「日本の広告費」における「物販系ECプラットフォーム広告費」 2,101億円(前年比110.1%)
ECでの購買が消費者の中で定着したことで、前年に続き二桁成長となった。一方、コロナ禍で活性化したEC需要が徐々に落ち着き、主に巣ごもり特需として伸長した家電やインテリアなどの業種は低調となった。
インターネット広告制作費 4,359億円(前年比103.7%)
制作物別では、ウェブ動画広告制作の伸び率は鈍化しつつも高まり続け、特に動画サイトやアプリなどのコンテンツ内に表示される動画広告の制作数は前年に続き増加した。
屋外広告 2,865億円(前年比101.5%)
都市部を中心に出稿量は堅調に推移し、ラグジュアリーブランド、エンターテインメントなどの業種に加え、飲料、アパレルなど様々な業種で広告需要が回復した。特に、テレビ・デジタルで到達しにくい若年層向け商材での活用を中心に広告需要が高まった。
折込 2,576億円(前年比97.1%)
業種別では、流通・小売における百貨店、ディスカウントストア、ドラッグストアなどで増加した。サービス業では、旅行、ホテル・式場が人流の回復により好調であった。前年に続き、買い取り業者も堅調に推移した。一方、通信販売、教育・教養は減少した。
DM(ダイレクト・メール) 3,103億円(前年比91.8%)
これまでDMで代替されていた、在宅向けやBtoB営業目的の需要が減少した。
通信販売を中心とした流通・小売は、前年に続き堅調に推移。データマーケティングを活用したパーソナライズDMや、デジタル施策と連動したDMが多く見られた。
POP 1,461億円(前年比96.5%)
顧客体験を重視した、エンターテインメント性の高い販売施策が増加した。ただし、デジタルと融合したPOP広告は都市部店舗や旗艦店などでの実証実験としての実施にとどまり、広告費は前年を下回った。