投資のみならず社会問題についても語る「Web Summit」
「Web Summit」は、欧州のベンチャーイベントとして2009年にスタートしました。同イベントは、アイルランド人のPaddy Cosgrave氏が始めたものです。2000年代のアイルランドは、法人税などの優遇措置、英語を話す人材の確保などのメリットがあることから、Microsoft、Intelなどの企業が続々と拠点を設立。その急成長ぶりは、「ケルトの虎」と喩えられていました。WebSummitは、そんな同国の首都ダブリンでスタートし、2017年よりポルトガル・リスボン開催となっています。
インターネット系のベンチャー企業と言うと、アメリカ、それもシリコンバレーが注目されますが、Web Summitは欧州の片隅のアイルランドに、名だたる起業家が集まるイベントとして知られるようになりました。Cosgrave氏の人柄が手繰り寄せたものと言えるでしょう。
とくに2013年は、まだ現在ほど注目されていなかったElon Musk氏(TeslaとSpaceXの創業者)、Dropbox創業者のDrew Houston氏などがステージに立ちました。異常な盛り上がりでありながらもWi-Fiがつながらず、Cosgrave氏が謝罪していたことを思い出します。
同イベントは、単にお金や投資の話だけでなく、社会問題に目を向けたセッションがある点も特徴です。2019年には、ノーベル平和賞候補に推薦された経験を持つEdward Snowden氏がビデオで参加。なお、「こんまり」こと近藤麻理恵さんも2015年に登壇しています。
思い出すのは、2014年のセッションです。「将来の働きかた」をテーマに、シリコンバレーのベンチャー、クラウドソーシングのトップなどが集まり、「オフィスは小さくなる。本社機能は最小限になり、スタッフは好きなところで働く。そして最終的にはプロジェクトベースで集まり、終わると解散する形になるのでは」と予言していました。コロナ禍でリモートワークが進んでいますが、6年前の予言が一気に現実になりつつあると実感しています。
2020年のWeb Summitはオンライン開催となり、10万人以上が視聴したとのこと。今をときめくZoomの創業者・CEOのEric Yuan氏、テニス選手であり投資家でもあるSerena Williams氏、イングランド・プレミアリーグのトッテナムの監督を務めるJose Mourinho氏、ノーベル平和賞を受賞したMalala Yousafzai氏と多彩な顔ぶれを集めることができる点は、さすがCosgrave氏です。Malala氏はAppleの幹部と対談し、女子教育と地球温暖化の相関関係について語りました。
なお、今年のイベントのもっとも重要なニュースは、Web Summitが東京でも開催されるというものでしょう。東京都知事の小池百合子氏が登場し、東京の魅力をアピールしました。また、デジタル庁の平井卓也氏は「GaaS(Government as a Startup)」について説明。日本が「デジタル化に遅れていることは明白」としながら、国が優先してデジタル化を進めていくと約束しました。