雰囲気はゆるく、コメントは迅速に!伊藤久右衛門のライブコマース
引き続き盛り上がりを見せる動画だが、ライブコマースについては、企業の成功事例がなかなか聞こえてこない。そんな中、「売ることを目的にしない」方針でライブコマースの配信を続けているのが、宇治茶や抹茶スイーツを販売する伊藤久右衛門である。今回、イベント「ECzine Day 2018 KANSAI」に登壇してくれたのは、同社のWEB営業部 マーケティング課に所属する松井涼さんだ。編集部がインタビューする形で行ったセッション『「売ることを目的にしない」ライブコマースから探る伊藤久右衛門流ファンづくりの掟』をレポートする。
――松井さん、まずは自己紹介をお願いします。
「新卒入社で、伊藤久右衛門に入社して4年目になります。WEB営業部 マーケティング課では2年ほどです。上司から、『ライブコマースをやってみろ』と声をかけてもらいまして、それがきっかけで取り組んでいます」
――ありがとうございます。伊藤久右衛門さんはライブコマースのほかにも、ユーザーとつながるSNSアカウントをいくつもお持ちですが、成功事例として知られるFacebookでの「紫陽花パフェ」の施策についてご紹介いただけますか?
伊藤久右衛門が取り組むSNSと運用開始時期
2012年5月から | |
2012年6月から | |
LINE@ | 2015年2月から |
2015年11月から | |
ライブコマース(メルカリチャンネル) | 2017年12月から |
「もともと宇治には、紫陽花で有名なお寺があり、6月には観光客の方がいらっしゃいます。伊藤久右衛門の店舗では『茶房』も営んでおりまして、紫陽花を目的に観光にいらした観光客の方が、お立ち寄りくださるんですね。ですから当社でも、『紫陽花』をテーマになにか行うとお客様に喜んでいただけるのではと考えました。いちおしメニューの抹茶パフェに期間限定の『紫陽花パフェ』をつくり、ほかのスイーツも加えた『紫陽花まつり』を開催しています。
『今年も紫陽花パフェ、はじまりました』という写真つきの投稿をSNSに行ったところ、Facebookでは6,007いいね!をいただき、エンゲージメント率は60%。Twitterでは、1,592,000リーチ、エンゲージメント率は9.9%となりました。『ご来店いただいた方に、紫陽花コースターをプレゼントします』とSNSで発信したところ、『コースターが欲しくて来ました』というお客様も実際にいらっしゃいました。ECでは、紫陽花をモチーフにした他のスイーツを販売し、アクセスや売上も伸びています。ネットとリアルが融合して、実際にお店に足を運んでいただくなどの成果につながった良い事例かなと思います」
――それぞれのSNSの役割を、どのように位置づけていらっしゃいますか?
「Facebook、Twitter、InstagramなどのいわゆるSNSは、きれいな写真やおもしろい文章をきっかけに、伊藤久右衛門を知っていただく、認知度を広めていくのが役割です。LINE@に関しては、友だち登録をしていただいた方とのコミュニケーションになりますので、アプローチを重ねて、さらに伊藤久右衛門をもっともっと好きになっていただく、コミュニケーションとしては第二段階に位置するものかと思います。
そして私が担当しているライブコマースですが、メルカリチャンネルで配信しており、そこにはライブコマースそのものを見ている方々がいらっしゃいます。ですから、配信さえすれば見ていただけるので、まずは伊藤久右衛門を知っていただくことができます。そして、動画というコンテンツの特性だと思いますが、登場している我々の人となりや、楽しんで配信している雰囲気が伝わりやすいようです。そのため、伊藤久右衛門を好きになっていただける方もいらっしゃる。ひとつでふたつの目的を果たせるのが、ライブコマースではないかと考えています」
――松井さんがどのような感じでライブコマースをやっていらっしゃるのか、実際に動画を見ていただくとわかりやすいのではと思います。
――実際にライブコマースを配信してみた感想をお聞かせください。
「はじめて配信をする際には、『誰も見てくれないだろう』なんて思っていたのですが、先ほども述べたとおり、メルカリチャンネルでライブコマースそのものを見ていらっしゃる方たちが一定数います。はじめての配信の際も、すぐに何人か見に来てくださり、コメントもつけていただきました。
ライブコマースというと、テレビショッピングをイメージされる方もいらっしゃるかと思いますが、似て非なるものというのが僕の考えです。テレビショッピングのような、発信する側が一方的に何かを伝えるのではなく、コメントをいただいたらお返しするなど双方向のやりとりをできるのがライブコマースです。構成もがっちり固めず、お客様にお任せするような気持ちで臨んでいます。
ただし、コメントへの返信にはスピード感が求められます。友人とLINEをしているようなやりとりが求められているのではないでしょうか」