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2025年2月4日(火)13:00~18:45

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SHEINの利用で気をつけることは?注意点を知って賢く買い物しよう

 ファストファッション界のリーダー格的存在になりつつあるSHEIN。その一方で買い物を考えてはいるものの、何となく怪しい気がして手が伸びないというユーザーもいるのではないだろうか。そこで本記事では、SHEINを利用する際に気をつけることと取り得る対応策に加えて、なぜそのようなイメージがあるのかという理由について迫ってみたい。

ファストファッションとして認知されつつあるSHEIN

 SHEINは、ファストファッションブランドの一つとして、その地位を確立しつつある。それは、売上高が証明しているといっていいだろう。同社の2023年度の純利益は20億米ドルを記録し、売上高も450億米ドル(6兆7,500億円)を上回ったとされている。

 ファストファッションの代名詞ともいえるZARAの売上高は、少し古いが2023年1月期で325億6,900万ユーロ(約4兆5,000億円)、UNIQLOの2024年8月期の売上高は3兆1,038億円で、初めて3兆円を超えたことが話題になっている。売上高という点でみれば、ファストファッション界の牽引役といっても過言ではないだろう。

 売り上げだけではなく、SHEINはブランドとしても世界的に人気が高い。イギリスの調査会社カンターが発表した「最も価値のあるブランドランキング2023」によると、SHEINは2位にランクインしている。ほかにトップ5入りをしているのは、5位のUNIQLOだ。NIKE(1位)やZARA(3位)、ルルレモン(4位)、アディダス(6位)、H&M(7位)といった顔ぶれの中での2位には価値があるだろう。

SHEINを利用するにあたって気をつけること

 そんな人気を誇るSHEINだが、アプリやサイトで購入するにあたって、気をつけたいことがあるので取り上げておこう。どのようなことに注意を払っておくとよいのかと、取りうる対策を合わせて紹介する。

画像と異なる商品

 レビューやSNSの書き込みによると、画像で見ている商品と実物が異なる可能性があるため、注意しよう。どのような点が異なるかというと、質感や色味だ。オンライン販売では、商品を手に取って確認できないため、商品紹介画像をたくさん掲載することで補おうとする。しかし、それにも限界があるということだ。

 商品が撮影された際の照明を含む明るさや背景などによって、商品の見え方は変わる。質感や微妙な色合いの違いといった繊細な部分を、画像やサイト上の商品説明で完全に理解するのは難しいだろう。多少の色味の違いは受け入れるとしても、質感を確認するのはもっと難しいはずだ。

 実際のところ、レビューやSNSの書き込みには、「販売サイトで見た商品と違う」といったものが散見される。「#SHEIN購入品」をはじめとして「#SHEIN購入品レビュー」「#SHEINコーデ」などのタグで検索するとヒットするので、事前の確認をおすすめしたい。

 ただし、こうしたハッシュタグ投稿の中にはインフルエンサーによるSHEIN商品のプロモーション投稿(PR投稿)もたくさん混ざっている。人気インフルエンサーを起用してコーデ紹介やクーポンコードの配布などが行われているので、辛口の評価を知りたい人はよく探す必要があるだろう。

商品の品質そのもの

 SHEINの商品の一部には、商品の見え方ではなく品質そのものの評価が低いものもあることを覚えておこう。ファストファッションの世界は、価格と品質のバランスをどう取るかが肝となっている。SHEINの場合、ファストファッションと呼ばれるカテゴリーに入るブランドの中でも、生産と消費のサイクルが早く、価格の手頃感が重視されている。そのため、商品の品質そのものが価格に見合わないと捉えるユーザーがいるのもやむを得ない事実といえるだろう。

 ファッションアイテムの場合、消費者は素材の風合いや縫製、洗濯に耐えるのかどうかといったに加えて、生地そのものの厚みや薄さ、伸び縮み、丈夫さ、通気性、保温性といった要素を商品の品質として捉え、重視しているはずだ。これらは、実際に手にしたり着用したりしてわかる部分だが、SHEINで購入をする際、事前に商品を手に取ることは難しい。ここは、価格相応の品質である点を理解した上で買い物をしなければならないと念頭に置く必要があるといえる。

