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そのアプリ、作る側も利用する側も幸せになれていますか?
コロナ禍以前から、店頭とECサイトをつなぐ架け橋として、OMOや顧客体験向上を図る多くの企業・ブランドが活用を進めてきたアプリ。数年経ち、タッチポイントとして定着が進んだ一方で「『独自性のあるビジュアル訴求や表現の幅をより広げたい』『顧客の要望にさらに応えられる機能を実装したい』という相談が増えている」と金子氏は語る。
「2024年10月10日から11日にかけて、ヤプリが開催した『Yappli Summit 2024』でも、こうしたトレンドを反映したアップデートをいくつか発表しました。UIの進化、表現の多様性に対応した機能としては、アプリのパーツを“ブロック”として捉え、組み合わせによってデザインの柔軟性を高めた『Block UI』を発表しています。
また、抽選機能や歩数をアプリに表示し、インセンティブ付与ができるヘルスケア機能もリリースしました。こうしたゲーム性のある機能は、アプリを立ち上げる動機づけとして作用します。また、『Yappli CRM』でギフティが提供する『giftee for Business』との連携機能を実装したのですが、このようなポイント利用範囲の拡大施策も、需要としては高まっている状況です」
店頭集客が難しかったこの数年の間に、大手アパレルを中心として会員ID統合やメンバーズプログラムの刷新など、アプリ活用とも絡めたカスタマージャーニーの再設計が進んだ。利用顧客数が増え、アプリを立ち上げる頻度も上がれば、当然ながらセール時など高需要時に押し寄せるトラフィックに耐えられる環境構築が必須となる。また、「様々なデジタルリテラシーの顧客に対応できているか」という観点も欠かせない。
「ある飲食ブランドでは、アプリ刷新時にログインの不具合やポイント・注文履歴の閲覧ができないなどのバグが発生し、SNS上で困惑する顧客の声が広がっていました。重要な顧客接点であるがゆえに、一つのストレスやマイナスな体験が波及し、ブランド毀損となるおそれがある点には注意しなければなりません。
また、店舗を有する企業・ブランドの場合、実際にアプリに触れる店舗スタッフの満足度にも目を向ける必要があります。顧客が喜んで使える、かつ店舗スタッフも積極的に利用をお勧めしたくなるアプリであれば、会員獲得や利用率の向上、ひいては売上拡大にもつながります。開発・利用に関わるすべての人が幸せになれるアプリになっているかどうかという目線は、アプリ利用企業・ブランドが増える今後、より重要な視点だといえます」