日本のEC市場は順調に拡大中。今後の伸びも既定路線
EC事業者にとって、顧客の趣味・嗜好や行動履歴を元に「購買するタイミング」を逃さずアプローチできれば、売上アップの見込みは高い。しかし実際には、新規顧客獲得や既存客の育成など実施したい施策の数が多く、なかなか手が回らないもの。
ECzine Day 2016 Autumnでは、データ分析を得意とするブレインパッド ソリューション本部 営業部副部長の林隆司氏が、「最小の負荷で最大の売上を実現!~マーケティングオートメーションで顧客へおもてなし~」と題したセッションを開催。MAやプライベートDMPなど「流行りのツール」を活用し、工数をかけずに売上をアップさせた施策の事例などを語った。
林氏はまず、日本のEC市場の伸びを示すデータを提示。ここ5年を見ても市場規模は順調に拡大しており、今後もますます伸びていくだろうと語った。
上がるCPA、疲弊するEC事業者。目指すべきは「優良顧客へのステップアップ」
たしかにEC市場全体は伸長を続けているものの、ショップや事業主単位で見た場合、売上の拡大は必ずしも容易ではない。林氏は、ECでの売上アップにつながるとされている要素を説明した。
「売上を上げるポイントは、新規顧客の獲得、および獲得した顧客のLTVをいかに上げて優良顧客とするかの2つがあります。前者は顧客数の増大、構造の可視化、獲得の効率化がポイントとなり、それら顧客のアクティブ率や顧客単価をいかに上げるかが後者となります」
しかし林氏によると、昨今のEC市場の拡大に伴ってCPAは上昇気味であり、新規顧客獲得には費用が嵩むようになってきたという。しかも、新規顧客獲得には、既存顧客維持に対して約5倍ものコストがかかるにも関わらず、実際の利益を生み出すのは既存優良顧客が8割であり、新規開拓はどうしても後手に回らざるを得ない。
そこで林氏は、EC運営にあたり重要な要素は「どのような人が優良顧客になりやすいかを見極めること」であると語り、その実践方法について、実際のECサイトの具体例を挙げた。
「あるECサイトのLTVを分析したところ、2回目の購入率が極端に減少することがわかりました。これを1%改善するだけで、3回目以降の購入割合にも好影響を及ぼし、全体の売上で7,000万円ほどの売上改善が見られたのです。この事例からも、優良顧客への育成の重要性が読み取れます」
【講演資料DL】最小の負荷で最大の売上を実現!~マーケティングオートメーションで顧客へおもてなし~
先日開催されたECzine Day 2016 Autumn内でのブレインパッドの講演で使われた資料(一部抜粋版)です。本記事とあわせてご覧いただくと、One to Oneマーケティングのためのデータ管理と活用について、より深くご理解いただけます。顧客ロイヤリティを上げ、EC事業を拡大させたい方にはおすすめです。ぜひご一読ください。ダウンロードはこちら。
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多商品はWebの強み。ただ多すぎても顧客を迷わせる
「ロングテール」という概念が登場してから10年以上。物理的な制限のある店舗とは異なり、無限に商品を展示できるのは、今なおECの大きなアドバンテージだ。林氏は、このロングテールは「EC業界でもまだメジャーな考え方」であると指摘しつつも、ただ単に品目を増やせばいいのかは難しいところだという。
「選択肢が多いことは、本当に欲しいもの、いいものが探しにくいという意味で、顧客にとって必ずしも良いこととはいえません。商品をなかなか探し出せずに結局離脱してしまうのでは、事業者側にとってもマイナスとなります」
林氏は、そのような事態の解決策として、顧客それぞれに合った情報を適切なタイミングと量で提供することが肝要であるとし、その実現に寄与するのが「One to Oneマーケティング」であると語った。
それぞれの顧客に最適な情報を。One to One マーケティングに必要な3つのデータ
顧客1人ひとりに最適な情報を届けるOne to One マーケティングでは、そのための分析に膨大なデータが必要となる。ブレインパッド社ではこれを、オフラインデータ、オンラインデータ、外部データの3つに大別しているという。