 また、失敗してもこの金額なら問題ないと思えるアイテムのみ購入するという選び方もあるだろう。「価格相応の品質で良い」「ワンシーズン着まわせればOK」「流行りを楽しみたい」というユーザーであれば、不満は少ないのかもしれない。

サイズ確認

 前述のように、オンライン販売では当然ながら試着ができない。原則として実店舗を持たないSHEINで買い物をする場合、その点をどう考えるかは、ユーザーによって考え方が分かれるところだろう。スタイルや骨格、手足の長さなどは人それぞれ。ほかの人にはぴったりでも、自分に合うとは限らない。

 販売サイトにはサイズガイドがあり、各商品のサイズ情報が細かく掲載されている。日本ユーザー向けのサイズもある上、サイト上ではモデルが着用しているサイズを確認することもできるが、自分のサイズをcm単位で把握した上で商品を購入しているユーザーは、おそらく多くはないだろう。

 オンライン販売では、実際に着用し、シルエットやフィット感、肌ざわりといった着用感を確かめることはできない。その点を理解し、サイズが予想より大きかったり小さかったりしても、ある程度許容する必要がある。

 そこで活用したいのが、推奨サイズという機能だ。サイズガイドの横に表示されている「お客様にぴったりのサイズを探しましょう」というボタンから始められる。身長や体重、年齢などを入力すると推奨サイズが表示されるだけでなく、購入履歴からも最適なサイズを学習して提案してくれる。なお、日本にはSHEIN TOKYOというショールームが東京・原宿にあるため、そこで一部商品の試着も可能となっている。

人気商品の類似品や模倣品

 一説によると、SHEINが取り扱うアイテム数は全部で60万種類、新商品の供給は1日あたり6,000点だといわれている。その圧倒的な品数の多さと幅広さ、速さに加えて安さがSHEINの強みでもある。その一方で、類似品や模倣品が大量に流通しているのではないかという懸念がある点には注意したい。

 ほかのブランドよりも安価にトレンドアイテムや定番の人気アイテムが手に入るのは、一ユーザーとしては喜ばしいことかもしれない。しかし、オリジナルを作り出した側の努力や創意工夫、注いだ労力やかけた時間といった見えないコストが削減された結果の価格だと考えたら、どうだろうか。

 ファストファッション業界では、類似品や模倣品について、知的財産権を侵害されたとして係争中のブランドも少なくない。SHEINも例に漏れず訴訟を起こされているが、その数が多い印象があると一部では報道されている。

 消費者としては、同じようなデザインなら安いほうを選びたいところかもしれないが、こうした選択が実は類似品や模倣品を大量に生み出すことに加担している可能性があることも忘れないようにしたいところだ。安さを求めるアイテムがある一方で、優れたデザインのアイテムには相応の対価を支払う。このように、かかった時間や労力に報いる気持ちを持っていたいものだ。

アプリのセキュリティ

 SHEINはかつて、Android版のアプリでクリップボードの情報がユーザーの許可なく外部サーバーに送信されているのをマイクロソフト社によって発見されたことがある。マイクロソフト社は、クリップボードの情報が流出する可能性を指摘した。正確な発生時期は不明だが、2022年5月に対応済みとされている。なお、このことがニュースになったのは2023年10月のことだ。

 SHEINが立ち上げられた2012年から10年後のことであり、この頃には同社はすでに、約2~3兆円の売上高を誇る企業へと成長していたことになる。ほぼ同時期の2023年年末から2024年初頭にかけて、SHEINの月間アクティブユーザー数は2,000~2,600万人と推測されていることから、相当数のアプリユーザーに影響があったことがうかがえる。

 アプリを利用する場合、アプリやデバイスのOSを常に最新に保つのが自分の情報を守ることにつながる。また、越境ECの場合、決済データや個人情報の処理も海外で行われるケースが多いため、スマートフォンにセキュリティソフトを導入するといった対応もおすすめだ。

