SafariブラウザにITP搭載
広告効果測定とリタゲに影響
運用型広告関連のトピックス、今回は迷わずAppleが提供するSafariブラウザに搭載されたIntelligentTracking Prevention (ITP)について。9月20日に提供が開始されたiOS11に搭載された機能で、ウェブサイトを閲覧する際のプライバシー保護と利便性のバランスをとることを目的にしている。運用型広告に関連するのは、トラッキングを目的としたCookie(広告のクリックや過去にサイト閲覧した情報を保存したもの)の利用に制限をかける機能だからだ。Cookieの利用が制限されると、広告の効果測定とリターゲティング広告の配信に影響する。
「ITP機能が働いている環境下では、2段階の処理が行われます。最初の処理として、ウェブブラウザに保存されるCookieに対して、まずクロスサイトトラッキング能力があるか判断をします。たとえばECzineのサイトにアクセスしているのにECzineとは異なるドメインからCookieを読み書きされていないかをチェックするイメージです。
そこでクロスサイトトラッキング能力があると判断された場合は、そのCookieはインタラクションが発生しているかどうかが確認されます。インタラクションが発生している場合は、インタラクションから24時間はサードパーティのCookieとして広告クリックやウェブサイトの訪問履歴といったデータの読み出しが可能ですが、インタラクションがない場合は即座に隔離されて、広告のクリックやウェブサイトの訪問履歴といった情報を読み出すことができなくなります。
ここで言う“インタラクション”はサイトを訪問してクリックなどのアクションを起こすことを指します。インタラクションが発生しているという状況を例えるなら、ECzineのサイト上でGoogleのサイトを表示してクリックを行うと言ったイメージです。
一般的にこれはなかなか実現できません。ITPの対策を講じていない広告プラットフォームの場合であれば、クロスサイトトラッキング能力があると判断されることは、コンバージョンの計測に漏れが出たり、リターゲティング広告で追従できなくなったりといった影響がすぐさま出ることを示します」
これはSafariブラウザに限っての話だが、ECサイトであればスマートフォンユーザーが占める割合、そのうちiPhoneユーザーでデフォルトのブラウザであるSafariを利用している割合を考えれば、影響は大きいと言える。
「ITPの搭載については、2017年6月にはAppleから発表されていたので、準備していたプラットフォーマーもいるようです。たとえばGoogleは、計測ツールのGoogle Analyticsや、リマーケティング広告を含むGoogle AdWordsがトラッキングのためにCookieを利用していますが、対策として、ITPの影響を受けないファーストパーティCookieを利用した計測方法の提供、同じくファーストパーティCookieを利用して計測を行っているGoogle Analyticsとの連携、機械学習による予測モデルの活用などがあります。
一方で、ITPへの対策が進んでいないプラットフォーマーは影響を受けざるを得ない。EC事業者が利用している運用型広告、広告効果測定ツール、アフィリエイト・サービス・プロバイダなどについて、まだ対応を発表していないプラットフォーマーの動向が気になります」
たとえばアフィリエイトプログラムを提供するバリューコマースは、10月27日にCookieに依存しないデバイス推定技術を用いたトラッキングの追加(広告主は、現在使用しているコンバージョントラッキング用のイメージタグを、新しいJSタグに入れ替える必要がある)を発表している。