空港・デパート・アウトレットの経営トップが語る、
インバウンドの現在と課題
「竹中 平蔵氏と先行3業態トップが探る次世代インバウンド戦略」をテーマにした冒頭のセッションでは、経済学者の竹中平蔵氏をファシリテーターに、大丸松坂屋百貨店、三菱地所・サイモン、日本空港ビルデングが登壇。アリババの香山誠氏も交え、それぞれのインバウンドにおける施策と、今後の展望について議論が行われた。
御殿場をはじめ、北は仙台から西は鳥栖まで、日本全国にプレミアム・アウトレットを開発、運営している三菱地所・サイモン。同社の山中拓郎氏は、売上とインバウンドによる来場者数ともに、大きく成長していることを明かした。
特にインバウンドの来場者数は、2013年は53万人であったのに対し、2017年には179万人を超えた。国別の割合は、中国がほぼ半分の92万人で、香港、台湾、タイと続く。
山中氏は同社の今後の課題について、下記の2点を挙げた。
「だんだんと個人旅行化が進んできたことで、インバウンドにおけるユーザーの購入パターンは大きく変わってきています。これにどうやって対応していくのか。また、まだまだインバウンドのお客様が来ていない施設もありますので、そこにはどうやって人を呼び込んでいくのか。このふたつが課題だと思っています」
大丸松坂屋百貨店の好本達也氏は、売上推移と免税構成比の変化について説明。
「売上における免税の比率が急速に伸びてきたのは2012年から2013年にかけてですが、大きくジャンプアップしたのは2014年です。前年0.9%だった免税の割合が、一気に2.3%まで増加しました。日本に来る方が増えたというのももちろんですが、2014年に消耗品や化粧品が免税のアイテムとして加えられたことで、加速度がついてきたのだと思います。
2015年にはその比率が5%まで伸び、改めてインバウンドのパワーを実感しました。2016年には、為替の影響や、通関業務などが厳しくなったことで少し落ちますが、2017年にはシェアが7.3%となりました。2018年はまだ途中ですが、現時点ですでに8.9%と順調に伸びています」
また同社ではインバウンドの取り組みとして、2013年11月に専任の担当者を設置。2014年には本社に専門組織を立ち上げ、免税カウンターの増席や通訳スタッフの増員など、店頭環境の整備に取り組んだ。
2016年9月に導入したアリペイについては、「最初は化粧品の決済のみアリペイの利用が可能でしたが、全店全売り場で導入したところ、アリペイの売上高は1年で5.6倍にまで成長しました」と、その効果を説明した。
日本空港ビルデングの大西洋氏は、日本におけるインバウンドの課題について以下のように見解を述べた。
「大きく課題はふたつあると考えています。ひとつめは、日本の決済システムです。たとえば、キャッシュを持たない中国の方が日本に来たときに、買えたいものを買えるのかという点から考えてみると、日本の決済システムはグローバルで見たときに遅れていることがわかると思います。2020年までにこのシステムをどのようにしていくか、具現化しなければなりません。
もうひとつは、我々含め、需要予測ができていないという点です。混んでいるところに対応することも必要ですが、どのように潜在化している観光客のニーズを汲んで、それをサービスとして提供していくのか、も考えることが不可欠です。日本人に対してはOne to Oneでのマーケティングができていますが、同じことをインバウンドのお客様にも行う必要があります」