オフラインデータは、顧客リスト、商品情報、購買履歴、クーポン、ポイントなどの情報。オンラインデータは、アクセスログ、Webスコア、GPS情報などWebを通して取得できるもの。外部データとしては、パブリックDMP、ソーシャルネットワーク、天候などの統計情報がこれにあたる。
実際同社ではこの3つのデータと、見込み、新規、通常、優良、休眠などに分類された顧客セグメントを組み合わせたマトリックスを作成。カート放棄や店舗来店などのアクションが発生するごとにセグメントを柔軟に移動させるという、細かな分析を行っているという。
「これらのデータをすべて管理し、顧客1人ひとりに合わせて最適化を行っていくことがOne to Oneマーケティングだと考えています」
「機械学習」は顧客に何をもたらすのか
データ活用面でマーケティング界隈を賑わせているキーワードに、AIの存在がある。中でも、EC分野に特に影響をもたらすものとして、林氏は「機械学習による予測モデル」を挙げ、同社で取り組んでいる活動について語った。
「機械学習による予測とは、データベースから予測モデルを構築することです。データサイエンティストや分析ツールが解析した数式に値をあてはめると、その商品がどれだけ売れるか、どういった顧客が購入するかといった予測が弾き出されます」
このうち、「この商品は誰が買うのか」という予測は「オファーセントリック(商品中心)」、「顧客が望む商品」の予測は「カスタマーセントリック(顧客中心)」として切り分けられるという。
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目的を定め、分析に最適なデータを決めるのが、機械学習の勘所
とはいえ、予測モデルが何でもできる魔法のツールというわけではない。多種多様なデータがある中で、求める答えに至るための分析対象の選定は、長年の経験やノウハウが必要だ。
林氏は「オファーセントリック」のケースにて、クーポンを送りすぎたことによって逆にROIが下がってしまった実例を提示。割引などのお知らせは最低限の顧客にとどめ、クーポンがなくても購入してくれそうな顧客には別のお知らせを送った、といった事例を挙げた。
また「カスタマーセントリック」を使ってアプローチできる最適な機能として商品レコメンドを挙げ、どのような商品が同時購入されているか、次回は何を購入しているのかといったアルゴリズムを構築し、活用することが可能だとしている。
「とあるクライアントでDM(ダイレクトメール)にレコメンド機能を活用したところ、ROIが3,000%上昇したという事例もありました。レコメンドの考え方を応用すれば、メール、Web、アプリといったさまざまなチャネルでの効果も期待できます」
外部データがノイズとなることも。プライベートDMPでの機械学習成功例
セッション終盤、「One to Oneマーケティングに必要な機能」として、話題はプライベートDMPに移行。MAとの組み合わせにおいて、アパレル通販事業者の実例を交えて紹介がなされた。
「プライベートDMPに蓄積されたデータから機械学習を用いて分析し、顧客ごとに最適な情報を訴求した事例を紹介します。Webサイト最上部にユーザ属性からのおすすめキャンペーン、中央と最下部は、それぞれ購入商品と閲覧情報からの自動レコメンドを表示したところ、CVRが110%改善し、PV数はおよそ1.5倍という結果となりました」
その他にも、顧客のセグメントを大きく3つに分け、あるセグメントにだけクーポンを送るといった施策で購入単価が126%改善された例や、「あと○○円で送料無料」というレコメンドに合わせてその顧客が購入しそうな商品を表示させ、平均購入点数で140%、平均購入単価で506%の改善が見られた例などが語られた。
林氏は最後に、「Webだけではなく、メール、アプリ、店舗などのチャネルに顧客の行動を組み合せれば、EC事業者が行える施策はまだまだ残っています。MAの良い点は、一度施策のパターンを作ってしまえば全自動で回ること。売上アップのためにも、十分に検討の価値はあると思います」と語り、セッションを締めくくった。
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