UGCがユーザー同士のコミュニケーションを盛り上げる
EC商品検索・サイト内検索エンジン「ZETA SEARCH」やハッシュタグ活用エンジン「ZETA HASHTAG」をはじめ、顧客体験の向上を目的としたソリューションを展開するZETA。同社の代表取締役社長を務める山崎氏は、近年の購買行動の変化をこう話す。
「誰もが情報発信者となる『Web2.0』の概念が生まれた2000年代半ばに、ECサイトもSNS化していくと予想していましたが、ようやく現実になりつつあります。今後の消費活動を担うZ世代を中心に、SNS上のコミュニケーションから商品の情報を入手し、購入を判断するケースが増えています。そうした購買行動の変化や需要に対応する機能が、ECサイトにも必要ではないでしょうか」
そのための要素の一つとして、山崎氏は「口コミ」を挙げる。
「口コミなどのUGC(User Generated Content)は、スパムのようなネガティブな印象を与えないため、ECサイトで非常に強力な購入導線として機能すると考えています」
次に山崎氏が活用を推奨するのが「ハッシュタグ」だ。アパレル商品であれば季節や性別、カジュアルかフォーマルかといった分類を示すことで、ユーザーが商品を探しやすくなる。
また、蓄積された口コミにもとづいて「#2way」「#自宅で洗える」「#体型が隠せる」など、SNSの投稿で使われるようなハッシュタグも生成できる。ユーザーが商品の特性や機能をイメージした上で購入を判断できる点もメリットの一つだ。
「ハッシュタグは、ユーザーの導線を多様にします。たとえば、閲覧している商品の詳細ページに掲載されているハッシュタグを経由して、別の商品にたどり着くケースもあるでしょう。ハッシュタグからほかのユーザーの口コミを発見する可能性もあります。ユーザーは様々なコンテンツに触れ、楽しみながら商品を選ぶことができるのです」
2024年6月には、日本の「Google検索」の新機能としてハッシュタグをつけて検索できる機能がリリースされた。これにより、「ZETA HASHTAG」で生成されたハッシュタグが「Googleハッシュタグ検索」で表示されやすくなったという。山崎氏は「ユーザーは商品を探しやすくなり、企業はECサイトへの流入を増やせるため、まさにWin-Winの関係を構築できるのではないか」と語る。
口コミやハッシュタグに加えて、ECサイト内でのコミュニケーションを活発にするのがキュレーションコンテンツだ。キュレーションとは、収集した情報の中から特定のテーマに沿って選別・分類・整理することを意味する。「新生活応援セット」「スポーツ初心者向けシューズ・ユニフォームセット」「就活用コーディネート」といった商品を組み合わせた投稿がわかりやすい例だろう。
「今は、企業よりも個人が発信する情報が重要視される時代になりつつあります。投稿されたキュレーションコンテンツにハッシュタグが付与されると、ECサイト内でコミュニケーションがさらに活発になるでしょう。ECサイトにも、メディア化の波が押し寄せているのです」
ネガティブな口コミの掲載も信頼性や透明性につながる
では、どのようなフローでECサイトのメディア化を実現できるのだろうか。山崎氏は「まずは口コミ機能の導入が最優先だと考える」と話す。なぜならば、口コミの有無がユーザーの購買決定を大きく左右するからだという。
「『ネガティブな口コミを書き込まれないか心配』との声も聞きますが、企業にとって耳の痛い意見こそユーザーが欲しい情報と考えます。口コミを読まずに購入して後悔するより、ネガティブな面も理解した上で購入を判断したほうが、ユーザーの満足度は高いでしょう。自分が買い物する際、口コミが一つもない商品の購入を躊躇した経験はありませんか。今や、口コミはECサイトになくてはならない要素といえるのではないでしょうか」
また、蓄積された口コミはユーザーを理解する上でも重要な役割を果たす。膨大な口コミの中からAIなどで頻出キーワードや想定外の意見を抽出すると、ユーザーが商品に抱くイメージに加えて、隠れた需要まで見えてくるはずだ。その上、企業側の視点だけでは提供できないユーザーの「こんな情報が欲しかった」をカバーできるだろう。
「たとえば、元々スキンケアに興味がある人は、様々な化粧品ブランドのサイトを訪問して情報収集するのが苦ではないでしょう。しかし、普段あまりスキンケアに関心がない人にとっては、面倒に感じるかもしれません。そうした場合に『この化粧水とこの美容液は相性が良い』と書かれた口コミを提示すると、スムーズに購入に導くことができると考えます」
UGCが小売にもたらす新たなビジネスの可能性
ここまで、口コミやハッシュタグ、キュレーションコンテンツの効果を解説してきた山崎氏。「こうしたUGCはリテールメディアでも活用できる」と語る。
リテールメディアとは、複数のブランドの製品を販売するECサイトや小売店が提供する広告媒体を指す。特定の商品を探し、購入の一歩手前にいるユーザーに向けて広告を配信できる点がメリットだ。たとえば、早い段階でリテールメディア広告を取り入れたAmazonは、2022年の年間広告売上高が377億3,900万ドルとなった。広告事業が、小売にとって新たな収益源となる可能性を秘めていることがわかる。