クレジットカード利用の安全性

 アプリのセキュリティとは別に、2022年10月には、SHEINが3,900万人もの顧客データにデータブリーチ(データ侵害)があったことを公表しなかったとして、アメリカのニューヨーク州から190万米ドル(2億8,500万円)の支払いが命じられている。

 データ侵害が起こったのは2018年7月で、クレジットカードのデータが盗まれたのではないかとされている。こちらも対応済みだが、SHEINはプレスリリースにて「SHEINで購入歴のある顧客は640万人で、クレジットカード情報が盗まれたという証拠はない」と発表している。

 クレジットカードの利用に抵抗がある場合、クレジットカードを使わないコンビニ払いに加えて、クレジットカードも事前登録も不要で後払いが可能なPaidyがある。このほかに、クレジットカードの登録が必要ではあるものの、購入時にSHEIN内でカード情報を直接入力するのではなく、PayPalというプラットフォーム(第三者)を通して決済ができる方法も存在する。好みに応じて選択しよう。

配送や梱包

 SHEINの配送は、航空機による国際配送に大きく依存している。通常4~9日で配送する(海外の場合は1~3日を加算)としているため、貨物専用の大型航空機をチャーターして迅速な配送を維持しているのだ。日本から購入する場合でも基本的に同じで、航空便と日本国内の宅配便が、商品をユーザーの自宅まで届ける仕組みになっている。公式サイトにフライトや悪天候によって配送が遅れる場合がある旨が記載されているように、飛行機に何かあった場合の影響は避けられない。

 しかし、そのような場合に備えて、定時配送保証サービスが用意されている。jp.shein.comでの買い物、かつ日本国内に有効な配送先住所がある場合のみ利用できるサービスだ。もし配送予定日(もっとも遅い日)を過ぎても商品が届かなかった場合に、500SHEINポイントが付与される。2,000円という最低購入金額はあるものの、それ以上買えば国際配送が無料になる上、こうした保証サービスがあると考えれば、サービスとして悪い部分ばかりではないのも事実だ。

 なお、梱包に関するクレームや低評価のレビューでよく見られるのが「梱包(外装)が雑」「外装が汚れている」「商品がしわだらけですぐに着られない」といったケースだ。日本のECサイトで商品を購入した際にこうしたことはあまり起こらないが、SHEINを含む越境ECでは珍しくないことなので注意しよう。

返品や交換

 前述したように、オンライン販売で商品の細かい部分やサイズ確認などを完璧に行うのは難しい。その一方で、扱う商品が流行の影響を受けやすい消耗品でもあるため、実際に手に取ってみたらどうも納得できないことが起こりやすいのも実情だろう。

 なお、SHEINの公式サイトで返品ポリシーを見てみると、返品を受け付けているのは、「万が一、商品が破損、不良品であったり、品質が適切でない場合、または本来の用途に合わない場合や商品説明と異なる場合」だとしている。さらに細かい条件も存在する。

 つまり、未開封であれば返品可能だが、開封してサイズを確かめたり、着心地を確かめるために着用したりした商品の返品は受け付けていないということだ。商品の質感や色味、サイズ違いといった理由では返品ができない点は覚えておこう。主観的な理由による返品・交換は受け付けていないことは、理解しなければならない。

 ちなみに、もし返品ポリシーに該当する場合は、24時間以内にカスタマーセンターに連絡する必要がある。その場合、どのような不良なのか着荷時点の写真を撮っておくと説明が伝わりやすいのでおすすめだ。

異物混入

 インターネット検索をすると、SHEINの商品にトコジラミと呼ばれる虫が混入していたエピソードが散見される。トコジラミは、世界中に生息するシラミの一種だ。そのほかにも、生きたムカデが入っていたというコメントをSNSで見た、SHEINで買った商品にトウモロコシの粒が入っていたといった情報もあった。

 情報の出所はいずれもSNSで、気持ちの良い話ではないため一気に拡散したのかもしれない。ファストファッションとして人気のSHEINの商品に異物混入という話も、衝撃的で人々の興味を引いたのだろう。

