増える「MA導入失敗」 間違えないための手順
前回、MAという言葉が浸透しつつあり、導入企業も増えていること。一方で人によってMAの定義が異なり、MAを活用して実現したいことは「カゴ落ち対策」など、部分最適な施策に偏りがちであることなどを話してくれた。今回は、「失敗しないMA導入」がテーマだ。MAを導入してはみたものの、使いこなせず、ほかのMAを導入したいという相談を受けることが最近、増えていると言う。なかには、MA導入に失敗したのが2回目だというところまであるとか。読者が、こうした失敗に陥らないよう、原因と対策について話してもらった。
「あまりバズワードに踊らされずに、『なぜ、MAを検討しているのか』を見直していただきたいです。今行っている実務のうち、どの部分にMAを組み込んでいくのかをしっかり吟味する必要があります。MAは業務を遂行するためのシステムです。今の業務に組み込んで、どう活用していくのかを考えなくては失敗します。加えて、マーケティング担当者の業務を効率化するということだけが目的になると、顧客が置き去りになるため、お客様との良好な関係構築を考えた時に、それ以上の発展は期待できません。きちんとしたCRM戦略あってこその、MA活用というのが正しい順番です」
具体的にはまず、自社のマーケティング業務における課題を棚卸しし、優先順位をつけ、戦略を戦術に分解し、タスク化するべきだとアドバイス。そのタスク化されたもののうち、MAで対処するのが適しているものに、ツールを当てるという順番だ。
「この順番で進めた結果、『カゴ落ち対策に特化している』など、部分最適なツールを導入するというのであれば、それはアリだと思います。その場合は見込める効果や期待値も、それ相応のものだからです。『やりたかったことができない』という、皆さんがおっしゃるような『導入失敗』に陥ることがありません」
「機能の比較表」が失敗のもと MA選定では使えないワケ
導入失敗に陥る企業の共通点として、導入検討の際に「機能の比較表」を用いているというのがあるそうだ。
「MAに限らず、ツール導入を考える際に比較表を作られるところは多いと思います。しかし、MAに関しては機能の比較で選ぶのは厳しいと考えています」
その理由として、MAの機能は分類の仕方にもよるが、おおよそ15の機能に分類できること。そしてある施策に特化したツール以外は、機能表を見てもほとんど差がつかないため、判断材料にならないからだそうだ。
「機能の比較表には、『MAで効率化したい・やりたい業務』の要素が入っていません。単純に機能表の優劣で判断すると、MA導入自体が目的になってしまい、失敗します。逆に、『なにをしたいのか』があれば、機能軸によく見られる重箱の隅をつつくような細かい比較に時間を費やさずに済みます」
先に述べた「自分たちの業務の棚卸し」を行うよりも、機能を比較することのほうが楽だという理由もあるのだろうが導入に失敗して別のツールに乗り換える際の労力とコストを考えれば、どちらをやるべきかは明白だ。
機能比較表を用いる企業が、最終的に選定する基準は「機能の網羅性」だと言う。いちばん多く、○がついているツールを選ぶというわけだ。
「その機能、本当に使うんだっけ?と見直していただきたいです。『あったらいい』は『なくてもいい』ですから」 また、機能比較で間違えやすいのが「できる」という判断基準。たとえば、細やかなステップメールを配信していきたいと考えているのに、ベンダーが示す「ステップメール配信可能」という単純な説明だけで「○」をつけてしまう。すると、あるシナリオ以上は手動で回さなければ無理だったということが起きる。それが「やりたいことができなかった」につながっていくのだ。