売上に占めるインバウンドの割合が4年で2.5%から30%に
マツキヨがアリペイを導入した理由
マツモトキヨシホールディングスの松田崇氏は、「マツキヨの新世代クロスボーダーO2O戦略」をテーマに、アリペイの導入に至った経緯と国内のデジタル化の事例を紹介した。
マツモトキヨシホールディングスでは、国内のデジタルが関与している領域が非常に伸びているという。同社のデジタル領域の売上におけるシェアの比率は下記の通り。
- ECとO2Oの領域は、前年比で25%、今期もすでに23%ほど成長
- デジタルが関与している売上額は、全体の16%
- この16%を分解すると、89%がO2Oの売上で、残りの11%がECによる売上
これを受けて松田氏は「デジタル化を進めていくためには、よりお客様一人ひとりとの関係の最適化を進める必要がある」とし、それを実現するための条件として、「デジタル上に接点数が確保できていること」、「顧客理解」、「お客様を動かすためのインセンティブを企業が持てているか」の3点を提示した。
「ポイントなどのインセンティブについては、従来は『購買』に対して付与するという特性でしたが、直近では『ユーザーアクション』に対してどのようなインセンティブをつけるか、という形に変わってきました。お客様を動かすためには、どのようにインセンティブを活用していくか。我々もポイントを発行していますが、ポイントの在り方自体が変化しているように感じます」
また、オムニチャネルを進める過程におけるユーザーの購買金額の変化については、図を提示しながら言及した。
「この図では、カードメンバーの購買金額を1としたときの数字の変化を表しています。カードメンバーを1とし、それにデジタルで持てる接点を加えることで、購買金額は1.1倍になります。さらにオムニチャネルに繋がるウェブ系のサービス、それから店舗系のサービスを活用していくことで、1.2倍、1.7倍と増えていきます。最終的にチャネルを併用すると、購買金額は3.4倍にまで増加することがわかりました」
インバウンドによる売上が大きく成長しているのも同社の特徴のひとつだろう。越境ECによる売上は、昨年と比べ1.5倍に、海外店舗の売上はおよそ2倍に伸びている。SNSなどを活用し海外との接点強化に取り組んだ結果、2014年には売上に占めるインバウンドの割合が2.5%だったのに対し、2018年度はすでに30%を超えている。
海外市場に大きな強みを持つようになった同社は、今度どのように事業を展開していくのだろうか。アリペイの導入経緯と合わせて松田氏は説明し、セッションのまとめとした。
「日本では、お客様の情報をシングルIDで管理することができるようになったので、情報がひとつに繋がった状態でマーケティングを行うことができていますが、海外においては、個々に成長させてきたそれぞれのビジネスを繋げることができていません。今回アリペイを導入する大きな目的も、いかに海外のお客様をシングルIDで管理して、最適なマーケティングを行っていくか、という部分にあります。
また、ユーザーの面から考えると、アリペイを導入することにより、アリペイのユーザーである9億人にリーチすることが可能になる。我々がいままでリーチできているのはインバウンドとアウトバウンドあわせても400万人くらいですので、一気にお客様の規模を広げていくことができます。
アリペイの導入により、いわゆるタビマエの接点数を増やし、それによりインバウンドの売上が増える。インバウンドの売上が増えることで、リピート購入や越境ECの売上が伸びる。そんな好循環をアリペイには期待しています」