 また、目に見える異物ではないものの、開封時の臭いに違和感を覚えたといったエピソードも、少なからずあるようだ。これについては、染色など加工時の薬剤や縫製時のミシン油、接着剤の臭いなどといった原因が考えられる。洗濯や陰干し、消臭剤などで対処すれば改善される可能性があるため、試してみても良いだろう。

有害物質が含まれている可能性

 SHEINでの購入を検討している多くのユーザーは、有害物質が含まれていないかどうかも気にしているはずだ。発がん性物質のように、人体に対して有害と認められている成分が含まれているのであれば、どれほど安くても望んで買う人は少ないだろう。

 SHEINと同様に安さを売りにする中国発の越境ECには、TemuやAliExpressがあるが、いずれも販売している商品に安全上の問題があると度々指摘されている。一度や二度ならまだしも、数ヵ月という短い期間に何度もである。検査を実施したところ、この3社の衣類や化粧品、食品容器、衛生用品などから有害物質が検出されたという報告は、韓国のソウル市からもあがっている。

 SHEINなどの越境ECは、海外ユーザーによる商品購入を、個人輸入扱いとすることで輸入時の関税や消費税を低く抑えていると考えられている。個人輸入の場合、購入した商品は自己責任で使用するのが前提条件だ。日本では、厚生労働省が「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」で基準を設けているが、対象としているのが事業者(企業)であることから、検査などの対応が遅れているのではないかとされている。その一方で、SHEINなどの有害物質問題については認識しているという。

 現段階では、直接肌に触れたり子どもが使うものは買わないなど、リスクを踏まえた上で自分でルールを決めておく必要があるといえるだろう。

カスタマーサービスの対応

 SHEINにはお買い物ガイドが用意されていて、そこから自分が必要とするサービスの内容を知ることができる。返品などの理由で対応を求めるときには、カスタマーサービスへ連絡しよう。メールやチャット、電話などの手段があり、日本語にも対応しているため、日本から問い合わせる際も安心だ。

 画面には、よくある問い合わせがアイコンや文章で示されていて、自分が求める問い合わせ内容を選択すれば、FAQやチャットなど適したページや問い合わせ先に案内される。

 人によっては、選択式ではなかなか目的にたどり着けない、時間がかかってもどかしいということもあるだろう。ただし、SHEINではFAQやチャットなどでも解決できない場合にメールが表示され、最後の手段として電話につながる仕組みになっている。

 なお、電話で話すためには事前予約が必要で、カスタマーサービスの電話番号は、実際に問い合わせした人にのみ表示される。SHEINで購入した商品に何かあった場合、コールセンターに電話してすぐに解決策を聞いたり対応を求めたりするわけにはいかないと覚えておこう。

SHEINの利用に不安を感じる理由とは?

 ここまで見てきたように、SHEINを利用するにあたって、ユーザーには実にさまざまな不安や懸念があることが分かった。しかし、それには相応の理由があるはずだ。ここからは、SHEINの利用に不安を感じる理由を見ていきたい。

正体不明の企業と表現されることが多かった

 冒頭で触れたように、今やファストファッションブランドの一つとして認識されているといっても過言ではないSHEINだが、少し前までは謎の企業と表現されることも多かった。それには、いくつかの理由がある。

 SHEINの創業は2012年とされている。もともとは、中国人のChris Xu(クリス シュー)氏を含む4名によって、2008年に中国で立ち上げられた「南京希音电子商务」という会社が母体となっている。そこからウェディングブランド「SheInside」を経て、SHEINが誕生した。つまり、もとをたどれば、中国人起業家によって中国で起業された中国企業というわけだ。

 しかし、手頃にトレンドファッションが楽しめるとして人気に火がついたのは、アメリカのZ世代から。そこから10年余りの間に年々成長し、世界進出を果たしている。越境ECで実店舗を持たないため、服を見に行こうにも行く場所がない。店舗を重視する人には不思議な感覚だろう。

 また、ここまでの成功を収めているにもかかわらず、創業者であるChris Xu氏の露出は非常に少ない。2021年6月には、南京にあったSHEIN本社をシンガポールに移している。上場を試みているのもイギリスやアメリカで、さらなるグローバル展開を見据えて着実に歩みを進めているという印象だ。

