北海道の小売店舗を視察 ミクロとマクロの視点から得た示唆とは
オムニチャネルコンサルタントとして、日々国内外を問わず、様々な小売チェーンの視察を欠かさない逸見氏。2023年12月には、北海道札幌市周辺の市場調査をしてきたという。
「北海道は、大手小売グループも業態やチェーンごとの分社化をせずに横断型で経営を行っていたり、事業者内で道内物流を完結させているケースがあったりと、広大な土地を有するがゆえの特殊な環境が存在します。こうした事情が店舗作りや商品展開にどう関係しているか知るために、2泊3日で15店舗ほど回りました」
札幌駅周辺は、北海道新幹線の延伸に向けた再開発プロジェクトが進行しており、南口の商業施設「エスタ」が閉館するなど、人の動きが変化している。建設費高騰の影響もあり、閉館した館(やかた)で営業していた店舗の移転先も大きな課題となっていたそうだ。こうした動きを見て、逸見氏は「オンラインを含む継続的な顧客接点をもっておけば、こうした外的要因に振り回されずに済む」と実感したとともに、北海道内での中継輸送など独自の物流ネットワーク構築の必要性を感じたという。
「人口数や人口密度だけで見ると、北海道はビジネスの採算を合わせるのが難しい土地かもしれませんが、たとえばニセコ町は今やインバウンド需要の高い街として新たな顔を見せています。リゾート需要が主ですが、食品や日用品を扱う事業者であれば、長期滞在する外国人向けに現地にない商品を届けるなど、新たに出店しなくてもMDの面で提供できるサービスがあるでしょう」
広大な土地を有している一方で、「札幌市内のエリアごとの特色も興味深かった」と語る逸見氏。札幌市中央区の円山公園周辺エリアは高級住宅街で、エリア内で買い物を完結させる市民も多く存在する。店舗のオペレーションを見て、逸見氏は「ピーク時のレジの滞留に課題を感じた」と続ける。
「住宅街なので、店舗の面積はそこまで大きくありません。そこでレジが滞留すると、顧客体験は低下してしまいます。たとえば会員向けのアプリやサイト利用を推進して、欲しい商品のバーコードを読み取った後、オンライン上で決済できるようにすれば、並ばずに会計が完了します。
『高齢者層も多いエリアだから』と言われるかもしれませんが、クイックコマースの仕組みと合わさって選んだ商品が後で自宅に届くようになれば、雪の降る札幌エリアで一定の需要を獲得できるはずです。こうした課題や発想も、実際に店頭を見なければ見えてきません。そのため、売り場視察は非常に重要です」