データ収集しながらブラッシュアップ チャット接客の可能性
――まずは、現在の情勢を踏まえたチャット接客の動向を教えてください。
米山(AI Shift) 新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、実店舗が閉まってしまったり、人が集まりづらい状態になってしまったり、今まで通りの売りかたができなかったりする状況を見ると、今後ECでものを売ることはより主流となっていくと確信しています。その中で、実店舗と同様のサービス提供をオンラインで行う、デジタル接客に取り組もうという流れは自然と加速していくのではないでしょうか。そうした際に、有人のみで対応する方法ももちろんありますが、AIを活用したチャットbotと組み合わせて、効率的にサービスのクオリティを向上していけると良いのではないかと当社は考えています。当社が提供する「AI Messenger」も、その考えを反映したものとなっています。
――有人チャットで対応する領域とチャットbotで対応する領域は、どう分けていくと良いのでしょうか。
米山 AIと人では、それぞれ得意分野・苦手分野が異なります。AIを使ったチャットbotは、簡潔な疑問に対する回答を提示することや、ユーザーの疑問や要望をヒアリングすることは得意です。しかし、複雑な長文を読み解くことや、僕たちが今まで実店舗で受けていたカウンセリングのように、複合的な要素を加味した提案を行うことはまだ苦手なので、AIがヒアリングした情報をもって、人がホスピタリティある接客をしていく。こうした役割分担が鍵を握ると考えています。
もちろん、ヒアリング時点から有人で対応することも可能ではありますが、チャット接客は、最初の発話のタイミングが非常に重要になってきます。お客様がチャットで質問を送ってから応対までに1分以上時間がかかってしまうと、その後のやりとりの継続率が下がってしまうため、すべて有人で対応しようとすると、オペレーターの数を確保する必要性が出てしまうのです。そこで、うまくチャットbotで情報をヒアリングする作業などを挟みながら、有人チャットで対応する件数を絞り込み、本当に有人での接客を必要としている人にサービスを提供する、こうした役割分担が重要になってきます。それが実現できると、ECサイトとしてのUXの向上やお客様の満足度の向上にもつながるはずです。
――チャットbotと有人対応の線引に悩む事業者の方もいると思いますが、どうすべきでしょうか。
米山 お客様の立場に立って考えた際に、問い合わせをしても返ってこない状態が1番ストレスになることは想像に容易いでしょう。デジタル接客においては、そうしたストレス状態を避けることが大切です。お客様からの問い合わせが多岐にわたり、最初は有人チャットへの接続率が高い場合も、発話を繰り返しデータを蓄積することで、チャットbotで対応できる幅を徐々に広げていくことができますから、まずは使ってみることが大事ですね。チャットの問い合わせフォームから、自社ECのお客様がどのような質問を投げかけてくるのか、チャットbotでの対応でつまずく点はどこなのか、データを収集しながらブラッシュアップしていくためにも、いち早く取り組むことをおすすめしたいです。