 若者に支持される世界的なファッションブランドとして、中国というイメージが強く出すぎないように意図的にコントロールしていると感じさせるものがある。それが、謎の企業と表現された理由ではないだろうか。

中国品質に対する評価

 SHEINに対する懸念は、中国で作られているものは品質が良くないという印象による評価も影響しているのだろう。世代によって意見が分かれるかもしれないが、言葉を選ばずにいえば、中国製というだけで「安かろう悪かろう」「粗悪品」といった認識や評価を下す人がいることも確かだ。

 今では、アフリカや南米などの各国が高い経済成長を見せているが、かつて中国にもそのような時期があった。1990年代は中国が著しい経済成長を遂げた時期で、その頃には確かに中国製は日本の品質には追いつかないといった見解が一般的にあったかもしれない。しかし、急速に生産設備を整備し、生産を繰り返す中で品質を向上させ、世界の工場と呼ばれるようにまでなった。

 それでもまだSHEINの商品のように、安全性に問題を抱えるものも少なくない。世界的に見て中国製品は高品質という評価がなされているわけでもない。しかし、世界の工場として各国の製品を生産してきた実績があることは確かだといえる。

デザインの模倣疑惑

 中国製品には、模倣品というイメージもつきまとう。有名なキャラクターを模した商品が、当然のように販売されているのは決して珍しいことではない。すでに人気がある定番商品や新しいトレンドとして売れ始めている商品の類似品や模倣品を作れば、売れるのは当然のことだろう。ましてや実店舗を持たず、AIなどのデジタルテクノロジーを駆使して、人気の商品の特徴を分析、予測されたらたまったものではない。

 SHEINは、商品の知的財産権をめぐって、これまで数々のブランドから訴訟を起こされている。世界的に有名なハイブランドであるルイ・ヴィトンをはじめとして、ステューシーやドクターマーチン、ラルフローレン、H&Mなど、例を挙げれば枚挙に暇がない。和解したものもあれば、係争中のものもある。同じ格安で勝負するTemuからも提訴され、互いに訴えを取り下げたこともあるのだ。

 日本企業も例外ではない。2024年1月には、ユニクロが主力商品の一つである「ラウンドミニショルダーバッグ」の模倣品をSHEINが販売しているとして、販売停止と損害賠償を求めて提訴した。模倣品はファッションにとどまらず、文房具では無印良品を感じさせる商品の販売が報告されている。キーホルダーやアクセサリー、食品などもあり、売れればいいという下心が感じられてしまうといった声も存在する。

度重なる有害物質の検出

 また、SHEINには有害物質や発がん性物質といったイメージもある。SHEINの有害物質商品を検索しようとすると「SHEIN 有害物質」に続いて、「商品」「どれ」「一覧」「リスト」といったキーワードが自動的に浮上してくる。実際に何度も有害物質が検出されているため、買い物を検討している人にとっては重要なポイントだ。一例を挙げてみよう。

 なお、検査をしているのは韓国のソウル市だ。以下のものはすべて2024年7~8月に報告されたものである。

  • 女性用の下着から発がん性物質(アリルアミン)
  • 浮き輪から発がん性物質(フタル酸エステル系可塑剤)
  • ビーチボールから発がん性物質(フタル酸エステル系可塑剤)
  • サンダルから発がん性物質(フタル酸エステル系可塑剤やホルムアルデヒド)
  • 帽子から発がん性物質(フタル酸エステル系可塑剤やホルムアルデヒド)

 アリルアミンとは、染色に用いる化学染料のことで、膀胱がんの発生リスクを高めるとされているものだ。フタル酸エステル系可塑剤とは、プラスチックの柔軟性を高めるための薬剤で、生殖機能に影響を及ぼすとされている。住宅建材などによく使われるホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質としてよく知られているものだ。

 このほかにも、マニキュアから溶剤として使われるジオキサンが、アクセサリーからカドミウムが検出されている。ジオキサンには独特の臭いがあり、吸い込むとめまいや吐き気を起こすとされている。カドミウムはかつてイタイイタイ病の原因となったものだ。リップクリームからは、食中毒の原因になる黄色ブドウ球菌が検出されている。