「ECサイト上にUGCが多く存在していれば、情報収集している消費者が集まりやすく、結果的にPVやMAUが伸びると考えられます。メーカーやブランドは、そうした場に広告を配信することで、より効率的に集客数や売上の増加といった成果などのメリットを得ることができるでしょう」
これにより、ますますECサイトのメディア化が進むといえる。ただし、山崎氏は今後目指すべきECサイトの形を、「ECメディア」ではなくあえて「コマースメディア」と表現している。なぜなら、昨今は実店舗も含めたシームレスな購買体験の提供が求められていると考えるからだ。その先進的な事例の一つとして、海外を中心に活用が進むインストアアプリが挙げられる。
アメリカの大手スーパーマーケットチェーンであるウォルマートは、自社アプリに実店舗と連動する機能を搭載している。ユーザーが入店するとGPSで識別し、アプリ画面が実店舗に対応したものに変化する仕組みだ。「本日の特売は○○です」「○○は3階で販売しています」など、実店舗で買い物するユーザー専用のコンシェルジュとなる。こうしたインストアアプリにも、UGCを活用できるという。
「企業は、実店舗で自社アプリを閲覧しているユーザーに、リアルタイムで広告配信することができます。そこで、各商品の口コミやキュレーションコンテンツを表示するのも効果的でしょう。海外の小売店では、商品の値札に二次元コードを付与し、ユーザーがスマートフォンで読み込むと口コミを表示するといった工夫も見られます」
検索×UGC×実店舗 機能同士の相乗効果でECサイトはコマースメディアへ
山崎氏は、企業が目指すべきコマースメディアを解説するとともに、その実現に向けて取り組んでいる具体的な事例を四つ紹介した。
一つ目が、ファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」を運営するCROOZ SHOPLIST株式会社だ。同社は、「ZETA SEARCH」とともにリテールメディア広告エンジン「ZETA AD」を導入している。ユーザーの検索条件と連動し、パーソナライズされた広告配信を実現。結果的にROASの改善やCVR向上につながっているという。
二つ目の事例であるデサントジャパン株式会社は、「ZETA SEARCH」に加えて、ECサイト内に口コミおよびレビュー機能を実装できるレビュー・口コミ・Q&Aエンジン「ZETA VOICE」を導入し、顧客体験の向上に取り組んでいる。具体的な活用方法を、山崎氏はこう説明した。
「商品を検索する際、ユーザーの多くは表示結果を評価の高い順に並べる傾向にあります。そのため、検索と口コミ・レビューは非常に相性が良いと考えられます。デサントジャパンでは、口コミやレビューだけでなくQ&A機能も活用して、ユーザーと企業・ユーザー同士の活発なコミュニケーションを促進し、顧客体験を高める取り組みを行っています」
また、三つ目の事例として紹介されたのが株式会社アーバンリサーチだ。「ZETA SEARCH」「ZETA VOICE」だけでなく、「ZETA HASHTAG」を活用している同社は、サイト内検索・口コミおよびレビュー・ハッシュタグを組み合わせて、ユーザーが商品や情報を探しやすいサイト作りを行なっている。レビューでは、どのようなシーンに適した商品か評価する項目を表示するなど、自社の商材に合わせた仕組み作りを行っている点も特徴的だ。
ZETAのソリューションの活用は、こうしたアパレル企業以外でも進んでいる。最後の事例に、山崎氏は株式会社そごう・⻄武を挙げた。同社は、「ZETA SEARCH」「ZETA HASHTAG」とともに、OMO・DXソリューション「ZETA CLICK」も活用している。自社ECサイト上では関連キーワードとハッシュタグで新たな出会いを創出。実店舗では、スタッフが二次元コードを発行し、ユーザーがスマートフォンで読み取って商品の一覧ページを閲覧できる仕組みを設けている。
「デジタルマーケティングは、単発の機能をただ並べるだけでは不十分で、機能同士を組み合わせて相乗効果を発揮する仕組みが重要なのではないかと考えます」
四つの事例からもわかるように、ユーザー同士やユーザーとスタッフ間での活発なコミュニケーションが行われるコマースメディアへの進化が、今後の顧客体験向上の鍵となるといえるだろう。その実現の一歩として、サイト内検索と併せてショッピングを盛り上げる多様なコンテンツの充実化に取り組んでみてはいかがだろうか。
最後に、山崎氏はここまでの内容を踏まえた未来予測を共有し、セッションを終えた。
「今後、ユーザーが楽しめるショッピングの場として、コマースメディアが盛り上がっていくはずです。そのために、口コミ・Q&A・ハッシュタグ・キュレーションなどでUGCを活用することは必要不可欠だと考えています。さらに、リテールメディア広告などの新しいビジネスの立ち上げにも発展していくでしょう。より具体的な事例や製品の詳細を知りたい方は、ぜひ当社に問い合わせください」
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