 このように多数の事例が並んでしまうと、さすがに生産段階での安全性チェック機能が働いているのかという疑問を禁じ得ない。人体だけではなく、環境への負担も配慮されるべきだろう。ファストファッションというカテゴリーの中でも、特に生産も消費も速いとされているSHEINには、このような問題もあるのだ。

強制労働疑惑

 生産と消費の速さは、生産現場へのプレッシャーや高い要求となって、労働環境を悪化させやすい。その最たるものが、強制労働疑惑だといっていいだろう。SHEINはZ世代を中心とする世界中の若者から、商品の安さやトレンド感、デザイン性などが歓迎されているが、その一方で生産者には負担を強いている現状もあるということだ。

 新疆ウイグル自治区にある一部のサプライヤーにおいて、ウイグル族が強制労働させられているという可能性が指摘されている。SHEINは戦略的に英米での上場を計画しており、前述したシンガポールへの本社移転もその布石と見られているが、その準備段階でこのことが明らかになった。

 中国当局とウイグル族の間に人権問題があるのは、国際的にも知られるところだ。そのウイグル族を強制労働させているとなれば、もともとの人権問題に加えて強制労働疑惑も上乗せされる。上場を進めたいSHEINと英米との間の対立が浮き彫りとなって、いっそう注目を集める結果となっている。

 SHEINに対する批判は、ウイグル族の強制労働だけでなく、児童労働が発覚したことも理由とされている。2024年8月に発表されたSHEINの持続可能性報告書の中で、同社のサプライチェーンの中に児童労働が2件あったと、BBC(英国放送協会)が報じた。SHEINは、問題のサプライヤーとの取引を児童労働に対する取り組みを強化するまで停止し、サプライヤーに対する規制を強化したと説明したとのこと。

 上場の準備を進めてきたこの数年、人権問題を抱える民族との強制労働疑惑に加えて児童労働も重なり、SHEINのブランドイメージや企業としての信頼感は大きく揺らいだ。華やかなファッション業界の影ともいえる部分がある。

EUによる情報開示請求

 度重なる有害物質の検出や強制労働、児童労働など、SHEINには課題が多い。しかし、世界中から多くの支持を得る人気ブランドでもあり、多くの若者を中心に受け入れられている。そこでEU(欧州連合)の欧州委員会は、2024年4月、違法コンテンツから消費者を守ることを目的としたデジタルサービス法(DSA)に基づき、SHEINを規制対象に指定した。なお、Temuも5月に指定を受けている。

 SHEINは、7月末までに対応が求められ、違反とみなされた場合には罰金が科されることとなる。それでも違反が繰り返されると、EUでのサービスが停止される流れだ。過去にはTikTokが対応を求められ、未成年者保護に対する対応不足として、サービスが一時停止になったこともあった。

 SHEINが上場を計画をしているもう一つの株式市場であるアメリカでは、2022年6月からウイグル強制労働防止法が施行されている。これは、ウイグル自治区での強制労働によって生産されたものには輸入を認めないというものだ。

 また、2024年7月には、EUがSHEINなどの安価な商品に輸入関税を課すとし、9月には、アメリカ政府がSHEINとTemuが活用している小口貨物向けの関税を見直すことを発表した。堅調に業績を伸ばすSHEINに対する風当たりは、ますます強まっていきそうだ。

課題を抱えながらも成長を続ける企業

 ここまで、SHEINを利用する際の注意点と対策、なぜ不安を感じるのかという理由について見てきた。さまざまな課題を抱えながらも、主に若者人気に支えられ成長を続けるSHEIN。ここからは、SHEINのポジティブな面を取り上げていこう。

創業から10年超で5兆円企業に

 SHEINの前身である「Sheinside」というブランドの立ち上げは2012年。そこから約10年ほどで5兆円企業にまで成長した。英米市場への上場準備のパートで触れたように、現段階でSHEINはまだ上場していない。そのため業績の詳細は原則として非公開だ。

 過去にどれくらいの売上を上げていたのかといった、創業からの正確な業績推移は不明だが、この数年は上場準備の関係で関係者に説明するための資料を用意しているとされ、徐々に成長ぶりが明らかになってきている。

 たとえば、2020年の売上高は約100億米ドル(1.5兆円)で、2021年は200億米ドル(3兆円)、2022年も290億米ドル(約4.4兆円)、そして2023年は365億米ドル(約5.4兆円)と推移。順調に業績を拡大してきたことがわかる。安くてカワイイというトレンドファッションが、Z世代に代表される若者を中心に、広く受け入れられた結果だ。

デジタルを活用したビジネスモデル

 Z世代といえば、デジタルネイティブでもある。幼少期からスマートフォンやタブレット、PCなどがあり、早くからデバイスを手にし始める人も少なくない。彼らにとって、そういったデジタルツールを使ってSNSを使ったり買い物をしたりすることは、ごく自然なことなのだろう。

 SHEINのビジネスモデルでは、実店舗を持たずにアプリやWebサイトを通して、商品を販売する。個人が特定されない形で、どのようなユーザーがいつどのような商品を見て買ったのかというデータの収集や分析が可能だ。AIを活用したユーザー分析に基づいて、おすすめの提示や生産量の調整、販売促進といった対応を取ることもできる。

 それに加えてSHEINでは、小ロットの生産で実際に売れる見込みの高い商品を確認してから販売にあたる手法をとっているのも特徴だ。100~200着という単位でテストを繰り返し、ユーザーの反応を都度確認しながら売れるものを選択しているという。

 このようなデータ活用と小ロットでのテスト生産というPDCAを、自社だけではなくパートナー企業とも連携しながら高速回転させているのが、SHEINの強みだといえる。

手軽に楽しめるアイテムの豊富さ

 手軽にファッションを楽しめることが、ファストファッションの大きな魅力だ。手に取りやすい価格のアイテムでトレンドを楽しめるのが、その本質といえるだろう。

 SHEINには商品の品質そのものや模倣品といった課題があるが、デジタルの活用による売れ筋の確認はもちろんのこと、ユーザーを飽きさせないための迅速な生産を実現する体制や配送までを含めて、安さと速さという方向性に特化したブランディングがなされている。また、幅広い商品ラインナップで価格に見合ったクオリティの商品を素早く提供している点がユーザーから支持されているといえる。

 ファッションは、自分を表現する手段の一つ。「欲しいけど高くて買えない」という経済的なハードルをさらに下げることに成功したSHEINは、本記事で取り上げたさまざまな課題を抱えながらも、ファストファッション業界のけん引役になっていくのかもしれない。

SHEINは数あるファストファッションブランドの一つ

 商品を買う=買うことによってその企業を応援するという意味合いを含む時代において、SHEINが抱える課題が気になる人もいるだろう。そういった点にも気をつけて買い物をしたいユーザーは、ほかのファストファッションブランドに目を向けてみてはどうだろうか。

 ファストファッションの代表格といえば、H&MやZara、GAPなどが世界的に良く知られているところだが、日本にはHoneysやWEGO、Bershka、GRL、Old Navy、UNIQLOやGU、無印良品、しまむらといったブランドもある。SHEINは、あくまでその中の一つだ。ほかにも選択肢はたくさんあることを覚えておきたい。

 程度の差はあれども、SHEINに限らず低価格で商品を提供するファストファッションブランドの中には、経営や商品に関する何らかの課題を抱えていたケースも存在するはずだ。SHEINが今大きな注目を集めているのは、功罪相半ばするようなその躍進ぶりと、それを支える人気があるからこそかもしれない。

 ファストファッション界に旋風を巻き起こしているSHEINだが、そういった現象を作り上げている一つの要素は、安くてカワイイというトレンドアイテムに魅力を感じ、販売サイトを通して購入しているユーザーだ。SHEINで買い物をする際には、ここで取り上げた課題や注意点を踏まえた上で、賢く自分のライフスタイルに取り入れることをおすすめしたい。

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EC研究所(イーシーケンキュウジョ)

ECについての情報を調べ、まとめてお届けします。

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